「ライフハッカー」人気書評家が明かす、読書記録が分かりやすくまとまるコツ
「なぜ『1ページ5分』かかっていた遅読家が、『年間700冊超』読破する人気書評家になれたのか?」
『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)の紹介文にこう書かれているように、本書の著者である印南敦史さんは「遅読家」を自称する。
読むのが遅くても、すぐに内容を忘れても、本は読める。
今はそれほどではないが、少し前まで「速読」がブームになっていた。読む速度を早くすることで情報を効率よくインプットするというもので、主にビジネスパーソンを中心に人気を博していた。
しかし、その一方で「速読」が読者を困惑させていたのも事実だろう。『遅読家のための読書術』の読者レビューを見てみると、読むのが遅いことで悩んでいた人たちから賞賛の声を集めている。そして、印南さんは「速読へのアンチテーゼの側面もあった」と告白する。
◇
――タイトルの「遅読家」という言葉が素晴らしいですよね。やはりレビューを見ると、読むスピードが遅いと悩んでいる人が多いということを実感します。
印南:そうなんですよね。この本には速読へのアンチテーゼのような側面もありました。「速く読むことが良い」という風潮に対して、何か引っかかるものがあって。
それに、そもそも読むのが遅くて悩んでいる人なんて僕ぐらいしかないだろうと思っていたんです。でも、出版してみると、同じ悩みを抱えている人が多かったので驚きました。ちなみに出版元の営業さんからは、「真面目な人に読まれている」とお聞きしています。
むしろ、読むスピードなんて遅くて当たり前。読んでから、すぐに忘れてしまうのも普通。その2つがいけないことのように思われているけれど、そうではないということを伝えたかったという思いはありますね。
――「フローリーディング」という考え方も面白いですよね。音楽を聴くように本を読む。これは音楽ライターとしての印南さんの側面も出ています。
印南:僕の中では、音楽を聴くことと本を読むことは感覚的に同じなんです。音楽を聴くときに「さあ、これから聴くぞ!」とはならないじゃないですか。でも本はなぜか「さあ、読むぞ!」となりがちなので、そうならずに同じ次元のものとして考えてほしいんです。
■本の内容をまとめるときは「誰かが読むことを前提に」
印南さんの話を聞いていると、やはり気になるのはどのようにして書評を書いているのか、何を考えて書いているのか、だ。
分かりやすくて、シンプルなまとめ方は、おそらく読書記録をつける上でも参考になるだろう。そのコツについて聞いてみた。
――印南さんの読書術、本の選び方やまとめ方について伺いたいのですが、本を買う場所は書店が多いですか? それともインターネットでしょうか?
印南:どちらも使いますが、書店に顔を出すことは大事だと思っています。実際に行かないと何が売れているのか、どんな本がプッシュされているのか分からないですからね。
ビジネス書棚はもちろん行きますけど、すべての棚を一通りまわります。興味のないジャンルの棚も見てみて、目についたものを手に取る。それが新たな好奇心を生みます。自分の興味あるものばかりだと、広がっていきませんし。
――この本にも書かれていたかと思いますが、印南さんの書評は引用が多いですよね。執筆する際も引用から抜き出していくのですか?
印南:ウェブ媒体の書評は、新聞などの一般的な書評と性格が違うと考えています。具体的には、ウェブの場合は読み手に「読んでみて、ちょっと役に立った」と思ってもらえることが大切だと思っているので、その読み手が一番気になりそうなところを想像して抜き出していきます。
まず、「はじめに」を読んで本が書かれた背景や概要をさらって、次に「目次」を見ながら、どこが読者にとって最も必要なのかを探していきます。その上で、印象的なところを抽出するという感じです。
――書評をまとめる際に気を付けていることはありますか?
