果物と野菜を食べると幸せを感じやすくなるって本当?
生きている以上、誰しもが「幸せになりたい」と考えているはずだ。何から、そして誰から「幸福」を感じるかは人によって異なるが、ある食物を摂取すると人生の満足度がアップするとしたらどうだろうか。
海外のさまざまなニュースを紹介する「livescience」にこのほど、「果物や野菜摂取と幸福感の関連性」に関するコラムが掲載された。
最近の研究によると、果物と野菜をほとんど食べなかった人が多く摂取するようになると、生活するうえでの満足度が増え、その変化は食生活を変えてから2年以内に訪れることが判明した。
研究に携わったクィーンズランド大学のリサーチフェローであるレゾ・ムシック氏は「果物と野菜を食べることで、身体的に健康になるよりも早く精神的に幸福を感じるようになります」と話す。
これまでの研究でも「果物と野菜は身体によい」ということはわかっていたが、「ガン予防になるといった身体上の恩恵は数十年たたないと現れないので、健康的な食生活をする動機が弱まる」(ムシック氏)という問題があった。今回明らかになった「2年以内」という期間ならばこの悩みを解消し、精神面での"利益"を享受しようと考える人が増えてくる可能性がある。
オーストラリアで1万2,000人以上を対象として実施した同研究では、2年間の追跡調査を行った。まず参加者に「普段から果物と野菜を食べるかどうか」、そして「食べるとすればどのくらいの量を食べるか」を聞き取った。そのうえで、10段階評価で「生活の満足度」を聞き取った。そして、果物と野菜摂取量の多寡の変化と参加者の生活の満足度を、2年間にわたって調べ続けた。
調査の結果、日々多くの果物と野菜を食べるようになった人は、生活の満足度が向上した。参加者の所得やその他の生活状況を考慮しても、果物と野菜の摂取増大と生活満足度の向上に相関関係があることに変わりはなかった。
この相関関係の詳細な理由は不明。ただ、果物やにんじんなどの野菜に含まれている「カロテノイド」という色素によって楽観的に物事を考えやすくなったり、ビタミンB12の摂取量が増えることで、「幸せホルモン」とも称される「セロトニン」という神経伝達物質の働きがよくなったりすることが関係しているのではないかと考えられている。
「栄養と感情健康学の関係」は、今後もホットな研究テーマとして注目されていきそうだ。
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○記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。
(杉田米行)