稀勢の里、横綱になり収入増も“タニマチ”からのお小遣いに「マイナンバー」の壁
「昨年は史上初の“優勝なしで年間最多勝”という珍記録を達成しました。その勢いで“今年こそ横綱昇進間違いなし”と、初場所からファンの期待が高まっていましたね」(スポーツ紙記者)
稀勢の里の珍記録は年間最多勝だけではなかった。実は'04年11月場所で入幕後、幕内優勝も今回初めて。大関昇進後31場所は歴代もっとも遅い記録で悲願を達成し、晴れて横綱となった。
横綱になるとどんな“おいしい”ことがあるのだろうか? 相撲ライターの佐藤祥子氏に話を聞いてみると、
「海外では大関がチャンピオンと呼ばれていて、横綱はグランドチャンピオンなんです。なにか特別感が伝わってきますよね。移動に使う交通機関はもちろん一番上のファーストクラスやグランクラスですし、専属の個人マネージャーや運転手を雇うこともできます。国技館の地下駐車場も利用できるんですよ」
大関のときには5人だった付け人が倍になることもある。なぜ、そんなに多くの付け人が必要なのかというと、
「土俵入りのときは“横綱”を締めるのに、最低でも7人くらいは必要なんです」(前出・佐藤氏)
そして、いちばん気になるのは横綱の収入だが、
「まずお給料が上がります。いま横綱の月給はだいたい300万円弱くらいだと思いますが、大関より50万近くは多いです。それに加えて力士褒賞金、各種手当。優勝すれば賞金1000万円などで、年収5000万円は下らないでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
このほかにも各場所で手にする懸賞金がある。各企業は“結びの一番”に懸賞金を出したがるというから、“結びの一番”の取り組みが多くなる横綱は懸賞金の獲得数も増えるというわけだ。
ここまではあくまでも“目に見えるお金”。“目に見えないお金”の代表格といえば、相撲の世界で誰もが知る“タニマチ”だろう。いわゆる後援者のことだが、横綱にとってうれしいのが“タニマチ”からもらう“お小遣い”。
「横綱になれば、それまでよりお座敷が増えますし、それだけお小遣いをもらう機会が増えます。また金額も増えるでしょう。“ごっつぁんです”のひと言で懐に入れることのできる“お小遣い”は本当に“おいしい”んです(笑)」(前出・スポーツ紙記者)
どんなに苦しくても、これほどの“楽園”が待っていると思えば、横綱を目指す外国人が後を絶たないのも納得できる。
横綱の“うまみ”に見える陰り
しかし、最近はいいことばかりじゃないようで、横綱の“うまみ”にも陰りが……。
「どちらかというと大変なことのほうが多いでしょうね。付け人が多くなったぶん、その人たちに渡す“骨折り”と呼ばれるお小遣いも多くなりますし、個人で雇ったマネージャーや運転手にお給料を払わなければなりませんから、入ってくるお金が増えても出ていくお金も増えます。また政財界との付き合いなど人付き合いが増え、自分の時間が少なくなりますしね」(前出・佐藤氏)
バブルのころは、創立記念日や新社屋のこけら落としなどのイベントに横綱を呼んで、“土俵入り”を披露してもらう企業もあったが、
「当時は部屋が勝手に話を受けて、1回500万円ほどのギャラを受け取っていましたが、現在は協会の許可を得ないとできないようになりました。それに社内行事に横綱を呼ぶような豪気な企業も少なくなりました。“相撲絶頂期”だった“若貴フィーバー”のころや朝青龍あたりまでが相撲バブルでしたが白鵬の時代は落ち着いてしまった感があります」(前出・スポーツ紙記者)
ほかにも、横綱の懐を直撃する意外な伏兵が現れたというのは、元大相撲関脇の貴闘力。
「タニマチがくれるお小遣いにしても今は少なくなっているし、昔は税金のかからないお金がいっぱいあったけど、今は無理。後援会も会費制にしているところもあるしね。それにあの“制度”が大きく影響していると思うよ」
あの“制度”とは昨年導入された“マイナンバー制度”。この制度が横綱の懐にどう影響してくるのか、『税理士法人・響』の徳原聖雨税理士に話を聞いてみると、
「そもそも協会から給料が出ている力士も、給料以外のご祝儀やタニマチからもらう“お小遣い”は、個人事業主としての一時所得として申告しなくてはいけません。
マイナンバーが導入されたことにより、住民票と照らし合わせることで個人情報を明らかにすることができます。そうなると、収入を申告していないとか、個人事業主としての申告もされてないということがわかってしまうかも。ごまかすことが難しくなりますね」
なんでも“ごっつぁん”ですんだのはもはや過去のこと。
「横綱はお金じゃないんだよ。もっと崇高なものなんだ。だから、みんな必死になって目指すんだよ。稀勢の里は、みんなに好かれる横綱だよ。お金よりファンが多いほうがいいじゃない」(前出・貴闘力)
国民に愛される横綱が一番だということ。