タミヤ「トヨダAA型」にみるプラモデル設計今昔物語
プラモデルを作ったことがあっても、プラモデル設計の方法はさほど知られていない。金型があって、樹脂を流し込んで作るのは今も昔も変わりはないが、3Dスキャナーや3Dプリンターの普及、高性能化により他の産業同様、プラモデル設計の現場も様変わりしているという。今回タミヤメディアミーティングでは設計現場のエンジニアを交え、プラモデル設計手法の変遷を追った。
手描きの図面
プラモデル化はまず資料集めから始まる。現地取材では数千枚にも及ぶ写真撮影や、採寸を行い、各部のディティール、大きさを把握する。
これは1989年当時のトヨタ・スプリンタートレノの設計図。当時はコンピューターを使わず、手書きで図面をおこしていたために描きあげるのに数週間の時間を要したという。
その後2倍スケールの木型を起こし、最終的な造形の確認をする。2倍スケールにする理由はより高精度な造形を行うためであり、図面はこの2倍スケールに合わせたもの。この後実際のスケールモデルの大きさにした金型を起こし、最終的な生産へと移行する。
最新の技術で最古のものを
タミヤが6月下旬に新発売する1/24スケールモデル、トヨダAA型では3Dスキャンを含む最新の設計手法を取り入れている。トヨタ自動車が1936年に発売した初の量産自動車、トヨダAA型は現存する車両がほとんどなく、復元され現在はトヨタ自動車博物館に展示されているモデルを綿密に取材、CADによりモデルデータ化。付属するドライバーも3Dスキャンにより頭髪から顔や服のシワに至るまで精密に再現している。
通常のCADでは服や幌のシワといった不規則な曲面の再現は熟練の技が必要な上、正確な再現は難しかったという。それが3Dスキャナを使うことで自然な仕上がりになった。
実はこのドライバー、タミヤ社員がモデルとなったという。筆者はご本人を知っているだけに、その再現具合に正直驚いた。他にミリタリーシリーズの人形も3Dスキャンを利用しており、これまでのものよりもその姿勢や細かな部分の再現度は格段に向上したという。
デフォルメの葛藤
自動車設計において、3Dモデルデータが使われるのはもはや当たり前である。最新モデルではすでにある3Dモデルデータをスケールモデル化にあたりメーカーより提供され利用するケースも増えてきた。しかしここで問題となるのはデフォルメである。
これまでのアナログ設計手法では設計者の意図で「より格好よくみえるように」修正されるのが通常であった。特に小さなスケールモデルは俯瞰するのが普通であり、実車の目線とは異なることも理由のひとつである。空気が入ったゴムタイヤは重力でつぶれるが、樹脂モデルでは硬くて潰れないために予め若干車高を下げて設計していたという。このデフォルメの度合いが、同じモデルであっても各メーカーの特色につながっていた。
ところがメーカーから3Dモデルデータが提供され、特に最新モデルで実車をみたことがない場合は、どこをどう手をつけていいのか悩ましいという。また競合メーカーとの差別化も計りにくいのも問題だ。
最終的には職人の技
アナログからデジタルへ、コンピューターの普及と発展にともない設計手法が進化した。しかしいずれの時代もかかわるのは職人であり、また作るのも人間である。プラモデルを作る楽しみ、精密な再現をすることで憧れの自動車、飛行機、戦車などを手にするよろこびはどの時代も変わらない。
昔プラモデルを楽しんだ人もこの機会に改めて、最新技術を使って作られたプラモデルに触れあうのもいいのではないだろうか。
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【参考・画像】
※ トヨダ AA型 - TAMIYA