履正社vs大体大浪商
先頭打者本塁打を放った石田龍史（履正社）
衝撃の一発、いや三発だった。1回裏の履正社。1番・石田 龍史(2年)がレフトスタンドで先頭打者本塁打を放つと、二死後に4番・若林 将平(2年)はバックスクリーンへ飛び込むソロ。さらに5番・筒井大成(1年)がヒットで出塁すると、6番・竹田 祐(2年)がレフトスタンドへ2ランを放った。岡田龍生監督が｢奇跡ですね｣と語った本塁打攻勢。スタンドの保護者の抱き合いぶりが、この日が最初のヤマになる試合だったことを物語っていた。
相手は大体大浪商。エース左腕の宮本 大勢(2年)は、｢来年が楽しみ｣とプロのスカウトも話す好投手。その宮本に対し、履正社打線がどう挑むかがこの試合の見所だった。4番の若林は｢VTRを見ていてインコースが多い印象だった。ただそれを狙うと体が開いてしまうので、センター返しを心がけました｣と本塁打を振り返る。そして舞洲球場が打者にとって追い風だったのも後押しした。
さらに履正社打線にとって心のよりどころだったのが、宮本との対戦が決まった後に、3年生の寺島 成輝と山口 裕次郎が練習で対戦相手になってくれたこと。日曜日(25日)には3年生vs新チームで紅白戦も実施したそうだ。国体が控えていることもあり、3年生も実戦モード、自然と真剣勝負になった。ドラフト上位候補である寺島、山口の球を見ていれば、宮本の球は怖くない。そんな暗示をかけての一戦だった。
ただ、宮本もやはり好投手。｢(ホームランの前の)1球目がボールだったんですが、良い球だなと思いました｣と若林が話すように、2回以降は7回までノーヒットに抑えられ苦しんだ。
宮本大勢（大体大浪商）
ようやく、打線として形を作ったのが8回。先頭の2番・西山 虎太郎(1年)がヒットを放つと、3番・安田 尚憲(2年)が1球で送りバントを決める。ここから4番・若林、5番・筒井の連続長打などで4点を挙げて一気にコールドゲームに持ち込んだ。この攻撃でポイントになったのは、スラッガーである安田のバント。岡田監督は攻撃の前に、｢先頭が出たら送るよ｣と安田に声をかけていた。期待に応え、公式戦は初の送りバントを一発で成功させた。そして、岡田監督と安田のやりとりを後ろで｢聞いていた｣と話す若林が続き、打線が機能した。
｢塁を進めることがいかに選手も大事かわかったと思います。安田にいきなりバントのサインを出したら驚いたかもしれませんが｣と話した岡田監督。攻撃の形を最後に見せてのコールド勝ちで、ベスト16に進出。履正社の5回戦は国体後になる予定で、旧チームでも主力選手だった若林は、｢国体は楽しんできます｣と紅白戦の相手になってくれた3年生との最後の大会に胸を弾ませた。
一方、いわゆるサヨナラコールドの形で9回表の攻撃ができずに敗れた大体大浪商。エースの宮本はガックリとした表情であいさつの列に加わった。四田勝康監督は、立ち上がりの4失点を｢重かった｣と振り返った。｢結局ヒットを打たれた回に点を取られている。動揺というか、その部分でしょうね｣と左腕の課題を指摘した指揮官。2回から7回までは気持ちのこもったピッチングでノーヒットに抑えた。6回に宮本自らが二塁打を放つなど流れも一度は大体大浪商に傾いた。ただ、1回の4点がせめて最少失点ならば、攻撃の策をもっと繰り出せたかもしれない。指揮官が話す重たかった4点を、次に対戦した時にどう克服できるか。
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