序盤からの壮絶な打ち合いを旭川東が制して勝利!

 両チーム合わせて39安打、試合時間2時間51分の大乱戦を制したのは、旭川地区屈指の進学校の集中力と粘りだった。9回裏二死、最後の打者の飛球を旭川東の中堅・小森悠平主将(3年)がガッチリとつかみ取ったのが、この試合、両チームを通じて初めての三者凡退。ようやく死闘の幕が閉じた。

 試合開始のサイレンは、壮絶な打ち合いの“ゴング”となった。まずは一死から小森悠主将が左中間に二塁打を放つ。暴投で三進後、小森建弥(2年)の二ゴロで本塁を突いたがタッチアウト。これで流れが切れたかに思えたが、ここからが戦闘の始まりだった。続く4番・本間翔(2年)が右中間二塁打して先制点を挙げる。5番・藤原悠(3年)も左中間を破り2点目。さらに平原東司(2年)の遊撃内野安打が一塁への悪送球を誘って3点目。八島健太(3年)が四球を選び二死一、二塁なったところで、旭川工・佐藤佳一監督は早々と先発・影近司(2年)に代えて、1年生右腕の谷口幸輝をマウンドに送った。

 佐藤監督が期待を込めて送り込んだ谷口だったが、この状況は1年生に少し酷だったか。代わりハナ、8番・佐藤丈流(3年)に中前適時安打を浴びてしまう。これでますます浮足立った谷口は、二死一、二塁から連続四球を与えて押し出し。結局、この回5点を失った。

 普通ならこれで序盤は、旭川東ペースで試合が運びそうなものだが、一回表の攻撃はほんのプロローグに過ぎなかった。その裏、旭川工は2番・草野泰士(2年)が右前安打した一死一塁から、佐藤良一(3年)が左中間適時三塁打して反撃のノロシを上げる。続く4番・真鍋光(3年)は初球の甘い高めのストレートを完ぺきにとらえ、右翼スタンドに2ランアーチをかけた。こうなると勢いは完全に旭川工だ。二死後、森河旦陽(3年)が四球を選ぶと、寺崎海斗(3年)が中前安打。一走・森河が果敢に三塁を奪い、打った寺崎も二塁に達した。ここで谷口は三塁線を破る2点適時安打を放ち、あっという間に同点とした。さらに連続安打で満塁とすると、チーム初安打を放った草野が左翼線を破る勝ち越しの3点三塁打。5点のビハインドは、あっさりと3点リードの展開に変わった。

 初回だけでこれだけ大きく動いた試合、このまま終わるはずがない。3回、旭川東は先頭の八島が左前安打するとバントで送って一死二塁。続く高橋 由弥(3年)の一ゴロ失の間に1点を返すと、桜田海都(3年)の二塁打で二、三塁に。ここで小森悠主将が中犠飛して1点差に詰め寄る。さらに小森建の死球で二死一、二塁とすると、本間が逆転の右中間2点三塁打を放ち、4番の仕事をしてみせた。

 それでもまだまだ殴られたら殴り返す。旭川工はその裏、先頭の寺崎が遊撃内野安打。続く代打・森口義大(3年)も初球を中前安打して一、三塁とチャンスを広げると、平間基裕(2年)が1ボール2ストライクと追い込まれながらも、しぶとく中前にはじき返し、試合を振り出しに戻した。3回を終わって旭川東9安打、旭川工11安打。試合時間は1時間15分を過ぎていた。

 4回からは3イニング無得点が続いたが、終盤に入った7回、再び試合が大きく動き出す。旭川東は一死一、三塁から桜田が一、二塁間を破る勝ち越しのタイムリー。小森悠主将が左前安打して一死満塁と再度チャンスをつくると、4番のバットがまたもや火を噴く。本間が痛烈な右前安打を放ち2者が生還。本間はこの日、5打点とその重責を果たした。旭川工も敵失に乗じて1点を返して食い下がったが、旭川東が8回に最後の底力をみせた。平原が左中間三塁打した一死三塁から、旭川工は4番手・草野をマウンドへ。ところが佐藤を2ストライクと追い込んでからの4球目、低めを狙ったスライダーが暴投となり、三走・平原が生還。気落ちした草野のスキを、旭川東打線は見逃さず一死三塁と攻めると、高橋が中前適時安打して大乱戦にケリをつけた。

 この日の旭川の最高気温は、真夏並みの29・5度。試合途中には足のつる選手が続出するなど、し烈を極めたが、「最後まであきらめない粘りの野球」をモットーとする旭川東が執念をみせ、4年ぶりの北北海道大会出場に王手をかけた。

(文=京田 剛)