By NASA's Marshall Space Flight Center

NASAのチャンドラX線観測衛星が75日間の観測作業を行っていたところ、地球から100億光年離れた位置にある観測エリアから、その銀河の全ての光量より1000倍も明るいX線が検知され、数時間後に消失するという不可解な現象が起こっていたことが報告されています。

Chandra Press Room :: Mysterious Cosmic Explosion Puzzles Astronomers :: 30 March 17

http://chandra.harvard.edu/press/17_releases/press_033017.html

A Mysterious Flash From a Faraway Galaxy - The New York Times

https://www.nytimes.com/2017/03/31/science/x-ray-burst-outer-space.html

チャンドラX線観測衛星(チャンドラ)は、地球から90億光年〜120億光年離れたエリアを撮影しており、その画像は「Chandra Deep Field-South(CDF-S)」と呼ばれています。チャンドラはCDF-S撮影の一環として75日間の観測作業を行っていたのですが、地球から100億光年先にある小さな銀河から、通常ではありえないほど強力なX線を検出しました。チャンドラは2014年にも同じポイントを観測していますが、この際には同様の光源は確認されていないとのこと。



発生源の小銀河すべての星の光量を合わせたものより1000倍も強いという不可解なX線照射は数時間続きましたが、1日後にはチャンドラの性能では検出できないほど小さくなったとのこと。研究者らはこの現象の解明に努めていますが、過去に類似する現象が検出されたことは一度もないそうです。研究者の1人であるチリ・カトリック大学のフランツ・バウアー教授は「まるでピースの足らないジグソーパズルを手にしたようなものです」と話しています。

説明のつく仮説としては、巨大な恒星がブラックホールに衝突、または中性子星という密度の高い恒星同士の衝突などで発生する「ガンマ線バースト」という現象の余光として発生したX線の可能性があるとのこと。

ただし、ガンマ線バーストの余光として検出されるX線は、今回検出されたX線より100倍強烈なものがほとんど。観測史上最弱のものだったか、想像以上に離れた場所から届いた可能性も考えられますが、原因の完全な解釈には至っていません。別の天文学者は、恒星がブラックホールによって四分五裂した時に発生する現象に似ていると指摘していますが、この場合は今回とは異なるスペクトルのX線が検出されるはずだそうです。

つまり、これまで観測されてきたどの宇宙現象とも一致しないという不思議な現象が観測されたことになり、バウアー教授も「残念ながら、説明のつく決定的な証拠はありません」と語っています。今回の現象の原因を明らかにするには、今のところ同じような現象をより多く観測するほかないということです。