鹿児島実、「伝統の一戦」に打ち勝つ

鹿児島実4点目・追立タイムリー

 鹿児島実と樟南。鹿児島球界を代表する2強の直接対決ということで、平日にも関わらず大勢の観客がいた。前日が運動会だった小学生の野球少年の姿も多く見かけた。準々決勝まで4試合で38得点、チーム打率4割4厘の鹿児島実打線と、4試合、31と3分の2イニングを投げて、奪三振40、失点1の樟南のエース浜屋 将太(2年)との対戦が見どころの一つだったが、予想に反して両者打ち合いになり、試合時間2時間42分も要した消耗戦になった。

 樟南・浜屋は連戦の疲れからか、ボールにキレがなく、制球も安定していなかった。立ち上がり、鹿児島実は5番・追立 壮輝(2年)のレフトオーバー三塁打で幸先よく2点を先制する。

 追立は綿屋 樹主将(2年)、板越 夕桂(2年)と並んで、夏の甲子園でベンチ入りした3人の1人。4番・綿屋以外は試合ごとに打順が入れ替わる中、追立は1番や3番を打っていたが、今大会で5番を打つのは初めてだった。

 4番・綿屋が敬遠で歩かされることを想定すると、鹿児島実打線にとって、綿屋の後を打つ5番は大きなカギになる。これまでは西野 友晴(2年)や板越が入っていたが、左投手の樟南投手陣を想定して宮下 正一監督は右の追立を抜擢。今大会は調子を落としていたが、準々決勝から2日間空いた中で、ロングティーなどを打ち込んで調子を取り戻していた。

「身体が開き気味になっていたのを修正した」と追立。想定通り、綿屋が歩かされた後、初回の三塁打は「打席の中で『遊び』の感覚を持って打てた」。4回戦の指宿戦で綿屋のホームランでも解説したが、力を抜いてリラックスして待つところと、インパクトの瞬間にしっかり力を入れて打つ感覚をしっかり持って、先制の長打を打つことができた。

 3回にも綿屋、追立のタイムリーで4点差とし、序盤で一気に畳み掛けそうな展開だったが、その裏、樟南に3点を返されてから、試合の歯車が狂い始めた。

 3回裏、簡単に二死をとった後、3番・今田 塊都(2年)がセンター前ヒットで出塁。4番・河野 勝丸(2年)の打球はサードライナーで、三塁手・板越のグラブに収まったかと思われたが、打球の勢いに押されたのか、ボールがレフトファールグラウンドを転がる長打になった。記録上は二塁打だが「あのエラーで試合が重くなってしまった」と宮下監督。この後タイムリーで2点を返され、外野の返球がイレギュラーして後逸する間に3点目を献上し、1点差になったことで樟南も息を吹き返し、終盤までもつれる展開になった。

 終盤、綿屋のタイムリーやエース丸山 拓也(2年)が自らのバットで2得点を挙げるなど、追いつかれることはなかったが、これまでにない打ち込まれる展開や、守備の乱れなど、課題の残った一戦だった。

(文=政 純一郎)

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