北海道新幹線、「宇都宮通過」で落胆する人たち 「需要」「時間短縮」の壁は厚かった
2016年3月26日に開業する北海道新幹線(東京-新函館北斗)の宇都宮駅「停車」が見送られた。JR東日本が2015年12月に発表したダイヤ改正で明らかになった。
東京-新函館北斗を結ぶことになる北海道新幹線「はやぶさ」。現在、東北新幹線として東京-新青森を運行しているが、いまでも宇都宮駅は「通過」している。栃木県や県都宇都宮市といった関係自治体と、地元経済団体などにとって、「はやぶさ」の宇都宮駅停車は宿願だ。北海道新幹線の開業を機に停車させようと誘致活動を進めてきただけに、「通過」決定に首長らから落胆の声が挙がった。
地元議会は「停車実現」を決議
新幹線によって栃木と北海道が直接結ばれれば、経済交流の拡大や観光振興も図れるとして、これまで地元は連携して誘致活動を進めてきた。
宇都宮市の佐藤栄一市長らが2014年8月にJR北海道などを訪れ、宇都宮駅停車に向けて協力を要請。宇都宮市議会は同年9月に、栃木県議会も同12月にそれぞれ停車実現に関する決議を可決した。
2015年2月には佐藤市長と函館市の工藤寿樹市長がJR東日本と国土交通省を訪ね、停車の要望書を提出。同年6月には北海道も副知事がJR北海道を訪れ、停車を要請するなど「側面支援」に回ってくれた。
「下り」利用の乗客はたった1割しかない
しかし、こうした働きかけも報われることはなく、宇都宮駅停車はまたも実現しなかった。その理由は需要が見込めないうえ、所用時間を短縮する必要があったからだ。
JR東日本によると、宇都宮駅の新幹線利用客のうち、上りが9割で下りは1割。その下りの客の多くも仙台で降りてしまい、現在の終着駅の新青森まで向かう人はごく少数。つまり、「北海道新幹線が開業しても利用客増は見込めない」(JR東日本)というわけだ。
また、JR東日本とJR北海道は安全面に配慮して最速でも所用時間を4時間2分にし、飛行機より新幹線を選ぶとされる「4時間の壁」を無理に破ることはなかった。その一方で「速達性を重視する乗客も無視できない」(JR北海道)面もあり、少しでも所用時間を短縮するため、停車駅を可能な限り少なくしたというわけだ。
ただ、JR側も宇都宮駅の停車を見送るかわり、「仙台駅で下りの新幹線に乗り換えしやすいようにダイヤを組んだ」と関係自治体などに一定の配慮もみせた。
宇都宮駅「通過」に対し、佐藤市長は「誠に残念」と悔しさをにじませつつも、「仙台駅での乗り換え利便性の向上に一定の配慮をいただいた。引き続き停車に向けて努力したい」とコメント。栃木県の福田富市知事も「ダイヤ改正で宇都宮駅停車が実現できるよう要望する」と談話を出した。
ネット上でも「はやぶさの宇都宮停車は時間の無駄」「所用時間が4時間切れないのかとか、なぜ宇都宮に停車しないのかと怒られるJRも大変」と「通過」を当然とする意見と、「県民、市民として通過は納得できない」などと憤る地元の声で盛り上がっている。