【ファンキー通信】イメージできるのに絵が描けない! 「うろ覚え」の謎

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 ウルトラマンや仮面ライダー、いずれも往年の名ヒーロー。みなさん頭にパッと思い浮かべてみてください。なんとなくイメージはできたでしょう? でもいざ絵に描いてみると・・・。描けないんですよね。

 こんなふうにイメージは浮かぶのに絵には描けない、そんなことよくありますよね。これはなぜなのでしょうか? 名古屋大学大学院で記憶に関する研究をしている川口潤教授によると、そもそもしっかりイメージしてるつもりでも、ちゃんとイメージできていないからなんだとか。

 「10円玉とか100円玉の表裏を書いてもらうという状況を考えるとわかりやすいでしょう。ぱっと考えると、10円玉は毎日使っているし、物心ついてから長年見ているはず。イメージできそうに思います。しかし、いざ書こうとすると非常に難しいです。一度、やってみると面白いでしょう」(川口潤教授)

 さっそく描いてみようとしたんですが・・・描けない!!(画像参照)

 これは日常的な記憶が曖昧であるということを示しているという。人間というのは“自分が何を知っているのか”についてあまり正確に知らないんだそうだ。

 では絵や音楽などを生業にしている芸術家の方々と我々一般人とでは何が違うのでしょう?

 「芸術家と一般の人とで何が違うかについてはいろんな議論がありますが、イメージ能力が高いことを示す例はいくつかあります。画家はもちろんそうでしょうが、音楽の分野でも一流の指揮者は交響曲の最初から最後まで(一般に4楽章あります)が“見える”と言う人もいますし、また譜面のかなり広い範囲を“見ている”と思われます。交響曲などでは、多くのパート(バイオリンとかトランペットとか)が何行も書かれている譜面を見るわけですが、それを覚えるのは視覚的イメージも使っているだろうと予想できます」(同)

 やはり芸術的な感覚に優れた人はイメージ力が違うということのようです。普通の人は絵や風景を記憶しようとする場合には、言語化しようとするそう。それがかえって時間がかかったり視覚的記憶を妨げてしまうのです。

 絵を記憶したいのであれば言語化しようとしないこと。目をつぶりイメージを思い浮かべ、イメージが薄れてくればまた目を開けて絵を見て、また目をつぶって・・・これを繰り返せば、言語化することなく“そのまま”の絵を記憶できるのだと川口教授は教えてくれました。

 絵を覚える、そして描くという行為にこんなシステムがあったなんて。人間の脳ってやっぱり不思議なものですね。(加藤克和/verb)