『ガキ使』で甲本ヒロトが自殺を思いとどまった? 松本人志に捧げられた曲とは

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「俺らの世代でダウンタウンとブルーハーツに影響を受けてないヤツはいない」。スピードワゴンの小沢がかつてこう語っていました。
片やお笑い、片や音楽。それぞれのフィールドで今までにないスタイルを打ち出し、カリスマ的人気を誇った2組。同時期に若者を熱狂させたそれぞれのグループですが、接点はあまりありません。


松本人志は甲本ヒロトのファン?


でも、浜田はともかく、松本人志は確実にブルーハーツ、もとい、甲本ヒロトが好きなはずです。その証拠に、『ダウンタウンのごっつええ感じ』と『伝説の教師』のエンディングテーマはTHE HIGH-LOWSの楽曲でしたし、若手時代の代表番組『4時ですよーだ』の最終回では、泣きながらブルーハーツの曲を唄っていました。
そもそも彼は、BOROの『大阪で生まれた女』やフォークバンド・野狐禅の楽曲など、ちょっと泥臭い音楽を愛聴する傾向にあるので、シャイで口下手な永遠のロック小僧・ヒロトが、懸命に想いを伝えようとシャウトする姿に惹かれるのは当然といえるでしょう。

……と、ここまで、松本がヒロトを好きである裏づけを書きましたが、では、ヒロト→松本への矢印はなかったのかというと、それがありありなのです。というか、ヒロトはこのダウンタウンのボケ担当によって、命を救われているかも知れないのです。
そのリアルとも噂ともつかない逸話は、先述した『ごっつええ感じ』のエンディングに使用された楽曲『日曜日の使者』の誕生にまつわる話になります。

命を絶とうとしたヒロト、ダウンタウンのトークが目に入り……


それは、ブルーハーツ解散前後でのこと。もともとピュアで不器用な男ゆえ、自身の内外で起こる問題を見てみぬフリすることも、ポジティブに合理化することも出来なかったのでしょう。バンド内の人間関係に疲れたのか、はたまた、将来に漠然とした不安を抱えていたのか、甲本ヒロトは、自殺を考えるほど悩んでいました。
考えに考え抜いた挙句、ついに「実行」へと移します。時刻は夜の11時。日曜日が終わり、明日からまた新しい1週間が始まろうとしていた時です。

深い絶望の中、永遠に朝が来ない世界へ旅立とうとするヒロト。そんな彼の目に、ある映像が飛び込んできます。つけっぱなしにしていたテレビのバラエティです。芸人2人が愚にも付かない立ち話を繰り広げています。その内容は、毒にも薬にもなりません。
でも、心の琴線に触れるそれは妙に可笑しくてヒロトは思わず「フフッ」と噴出してしまいます。笑っているその一瞬、死にたいくらいの深い悩みもどこかへ消し飛んでしまったかのようです。いつの間にか、テレビに釘付けになり、終始笑顔でいるヒロト。
あっという間の30分が終了し、彼は気付きます。「俺、まだ笑えるじゃん」と。この時見ていた番組こそ、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』だったのです。

松本の結婚式でも甲本ヒロトによって歌われた『日曜日の使者』


こうした実体験をもとに、ヒロトが松本人志のことをイメージして書いたのが、先述の『日曜日の使者』です。実際に歌詞を見ていきましょう。
「このまま どこか遠く 連れてってくれないか 君は 君こそは日曜日よりの使者」という歌い出しは、笑いのパワーで辛い現実を忘れさせてくれる松本のことを歌っています。「適当な嘘をついて その場を切り抜けて 誰一人 傷つけない」という箇所は、浜田が選んだ視聴者からの質問ハガキで、松本が即興のボケをかますガキ使のフリートークを指しているのでしょう。そこから「そして 東から昇ってくるものを 迎えに行くんだろ」と繋げます。
この歌は、明けるはずのなかったヒロトの夜を、太陽のような光で照らした日曜日よりの使者・松本に捧げられた曲なのです。

時を経て10数年後、ヒロトは松本の結婚式にサプライズゲストとして招かれ、この曲を披露します。いかなるときも笑いで見る人を救ってきた「日曜日よりの使者」も、この時ばかりはボケるのも忘れて、涙ぐんだに違いありません。
(こじへい)

松本人志の怒り 青版