延長13回の熱戦を制し大商大堺が初の大阪制覇

8回を投げ1失点のエース神田 大雅(大阪商大堺)

 エース・神田 大雅(2年)投入は6回から。大阪商大堺の静 純也監督が描いた打倒・大阪桐蔭プランは5回までに神田を除く3人の投手でタイミングを狂わせ後半をエースで凌ぐというものだった。

 大阪商大堺の先発・東山 一樹(2年)が投じた第1球は大きな弧を描く山なりのスローボール。遅球で惑わす軟投派左腕は立ち上がりに2四球とコントロールに苦しみながら犠牲フライによる1失点のみに抑えると、2回は打ち気にはやる大阪桐蔭打線を三者凡退。しかし2回り目に入った3回につかまり4安打を浴び3点を失う。

 さらにピンチを作るとマウンドを木戸元 彰吾(2年)に譲る。左腕から左腕への交代ながら球のキレで勝負するタイプの木戸元は後続を断ち、4回もピンチを作ったが無失点。5回、ニ死満塁で打順がトップに返り右打者が続く場面では右腕の小猿 佳祐(2年)がマウンドへ。小猿は大阪桐蔭の1番・中山 遥斗(2年)をきっちり抑え役目を果たした。

 静監督が「近畿大会では絶対にしません」と話した強打の大阪桐蔭対策の継投は投手が代わる度に球速が上がる。5回終了時のスコアは1対4、大阪桐蔭にリードは許したが「3点差以内で帰って来い」と送り出した3投手の踏ん張りで後半勝負に持ち込むことに成功した。

 6回、満を持してエースがマウンドへ。神田は188cmの長身を活かし高いリリースポイントから角度のある球を投げ込む右のオーバースロー。しかし、代わり端に大阪桐蔭の2番・永廣 知紀(2年)3番・吉澤 一翔(2年)に連続長打を浴び1点を失う。流れが大阪桐蔭に傾きかけたところで大阪商大堺の守備陣がエースを助ける。4番・三井 健右(2年)のフェンス手前の大きな当たりをセンター・辻 義鷹(2年)が好捕。一死一、三塁からはセカンドゴロのゲッツーで追加点を許さない。

 大阪桐蔭は4回と5回に一死満塁、6回は一死一、三塁と3イニング連続で絶好のチャンスを作りながらこの間わずか1得点。ドロンとしたカーブと威力あるストレートで先発・岩本 悠生(2年)が好投を続ける中、塁を賑わせても中々点差を広げられずこの時点で残塁は早くも2桁に乗った。

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7回からリリーフした大阪桐蔭のエース高山 優希

 この夏、甲子園出場を果たしたのは大阪偕星学園。4連覇を狙った大阪桐蔭を準々決勝で破り聖地の土を踏んだ。その大阪偕星学園の快挙に刺激を受け「大阪桐蔭、履正社を倒すためにやってきた」という大阪商大堺が意識して取り組んできたのが7、8、9回の攻防。好投手を初見で打ち崩すのは難しい。6回までは大阪桐蔭先発の岩本 悠生の前にイニング数を上回る三振を喫し1得点のみ。それも二死三塁からの意表を突くセーフティバントで挙げた得点だった。しかし、3、4打席目が一番重要と位置づける大阪商大堺打線が4巡目に入った7回につながる。

 1番・辻 義鷹のレフト前ヒットからチャンスを作ると4番・大森 蓮太(2年)のタイムリーで1点を返す。さらに一死一、三塁から準々決勝の大体大浪商戦と準決勝の阪南大高戦でノーヒットと当たりの止まっていた5番・出来 佑基(2年)が左中間を破る2点タイムリーツーベースを放つ。

「インコースに絞って思い切ってフルスイングしました」という一振りで1点差に迫ると出来はワイルドピッチで三塁へ。一死三塁とこれ以上ない同点のチャンスで6番・宗 智弘(2年)の打席の4球目、1ボール2ストライクから出来がスタートを切る。宗がセカンドゴロを転がす間に悠々と生還。実は宗がスクイズのサインを見落としており、追い込まれている状況でストライクが来たからバットに当てたものだったが結果的には一死三塁からのエンドラン成功という形になり、こだわっていた終盤の攻撃で試合を振り出しに戻した。

 その後は神田 大雅が9回一死一、三塁、10回ニ死二塁、11回一死一、二塁と何度もサヨナラのピンチを背負うもギリギリのところで凌ぎ切る。しかし、打線も7回からリリーフした大阪桐蔭のエース・高山 優希(2年)の前に8人連続凡退と封じられ、先頭打者を出塁させた延長10回と12回はバントを好フィールディングでさばかれチャンスを拡大出来ず。

 大阪桐蔭に押されながらも12回裏はレフト・大森、途中出場のセカンド・宮風 魁斗(1年)の好守備で三者凡退のイニングを作る。引き分け再試合の予感も漂い始めた13回、先頭の出来がレフト前ヒットで出塁すると一死後、サインではなく自分の判断でスタートを切る。

「前の打席でバント失敗してチームの流れ悪いと思ったんで思い切ってスタートを切りました。足を上げた瞬間行こうと、挟まれてもいいぐらいの気持ちでした」と左腕・高山が投球モーションを起こすと同時に二塁に向かい、捕手からの送球が逸れるのを見ると一気に三塁を狙う。バックアップしたセンターが三塁で殺そうとした送球は高く浮きカメラマン席へ。ボールデッドでワンベースが与えられ待望の勝ち越し点を奪う。

 その裏も神田が2人のランナーを出しながらもホームは踏ませず。当初は4回の予定がその倍となる8回を投げ抜き1失点。チームを初の大阪優勝へ導いた。「1点1点積み重ねて失点を少なく。1位というのは忘れて常に挑戦者という気持ちで行きたいです」静監督は普段通りの野球で近畿大会に臨む。

(文=小中 翔太)

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