川崎の1点リードで迎えた79分、小林が獲得したPKを決めた大久保。今季10ゴール目を決めて勝利に貢献した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 27分にE・ネットの一撃で先制した川崎は、終盤、中村の絶妙なパスを受けた小林がエリア内で倒されてPKを獲得。すぐさまボールを拾い上げたのは、PKを獲得した小林ではなく、エースの大久保だった。
 
「疲れていたので、まずは水を飲もうと」。ボールを手放さずにセットし、ゆっくりと助走に入る。「PKは自信がある」と語ったとおり、ゴール右上に叩き込んだ。
 
「キーパーの動きをしっかり見て蹴れた。(GKが)動いてくれた瞬間に『よっしゃ』と。蹴った瞬間に入ったと思った」
 
 試合後、中村は「結果がすべて。終わってみれば2-0だから。欲を言えば3、4点目を取りたかったけど、すごく落ち着いていた」と総括。大久保も「とにかく勝てたのが一番」と安堵の様子を見せた一方、さらなる高みを見据えて、チームメイトへの要求も忘れない。
 
「最後のところで、自分が引いて空けて、ゴール前に飛び込んだ時に、ミスが多くて自分のところまで届かない。安パイでもいいから、パスを出して来ればどうにかする。だけど、出てこないからもったいない。DFを引き付けて、パス出していくと、自分の消耗も激しい」
 
 横浜戦での大久保は、中盤に下がる機会が多く、パサーとして存在感を発揮。前半終了間際には低い弾道のパスを小林に通して好機を演出すると、後半早々にはピンポイントパスを登里に供給し、ゴールチャンスを作り出した。「ノボリには『俺が出したようなパスを俺に出せよ』というメッセージでした」と語る。
 
 実際、パスが思うように届かない場面は少なくなかった。時折、大久保は声を張り上げて全身で悔しさを露わにするなど、フラストレーションを溜めながらプレー。そうした心理状態も重なり、PK獲得の際にボールを手放さなかった。
「FWとしては、すごく苦しいし、パスを出してくれよと」
 
 試合後、大久保は横浜戦をそう振り返った。チームとしては巧みにパスを回し、ゲームを支配していたが、最大のポイントは前線への供給だ。FW視点で大久保は指摘する。
 
「つないでいるから落ち着いているところもあるけど、全部がゆっくり(プレー)しようとするから、(中盤を)飛ばして前に出すことがほとんどない」
 
さらに、大久保はこう続ける「もったいないなと思いながらやっていました」と。パスがつながる展開で「もったいない」と語った真意はこうだ。
 
「DFを背負うなかでチャンスを作らないといけない。中盤に引いたら出してくれる。けど、ゴール前で相手DFを背負う場面で出してくれれば、何かが生まれる。そこでサイドに出しちゃうと何も生まれず、ゴールに向かえずに終わる場面がめちゃくちゃ多い」
 
 勝点3を手にし、首位をキープしても、いつもの大久保節は健在だった。表面上は厳しく聞こえるが、『気を引き締めろ』というチームメイトへのメッセージでもあるのだろう。
 
 6月18日の16節・アウェー福岡戦。勝利が条件ながら、鹿島や浦和の結果次第では、川崎の第1ステージ優勝が決まる。

取材・文:大木勇(サッカーダイジェスト編集部)