MLB通算434発の元楽天AJが語る、大谷成功の条件「彼ならアジャストできる」
楽天で2年間プレーしたジョーンズ氏、単独インタビューで大谷について激白
日本ハムからポスティングシステム(入札制度)を利用し、米MLBエンゼルスへの移籍が決まった大谷翔平投手。2018年からは西海岸のカリフォルニア州アナハイムを本拠地にし、夢だったメジャーリーグでプレーすることになった。日米の注目を集めた大谷争奪戦だったが、メジャーリーグでも輝かしい実績を誇る元選手は、大谷をどう見ているのだろうか。
ブレーブスなどで活躍し、メジャー通算434本塁打を放った元楽天のアンドリュー・ジョーンズ氏がこのほど所用で来日し、単独インタビューに応じた。2013年、メジャー通算434本塁打の実績を引っ提げて、鳴り物入りで楽天へと入団したAJ(ジョーンズ氏のニックネーム)。2014年には大谷に4打席連続空振り三振を喫したこともあった。それから約3年が経過しているが、日本で見たこの青年から受けた衝撃は、今も忘れられないという。
――このほど大谷翔平投手のエンゼルス入りが決まった。あなたが楽天に入団した2013年、彼はルーキーだった。当時のことを覚えていますか?
「もちろんさ!とても良く覚えているよ。とにかく対戦する打者としては手強い投手だったね。真っ直ぐが速くて、スライダーが良くて、フォークもある。どのボールに絞っていいか迷うところがあるし、本当にいい投手だったね。最後の2シーズンくらいは打者としても大きな成長を見せてくれたし、才能溢れる選手だと思うね」
――大谷選手の移籍先はあなたのいるブレーブス(ジョーンズ氏は現在ブレーブスでスペシャルアシスタントを務めている)ではなかった。
「正直なところ、エンゼルスで驚いたよ。彼を本当に欲しがっているように見えたのは東海岸のチームだった。だから余計に驚いたよ。ただ彼が決めたことなので、それを尊重したいね。私も日本とアメリカを往復していたから分かるけど、日本からは西海岸が近い。友人や家族も日本から来やすいし、そういう側面もあったのかもしれないね」
――エンゼルスというチームはいかがでしょうか。
「どこのチームもオフに補強をするわけだが、エンゼルスは決して悪いチームじゃない。トラウトというスーパースターがいる。そこに大谷が加わることで間違いなくチーム力はアップするだろうね」
――大谷選手にとって、日本のプロ野球とメジャーリーグの大きな違いはどこになるでしょう。
「アメリカに行って最大の違いは試合数が多いことだ。日本は月曜が休みになるが、アメリカではほぼ毎日プレーをしないといけない。日本では週に1回投げればよかったが、そうはいかなくなるだろう。色々なことにアジャストしなければいけない。ただ、それは球団側、エンゼルスにも言えることだ。彼を受け入れるにあたって、どんな環境を整えるのか。大谷本人がどうアジャストするかもだが、球団側のアジャストというところにも私は注目しているんだ。まあ彼ならアジャストできると思うよ」
日本とは全く違うメジャーの日程「そこのアジャストが1番大事」
――あなたが仮に大谷選手の監督だったとしたら、どのように起用しますか。
「それは難しいところだね。スケジュールというところでいうと、日本は、月曜日がほぼ必ず休みで、火曜から日曜にかけて試合があるという規則的なスケジュールで試合を消化していく。アメリカはすごく不規則で12連戦とかだって普通にある。それにどうやってアジャストしていくかというのは、本当に大きな課題だと思う。僕個人としてはバッティングももちろんいいんだけど、あれだけの球を投げられる投手というのは数が少ないので、投手に専念してほしい。自分が監督だったら、投手だけで使いたいね」
ブレーブスをはじめ、ドジャース、レンジャーズ、ホワイトソックス、ヤンキースと渡り、計17年間メジャーの一線級でプレーしたジョーンズ氏。3年目の1998年からは3年連続20本塁打20盗塁を記録し、1997年から11年連続2桁本塁打、2005年には51本塁打&128打点でナショナル・リーグ2冠にも輝いた。過日、米野球殿堂入りの候補選手にもノミネートされている。
――あなたが、メジャーで輝かしい実績を残せた要因はどこにあったとお考えですか。
「難しいことではないんだ。私は毎シーズンに入るにあたって、個人の目標として25本塁打100打点を掲げていた。これを目標としてやるというより、最低でもそこまではやりたいというもの。コンスタントに成績を残したいと思って、オフの間にスイング、準備をしてシーズンに入っていく気持ちでやってきた。その積み重ねが、現役を終えた時に434本塁打という形で残ったのだと思う。各月に分けて考えれば、毎月4本塁打放てば、それなりの成績を残せる。そういう風にブレイクダウンしていって、コンスタントに成績を残せるように取り組んでいたんだ」
――メジャー17年間、日本での2年間の経験をへて、大谷選手に助言するならば、どんなことを伝えますか。
「球団の起用法が明らかになっていないので、具体的なアドバイスを今の時点でおくることは難しい。ただ、1つ言えるとすれば、それはスケジュールのことだ。これを念頭に置いて調整をしていってほしい。日本ならば、毎週月曜が休みで、交流戦が終わった時には2、3日の休みがある。彼の場合はシーズンを通して毎週1回投げていたわけではなく、状態を見て休みももらっていた。それがアメリカに来て、どうなるか。球団から求められることの中でどうやって調整しながら、こなしていくか。そこのアジャストが1番大事だと伝えたい」(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)