「これまでがんと関わってきて、いま私が言えることは、病いを忌み嫌ってはいけないということ。病気から学ぶべきことは山ほどあります。病いになったことで、それまで築いてきたことを失ったという人もいるでしょう。けれどそこで初めて自分の人生において大切なことは何かが見えてくるということはあるのです」

そう語るのは、江原啓之さん。7月15日、国立がんセンターは、’16年に新たにがんと診断される人が初めて100万人を突破するという予測結果を発表した。また、がんのために亡くなる人も’16年は37万4,000人と、過去最高になる見込みだという。

スピリチュアリストとして「いかに生き抜くか」という人生哲学を伝え続けてきた江原さんは、これまで多くのがん患者たちの相談を受け、またその最期を見守ってきた。がんになったとき、自分のために、そして家族のためにどうすればいいのか?そんな、がん患者たちの悩みについて江原さんに聞きました。

【がんと診断されました。死ぬのが怖いです】

人は生まれた瞬間から死に向かっているといえます。わかってはいても誰にでもいつか訪れる死が怖いのはなぜでしょう?それはあなたが死んだら無になると思っているからでしょうか。たましいは永遠です。死ぬときは肉体という窮屈な服を脱ぎ捨てるときでもあるのです。死とはこの世でなすべきことを終えてたましいが帰っていくこと。そのときにたましいが何を見ているかというと、お迎えの人です。先に逝った大切な人や家族がお迎えに来てくれるのです。そしてあの世に帰ればすべてのことが明白になり、あらゆる苦痛から解放されていきます。ただしお迎えがない限り、この世で行き抜かなければならないのです。

【がんを克服するには、どんな心構えが必要ですか?】

いまの状況を受け入れ、一日一日を感謝して充実させられるかどうかということに尽きます。「こんなつらい治療がいつまで?」そう思うこともあるでしょうが、治療を、洗顔をしたり歯を磨いたりすることと同じような日常の習慣として受け入れましょう。一日を過ごせたことを感謝しながら積み重ねていくうちに、がんという病いから遠ざかり、いつしか治癒しているということも多くあります。そうして一日を大切に生きていたなら、たとえ再発して臨終を迎えたとしても感謝して逝くことができます。

【子供にがん闘病のことを話すべきでしょうか?】

お子さんの年齢や気質にもよると思いますが、多くの場合、幼くともそれなりにちゃんと状況を理解しています。命の教育はとても大切なことです。「子供のトラウマになったらかわいそうだから」などと過剰に配慮し、病室にもお子さんを入れないことがあるといいます。けれども、それはちょっと違うと思います。いずれ人は死ぬのだと理解することで、今日生きていることは尊いことなのだと知ることができるのです。