「残業代は、仕事を効率悪くやる人へのご褒美」 厚切りジェイソンの批判は「世界標準」なのか
漢字をネタにした「切れキャラ」で人気急上昇中の異国のお笑い芸人、「厚切りジェイソン」こと、ジェイソン・デイヴィット・ダニエルソンさんが、日本の「残業」について痛烈に批判した。
厚切りジェイソンさんは、東証マザーズに上場するITベンチャー企業「テラスカイ」のグローバルアライアンス部長でもある。外国人管理職の目線から、日本の悪しき慣習といえなくもない「残業」制度に、「本当にバカバカしい」と毒づいた。
「それだとグローバルでの競争が無理ダロウ」
上場企業の部長とお笑い芸人の「二足のわらじ」で活躍する厚切りジェイソンさん。2015年5月14日に、フォロワーから「ノー残業デイって、なんですか? 僕の住んでいる地域にはありません! 僕は毎日残業です」とツイッターで投げかけられ、
「仕事を効率よくし、毎日ノー残業デーにすべき。残業前提の仕事はバカバカしい。本当に早く済ませる方法はないの? 疑わしいぞ」
と、嘆いた。
残業が多い日本人の「働き方」は効率が悪く、残業代は「日本の一般企業では残業しないと大した給料もらえないというのは、仕事を効率悪くやる人にご褒美をあげている」とし、このままでは日本の企業は「どんどん効率も競争力もわるくなる。それだとグローバルでの競争が無理ダロウ」と、指摘している。
厚切りジェイソンさんは17歳のときに飛び級でミシガン州立大学に進学し、イリノイ大学大学院に入学したエリートで、米国で働いていた経験ももつ。そんなこともあって、日本人の働き方には疑問をもっているようだ。
インターネットでは厚切りジェイソンさんの発言に、
「もうみんな気づいているのだから、とっとと残業制度なんてなくしてしまえばいい」
「まったく正論。仕事量が同じなら早くやった人に給料を多くあげないと効率の悪さを助長するだけ」
「仕事ができる奴ほど、仕事が集まってくるのが現実。一番いいのは、時間じゃなくて仕事の量と難易度で給料を決めることだな」
「残業します=自分は無能です、といってるようなもの」
などと、賛同の声は少なくない。
ただ、その半面、
「仕事を早く終えて定時で帰ると給料が減るのだから、適当に働いて残業する人が出てくるのも無理はない。働いた分をきっちり払ってくれれば文句はないが、そうはならないだろ」
「能力給でもかまわんが、往々にして能力を評価する人間の好みで決まるようなもんだから、どうしようもない」
といった否定的な声もあった。
日本人の労働時間は米国より少なかった?
さらには、
「アメリカも相当酷いよ。持ち帰り残業で夜11時まで電話営業してる人、たくさんいたぞ」
「米国流の裁量労働が効率的かどうかはわからないな。遊びながらでも稼ぐヤツはいるだろ」
などといった声もみられた。
労働政策研究・研修機構がまとめた「データブック国際労働比較 2014」の、一人あたりの平均年間総実労働時間(就業者、サービス残業分を除く残業時間を含む)によると、日本は1980年には2000時間を超えていたが、88年の改正労働基準法の施行を契機に労働時間は着実に減少を続けており、2012年には1745時間まで減ってきた。
一方、欧米諸国も減少から横ばい傾向となっており、2012年はイタリアが1752時間、米国は1790時間、英国が1654時間、フランス1479時間、ドイツ1397時間などとなった。また、スウェーデンは直近では増加傾向にあって1621時間となっている。
じつはイタリアと米国は、日本の実労働時間を上回っていたのだ。
同機構は、「就労の仕方などが国によって異なり、そのためにデータの取り方が同じではないので一概にはいえませんが、日本人の労働時間が短くなっていることは間違いありません」と話す。
その背景の一つには、非正規労働者の増加がある。多くの企業で年功序列が廃止されて、能力給や成功報酬を導入したり、その一方で非正規労働者を増やしたりしてきたことが、労働時間の短縮につながり、残業時間も短くなる傾向にあるようだ。
インターネットには、
「無駄に残業が増える理由の一つに、早帰りしにくい雰囲気がある」
という声もあり、職場環境も大きな要因の一つのようでもある。