飽和するポイント制度、生き残るには? あえて内にこもったJR東日本
JR東日本グループの共通ポイントサービス「JRE POINT」が始まりました。「一億総ポイント会員化の社会」とも呼ばれ、幅広く、様々な企業が連携して展開する例が多い現在のポイントサービス。なぜそこでJR東日本は、「グループ内」という選択をしたのでしょうか。
ビッグデータの時代、あえてグループ内に絞るJR東日本
JR東日本が2016年2月23日(火)より、グループ共通のポイントサービス「JRE POINT」を開始しました。
現時点で使用できるのは駅ビル「アトレ」「アトレヴィ」「グランデュオ」などですが、加盟店は順次拡大される予定であるほか、電子マネー「Suica」で貯まる「Suicaポイント」や、JR東日本のクレジットカード「ビューカード」で貯まる「ビューサンクスポイント」もこれに統合される計画です。
ただ現在、こうしたポイントサービスは同一グループ内に留まらず、様々な企業、店舗で広く使えるようにすることで顧客を囲い込んだり、いわゆる「ビッグデータ」の活用を図るといった動きが多く見られます。
そうしたなか、なぜJR東日本は「グループ内」へ舵を切ったのでしょうか。
ある意味、JR東日本だからできる戦略?
「ポイントカードは“数の戦い”になっています。これからの時代、特徴的な戦略が必要です」(野村総合研究所上級コンサルタント、安岡𥶡道さん)
現在、企業が発行する「ポイント」は年間1兆円規模になっており、成熟化するなか、特徴的な戦略が必要と安岡さんはいいます。また自前のポイントと比べ、共同ポイントは規模のメリットがあるものの、自由度や得られるものといった面で“共同”であることのデメリットも存在します。
そうしたなかJR東日本は、とにかく自分たちのグループではそれが「分かりやすく」「貯まりやすく」「使いやすい」というハッキリとした特徴を提示し、この「JRE POINT」を開始。「一体感のあるグループサービス」(JR東日本事業創造本部部長、松崎哲士郎さん)というメリットを、「一億総“ポイント”会員化の社会」(野村総研、安岡さん)における戦略にした形です。
またJR東日本は鉄道をはじめ、ホテルや小売りなど様々な事業を展開していますが、駅ビルは地域密着度が高いといった理由などから、グループ内のポイントは24種もあるとのこと。使いやすいとはいえないその状況に、「まとめたほうがいい」という声が内部にあったといいます。
ただJR東日本によると、この24種類のポイントサービス、会員数は合計で約1800万人とのこと。すでにそれだけの規模の会員を獲得できている同グループですが、ポイントの共通化によりグループ内の相互送客、利便性向上による新規顧客獲得といった効果を得て、さらなる発展につなげることもできるでしょう。
また、逆にこうした「グループ内で」という戦略をとれるのは、首都圏を事業エリアとし、大勢の人々が日々利用する交通インフラを中核にしている企業だから、といえるかもしれません。
「JRE POINT」は、まず数年後の会員数1100万人を目指すとのこと。鉄道との連携についても、順次進められていく予定です。