常子の微笑としたたかさ「とと姉ちゃん」106話

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連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第18週「常子、ホットケーキを作る」第106話 8月4日(木)放送より。 
脚本:西田征史 演出:岡田健


ポン酢VS 回鍋肉
回鍋肉のCMで共演している杉咲花(美子)と山口智充(谷)が、ポン酢のCMをやっている唐沢寿明(花山)のもとへ「あなたの暮し」に戻ってほしいと頼みにくる。
広告要らない話に広告で生きている芸能人が出演しているのはやや皮肉めいているが、あ〜回鍋肉もポン酢でしゃぶしゃぶも食べたい!

さて。谷がうまく花山を丸め込んで編集部に連れてくることに成功。
だが、一触即発。素直になれないふたり常子(高畑充希)と花山。従来のドラマだとこういうふたりは恋愛関係になりそうなものだが、そうならないのが「とと姉ちゃん」。
恋愛じゃないが、常子と花山は「ふたりじゃなきゃつくれない」という関係であることをみんなで認識する。
そして、常子が謝り、花山に戻ってきてもらうことになった。
「まあるく収めようぜホットケーキみたいによ」。微妙に地味だったピエール瀧(宗吉)にもついに名言がでた!
なんといっても、106回は、花山が心を動かした瞬間、常子が小さく微笑んだところ。やられた。このひと、きっと、「見捨てないでください」も「失敗できないんです」もすべて確信犯なんだなあというのがよくわかった。視聴者に好き勝手にキャラがわからんと言われ、いい加減、種明かししなくてはと思ったのだろうか。
常子はとにかく生きて行くためにがむしゃらにしたたかにしがみついていくのだ。

あやうく美子に主役の座を奪われそうな状況だったが、やっぱり常子が主人公の器。天才だけど人間性に問題のある花山は、常子にうまく操縦されて才能を存分に発揮できるというわけだ。そもそも、最初の出会い、挿絵をもらう時既に常子は花山にマウンティングしていたのだった。

やっぱりとと姉ちゃんの足下にも及ばない美子だが、谷に「ご尽力いただきありがとうございました」と生真面目に礼を言う姿は、気高く美しい。ずっとそのままでいてほしい。
(木俣冬)