好調が続くセブン‐イレブン。既存店売上高は2017年9月まで62カ月連続で前年同月超えを達成(編集部撮影)

「(国内コンビニエンスストア業界での)売上高シェアを現在の43%から50%に引き上げることを目指したい」。セブン&アイ・ホールディングスの井阪輶一社長はそう強調した。

10月12日に発表されたセブン&アイの2017年度上期(2017年3〜8月期)決算。売上高にあたる営業収益は2兆9871億円(前期比4.2%増)、営業利益が1944億円(同7.2%増)と増収増益で着地した。

日販は競合より10万円以上高い

苦戦が続いてきた百貨店事業や総合スーパー事業で一定の改善が進んだ面はあるが、最大の牽引役はなんといってもセブン-イレブン・ジャパンが担う国内コンビニ事業だ。今上期はグループ全体の営業利益のうち、約7割を国内コンビニ事業で稼いだ。


セブンの好調を支えるPB「セブンプレミアム」(撮影:梅谷秀司)

好調な要因の一つが順調に推移する日販(1日当たり1店売上高)だ。セブンの全店平均日販は66万円を突破。それに対し、競合のローソンは55万円、ファミリーマートは53万円といずれも10万円以上の差を付けられている。

PB(プライベートブランド、自主企画商品のこと)「セブンプレミアム」の新商品を相次いで投入したほか、麺類商品の刷新や日用品の拡充が効き、好調な売り上げを維持。2017年9月まで既存店売上高は62カ月連続で前年同月を上回っている。

そのほか、3月と5月に「朝セブン」と題して、セブンカフェのコーヒーとパン(8種類から1つ選択)のセットを税込み200円で購入できるキャンペーンを実施し、売り上げ増につなげた。競合チェーンのある加盟店オーナーは「セブンはさまざまな取り組みで客を呼び込むのがうまい。商品力も大手3社の中では群を抜いている」と本音を吐露する。


サークルKサンクスからファミリーマートにブランド転換した店舗(撮影:梅谷秀司)

それだけでない。今上期のセブンの国内店舗数は429店の純増で店舗数は1万9851店(8月末時点)となった。

一方でローソンは339店の純増で1万3450店(同)、サークルKサンクスとのブランド統合に追われるファミマは不採算店の閉鎖などで204店の純減となり1万7921店(同)だ。日販だけではなく、店舗数においてもセブンの存在感は大きい。

チャージの再減額は否定

“一強多弱”ともいえるコンビニ業界で順風満帆に見えるセブンだが、この下期に大きな転換点を迎えた。セブンは9月から加盟店から受け取るチャージ(経営指導料)を1%減額した。同社がチャージ率見直しに踏み切るのは1973年の創業以来初めてのことだ。


チャージ再減額を否定したセブン&アイの井阪隆一社長(写真は2017年3月の記者会見、撮影:梅谷秀司)

コンビニでは本部が商品供給や販売指導を行う一方、加盟店はその対価として一定のチャージを本部に納める。チャージ率は店舗の土地・建物をどちらが所有するか、また店舗の売上高によって変わってくるため、一概には言い表せない。ただ、セブンの場合、店舗が稼いだ粗利の43%を本部が、57%を加盟店が取ることが基本になっている。

加盟店から徴収するチャージを1%引き下げた背景にあるのは、人件費の急騰だ。東京都の最低時給は2002年に708円だったが、2016年には932円に上昇。この10月には958円にまで引き上げられた。加盟店の負担増に対し、本部が歩み寄る形で今回の1%減額を決断した。

今回の1%減額で加盟店は1店当たり月6.5万〜7万円の負担減になる反面、本部側には下期だけで80億円の負担がのしかかる。ただ、今回のチャージ減額だけで、すべての加盟店が人件費増の負担をカバーできるかは未知数だ。

井阪社長は「制度変更については現時点で考えていない。加盟店も平均では増収増益だ」と述べ、チャージの再減額を否定する。時給上昇の流れが続く中、本部と加盟店の共存共栄をどのように実現していくのか。コンビニ好調の裏側で井阪社長は難しい舵取りを迫られている。