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●「自分が努力しないと何も動かない」
女優の松浦雅が、杏主演のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で、杏演じるめ以子の娘・ふ久役に抜てきされた。2012年6月の「第1回JUNONプロデュースガールズコンテスト」でグランプリを受賞し、華々しく芸能デビューを飾った松浦。しかし、この大役を射止めるまでには挫折と苦悩があったという。撮影の合間を縫って、松浦が取材に応じた。

――まずは、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』のレギュラー出演決定、おめでとうございます。初のレギュラードラマが、NHKの朝ドラというのはなかなかすごいことですよね。

ありがとうございます。11月から撮影に入っています。最初にお話を頂いた時、私でいいのかなって(笑)。朝ドラは、もっといろんな役をやって下積みを築いた上でやらせていただくものだと思っていたので、すごくビックリしましたし、うれしかったです。

――初めて現場に入る時はどのような心境でしたか。

ちょうど、舞台『鬼切姫』の稽古中だったので、同時進行になることが自分としては不安だったんですが、杏さんやムロツヨシさんがすごく和ませてくださって。リラックスして撮影することができました。「楽しかったー!」って言って帰ったのを覚えています(笑)。その日以降も緊張感はしてるんですが、あまり構え過ぎたり自信をなくしたりしてもしょうがないので、堂々と演じることを心がけました。

――2013年は3本の舞台に出演しましたね。現場の空気感も、ドラマとは違うと思いますが。

舞台は稽古期間があって、1つのことをずっと繰り返す現場です。楽屋もなくて稽古場で一緒に過ごす時間が多いので割と共演者の方と仲良くなりやすいんですが、ドラマは楽屋があると聞いていたので仲良くなれなかったらどうしようと思っていました。でも、楽屋以外にロビーがあって、そこに皆さんいらっしゃるので、お話ができるんですよ。

――松浦さんが演じる「ふ久」はどのような役柄なのでしょうか。

物理にしか興味がないオタクです。それ以外に興味があるものがなくて…というか人間に興味がまったくないんです(笑)。人と接することも苦手なので、周囲ともなじみにくい存在。幼い頃から、「普通じゃない」と言われて育った女の子です。父の悠太郎(東出昌大)さんに似ている部分もありますが、好きなことに熱中するところは母のめ以子(杏)さんにそっくりで。物語が進むにつれて、その母と似ている部分が徐々に出てくるのかなと思います。

――そんな彼女が、弟・泰介の友人で野球部ピッチャーの諸岡弘士(中山義紘)に恋心を抱くわけですよね。

そうなんです! そこが見どころですね(笑)。

――2012年の「第1回JUNONプロデュースガールズコンテスト」でグランプリを受賞。デビューから1年半ほど経過しましたが、振り返ってみていかがですか。

はじめはうまくいかなくて、何にもなかったんです。オーディション受け続けて、落ち続けて…。そんな毎日が、ずっと続いていました。その時は、何にも努力してなかったんですよね。グランプリを受賞したから、勝手に売れるものだと安心している部分があって。そういう時期があってから、なんとかはいあがったというか…たくさん映画を見て作品に触れたりして、お芝居の勉強に対して意欲が出はじめた時に西原理恵子演劇祭の舞台が2本決まったんです。

そこでお芝居が好きという気持ちが、変わりました。それまでは、ただ「好き」とか、ただ「やりたい」とか、その程度だったのが、「これしかできるものがない」という状態になったんです。デビューしてすぐにつまずいて、どん底まで行ったので…その時期は時間がすぎるのも長く感じましたね。舞台が決まってから、オーディションにも受かるようになって、ここ最近は充実しています。

――早めに挫折を知ることは、ある意味で幸せなことですよね。

そんなに甘いものじゃないというのを自覚できたことと、自分が努力しないと何も動かないというのに気づけたことは貴重だったと思います。

すごい完璧な人がいたとして、でも全く努力していなかったら、みんなは見たいと思わないですよね。そのことを身をもって感じることができました。きっと、グランプリ後が順調だったら、ひねくれた人になってるんじゃないかなって(笑)。

