カカオの木。30年以内に絶滅の可能性もあるという研究が発表された。

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●地球温暖化とアジアでのチョコレート市場の急上昇がもたらすもの

 カリフォルニア大学とアメリカの大手食品会社「マース」の共同研究によると、30年以内にカカオの木が絶滅する可能性があるという。向こう30年間で、地球の平均気温は2度上昇すると推測されている上、アジアでのチョコレートの消費が急上昇していることがその理由である。2050年以降も、カカオの木を存続させるためのプロジェクトも発進した。

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●アフリカでのカカオの生産の限度とアジアでの市場拡大

 現在、世界で消費するチョコレートの原料となるカカオは、およそ半分がコートジボワールとガーナで栽培されている。カカオの栽培は湿度が70〜100パーセントの特異な気候条件が必須である。しかし、深刻な地球温暖化によりカカオの生産地の乾燥化がその生産に大きな影響を与えつつある。ある研究によれば、今後30年間で地球の温度は2度上昇する。これは、カカオの栽培を壊滅に導く恐れがあるといわれている。

 また、ここ数年アジアでのチョコレートの需要が急増した。需要と供給のバランスが崩れ、数年後にはチョコレートの生産は世界の需要に応えられなくなる可能性が高くなった。そして、カリフォルニア大学の研究者は、2050年にはカカオの木が全滅する可能性も否定できないと発表している。

●バイオサイエンスの分野からカカオを救う

 カカオの木を絶滅から防ぐ試みは、実験室のガラスの中で進行している。カリフォルニア大学生命科学部のミョンヘイン・チョ教授と研究チームは、遺伝子編集を行いカカオの種を残すだけではなく、劇的な気候の変化にも対応できるカカオの品種の改良を目指している。

世界中のチョコレート生産業者は、この研究結果を固唾をのんで見守っている。

●過去にも実施された遺伝子組み換え

 より安全で効率の良い農作物収穫のために、過去にも遺伝子の組み換えが行われた例がある。カリフォルニア大学バークレー校にあるイノヴェイティヴ・ゲノミクス研究所では、ブラジル原産のキャッサバの遺伝子組み換えを行い、世界中から高く評価された経緯がある。

 カカオの木を将来に残すために、食品会社マースは2050年までに二酸化炭素排出量を60パーセント削減するプロジェクトに10億ドルを出資したと発表した。

●高品質のチョコレートを産するカカオは南米に集中

 一方、ヨーロッパの高級チョコレートメーカーは南米産のカカオを使用することが多い。質の高いカカオとして知られる「クリオロ種」や「トリニタリオ種」は、ヴェネズェラやタンザニア、ペルー、コロンビア、エクアドールの小規模カカオ農家が細心の注意をもって栽培している。

大衆的なチョコレートを大量生産するマースのベリー・パーキン社長は、アフリカ大陸のカカオの研究と存続のために多額の出資をしたが、南米の小規模のカカオ農家の努力もこれに匹敵するといえるだろう。