印南:読み手をイメージすることですね。そして、どんな文章でも、人に見せるということを意識しています。そして、いちばん重要なのは、簡潔で読みやすいこと。そこに尽きますね。
また、その文章が掲載される媒体のカラーに合わせることも大切。たとえば「ライフハッカー[日本版]」の場合なら、通勤電車の中で5分くらいで読めて、一番気になる内容を拾えて「得したな」と思ってもらえることが大事だと考えています。
引用が多いのは、それが「ちょっと役に立った」と思ってもらうための重要な要因だから。その上でもっと深く知りたくなったら、実際にその本を購入して読んでほしいと思っています。いってみれば、自分は「入り口」的な役割を果たすべきだと考えているわけです。
――「ライフハッカー[日本版]」の書評は印南さんの色がほとんど出ていないですよね。これは印南さんの音楽系の著書を読んでから書評を読むと分かるのですが、すごく分かりやすくシンプルにまとめているように思います。
印南:「ライフハッカー[日本版]」はニュースサイトなので、「印南敦史」という存在をアピールすることはあまり必要ないと思っているんです。「自分」をどこまで出すべきかは媒体によって違いますし、さほど出す必要のない媒体で必要以上に自分を出してしまうと、それはちょっとみっともない。「ライフハッカー[日本版]」の場合は、「あのサイトで紹介されている書評は分かりやすいよね」という程度でいいと考えているわけです。
「ライフハッカー[日本版]」の読者は、おそらく本の内容が知りたくて読みに来ている。だからこそ、その媒体で自分が何を求められているかを考えなければいけないと思います。「どこまで出すべきか」を見極める必要があるということ。だから逆に、「印南敦史」の記名原稿としての側面のほうが強い「Newsweek日本版」ではストレートに自分を出していますし、女性読者が多い「WANI BOOKOUT」などでは、よりソフトな文体を心がけています。
◇
印南さんの著書『遅読家のための読書術』は発売2ヶ月で3万部突破、さらに韓国、台湾、中国、タイで翻訳出版が決定。オーディオブック化も実現し、11月8日からオーディオブック配信サービスの「FeBe」で配信が開始されている。
「100のうち、1だけでも引っかかるところがあれば、その読書は大成功。本の内容をすべて理解するのは無理ですが、1つか2つはフックになるところが必ずあるはずなので、その部分を大切にしてほしいです」と話す印南さん。
本を読むのが遅いということで悩んでいるならば、ぜひ『遅読家のための読書術』を開いてみてほしい。
(新刊JP編集部・金井元貴)
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『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)の紹介文にこう書かれているように、本書の著者である印南敦史さんは「遅読家」を自称する。
読むのが遅くても、すぐに内容を忘れても、本は読める。
今はそれほどではないが、少し前まで「速読」がブームになっていた。読む速度を早くすることで情報を効率よくインプットするというもので、主にビジネスパーソンを中心に人気を博していた。
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――タイトルの「遅読家」という言葉が素晴らしいですよね。やはりレビューを見ると、読むスピードが遅いと悩んでいる人が多いということを実感します。
印南:そうなんですよね。この本には速読へのアンチテーゼのような側面もありました。「速く読むことが良い」という風潮に対して、何か引っかかるものがあって。
それに、そもそも読むのが遅くて悩んでいる人なんて僕ぐらいしかないだろうと思っていたんです。でも、出版してみると、同じ悩みを抱えている人が多かったので驚きました。ちなみに出版元の営業さんからは、「真面目な人に読まれている」とお聞きしています。
むしろ、読むスピードなんて遅くて当たり前。読んでから、すぐに忘れてしまうのも普通。その2つがいけないことのように思われているけれど、そうではないということを伝えたかったという思いはありますね。
――「フローリーディング」という考え方も面白いですよね。音楽を聴くように本を読む。これは音楽ライターとしての印南さんの側面も出ています。
印南:僕の中では、音楽を聴くことと本を読むことは感覚的に同じなんです。音楽を聴くときに「さあ、これから聴くぞ!」とはならないじゃないですか。でも本はなぜか「さあ、読むぞ!」となりがちなので、そうならずに同じ次元のものとして考えてほしいんです。
■本の内容をまとめるときは「誰かが読むことを前提に」
印南さんの話を聞いていると、やはり気になるのはどのようにして書評を書いているのか、何を考えて書いているのか、だ。
分かりやすくて、シンプルなまとめ方は、おそらく読書記録をつける上でも参考になるだろう。そのコツについて聞いてみた。
――印南さんの読書術、本の選び方やまとめ方について伺いたいのですが、本を買う場所は書店が多いですか? それともインターネットでしょうか?