●2014年は「映画に出るのが1つの目標」

――デビューのきっかけになった「第1回JUNONプロデュースガールズコンテスト」は、どのようなきっかけで応募したのでしょうか。

小さい頃からマネをすることが好きで、ディズニーアニメのセリフや歌を完コピしていました。美容師になりたいとか、薬剤師になりたいとか…いろいろな夢がありましたけど、進路を考えるときに絞っていくと"女優"しかありませんでした。将来はマネをする方ではなくて、マネをされる方になりたいなと思うようになったんです。

――多くの人が憧れは抱きつつも、現実的なことを考えて諦めてしまうのが芸能だと思います。松浦さんがそれでも1歩を踏み出せた理由は?

応募したのは、高校2年生の頃。周りが大学を意識しはじめてたんですが、大学で勉強したいこともなくて…そんな状態で大学に行くことが自分の中で許せなかったんですよね。学校で過ごしていても、何でみんなと同じことをやらないといけないんだろうとか疑問に思うこともあって…。チャレンジしてみようと決意しました。あとは周囲がどんどん進路を決めていく中でのプレッシャー…自分も決めなきゃという思いというか焦りもきっとあったんだと思います。

――オーディションの自己PRでは、レディー・ガガの「You and I」を弾き語りで披露したそうですね。ギターはいつ頃から?

QUEENとかビートルズとか親の年代の音楽を聴いて育ちました。小さい頃からずっと聴いていて、今も70年代ロックとかその時代の音楽が大好きなんですよ。その延長でエレキギターを習いはじめました。オーディションの地方予選で自己PRを書く欄があって、歌も好きだったので、もうやることはこれしかないなと(笑)。今後もミュージカルなどで歌と触れていきたいなと思っています。

――ミュージカルといえば、2013年は『セーラームーン』にも出演しましたね。

そうですね。『セーラームーン』は幼稚園の時に見たミュージカルでもあって、当時出演していた黒田百合さんと西原理恵子演劇祭の舞台で共演したんです! その後の舞台『鬼切姫』では、『セーラームーン』に出演されていた笠原竜司さんとご一緒させていただいて。ずっと、『セーラームーン』に関わっているような、そんな一年でした。

――その『セーラームーン』の打ち上げの席で、原作担当の方からの言葉に涙してしまったそうですが、何と言われたんですか。

あれは…あの〜、内緒です(笑)! 言ってもいいんですけど…う〜ん…、やっぱり内緒です(笑)! そんな変なことじゃないんですよ! とっても、いい涙で。マーキュリー役でよかったというか…生きててよかったと思いました。

――大事な言葉として閉まっているわけですね。あと気になったのは、ブログで彩夏涼さんのことを頻繁に取り上げていますよね。

私の役は連れ去られてしまうので、セーラー戦士といる時間よりも、ゾイサイト役の彩夏さんと一緒にいる時間の方が長かったんですね。ゾイサイトは死んでしまうこともあって、物語ではかなわぬ恋が描かれています。だから、日常では彩夏さんと普通に過ごしたいというのもあって、仲良くなりました。

――お風呂場で「彩夏さんはどうして彩夏さんなの」とつぶやいてしまうほどだそうで…。

あははは! 私、役に入ってしまう癖があって、松浦雅として彩夏さんをというわけではなくて、演じた亜美ちゃんがゾイサイトのことが大好きだったので、それと一緒になっちゃったんでしょうね。あとは、劇中で結ばれないというのが大きいと思います。本当に楽しい日々だったので、彩夏さん含め、みんなと会えなくなるのもとっても寂しかったですね。

――ほかの作品も役に入り込んでしまうんですか。

時々、どれが自分なのか分からなくなる時があります(笑)。周りからは顔つきも変わると言われますし、考え方も変わってしまいます。

――2013年は飛躍の年とも言っていい活躍だったと思います。2014年はどのような年にしたいですか。

まだ映画に出たことがないので、映画に出るのが1つの目標。あとは…『ごちそうさん』に出たからと言っても、それもグランプリを頂いた時と同じで、その後もお仕事が続く保証があるわけではないので、デビュー当初の挫折した経験を生かして、次につなげる準備を怠らずに続けていきたいと思います。

(水崎泰臣)