印南:どちらも使いますが、書店に顔を出すことは大事だと思っています。実際に行かないと何が売れているのか、どんな本がプッシュされているのか分からないですからね。
ビジネス書棚はもちろん行きますけど、すべての棚を一通りまわります。興味のないジャンルの棚も見てみて、目についたものを手に取る。それが新たな好奇心を生みます。自分の興味あるものばかりだと、広がっていきませんし。
――この本にも書かれていたかと思いますが、印南さんの書評は引用が多いですよね。執筆する際も引用から抜き出していくのですか?
印南:ウェブ媒体の書評は、新聞などの一般的な書評と性格が違うと考えています。具体的には、ウェブの場合は読み手に「読んでみて、ちょっと役に立った」と思ってもらえることが大切だと思っているので、その読み手が一番気になりそうなところを想像して抜き出していきます。
まず、「はじめに」を読んで本が書かれた背景や概要をさらって、次に「目次」を見ながら、どこが読者にとって最も必要なのかを探していきます。その上で、印象的なところを抽出するという感じです。
――書評をまとめる際に気を付けていることはありますか?
印南:読み手をイメージすることですね。そして、どんな文章でも、人に見せるということを意識しています。そして、いちばん重要なのは、簡潔で読みやすいこと。そこに尽きますね。
また、その文章が掲載される媒体のカラーに合わせることも大切。たとえば「ライフハッカー[日本版]」の場合なら、通勤電車の中で5分くらいで読めて、一番気になる内容を拾えて「得したな」と思ってもらえることが大事だと考えています。
引用が多いのは、それが「ちょっと役に立った」と思ってもらうための重要な要因だから。その上でもっと深く知りたくなったら、実際にその本を購入して読んでほしいと思っています。いってみれば、自分は「入り口」的な役割を果たすべきだと考えているわけです。
――「ライフハッカー[日本版]」の書評は印南さんの色がほとんど出ていないですよね。これは印南さんの音楽系の著書を読んでから書評を読むと分かるのですが、すごく分かりやすくシンプルにまとめているように思います。
印南:「ライフハッカー[日本版]」はニュースサイトなので、「印南敦史」という存在をアピールすることはあまり必要ないと思っているんです。「自分」をどこまで出すべきかは媒体によって違いますし、さほど出す必要のない媒体で必要以上に自分を出してしまうと、それはちょっとみっともない。「ライフハッカー[日本版]」の場合は、「あのサイトで紹介されている書評は分かりやすいよね」という程度でいいと考えているわけです。
「ライフハッカー[日本版]」の読者は、おそらく本の内容が知りたくて読みに来ている。だからこそ、その媒体で自分が何を求められているかを考えなければいけないと思います。「どこまで出すべきか」を見極める必要があるということ。だから逆に、「印南敦史」の記名原稿としての側面のほうが強い「Newsweek日本版」ではストレートに自分を出していますし、女性読者が多い「WANI BOOKOUT」などでは、よりソフトな文体を心がけています。
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印南さんの著書『遅読家のための読書術』は発売2ヶ月で3万部突破、さらに韓国、台湾、中国、タイで翻訳出版が決定。オーディオブック化も実現し、11月8日からオーディオブック配信サービスの「FeBe」で配信が開始されている。
「100のうち、1だけでも引っかかるところがあれば、その読書は大成功。本の内容をすべて理解するのは無理ですが、1つか2つはフックになるところが必ずあるはずなので、その部分を大切にしてほしいです」と話す印南さん。
本を読むのが遅いということで悩んでいるならば、ぜひ『遅読家のための読書術』を開いてみてほしい。
(新刊JP編集部・金井元貴)
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