中国の野球選手という職業は、かなり特殊だったりする。
野球で生活しているという意味では、プロという解釈も出来なくはないのですが、実態は日本の社会人野球ともプロ野球とも違う。

体育局所属の公務員という彼らの本当の肩書が、中国野球の今後を考える上での大きなポイント。
プロリーグのように、リーグの収益やスポンサー、親会社から給与が出るわけではなく公務員として国からお金をもらって生活しとるわけです。
昨年まで行われていた中国リーグは、スポンサーがリーグ開催にかかる費用を負担するような形で開催されていたもの。観戦費は無料で、中国野球の発展にビジネス的な意味で目を付けた海外企業がスポンサーになって、中国野球のレベルアップと見るスポーツとしての普及の為に開催されていたもので、いわゆるプロリーグと呼べるものではなかったと僕は解釈しています。

ただ、リーグ開催の頼みの綱だった海外資本のスポンサーも昨年撤退。
広大な面積に中国の野球チームは散らばっているので、移動にかかる費用などを負担してくれるスポンサーがいない限りリーグ戦開催は不可能に近い。
現在は年に1度行われる国内選手権や、台湾の社会人チームとの対抗戦、各チームの海外遠征くらいしか実戦の機会はほぼないと言っていいでしょう。ましてや、その状況で「見るスポーツ」としての普及なんて・・。

ヨーロッパように、MLB傘下のチームにたくさん選手を送り込むのも難しい。公務員という安泰の地位を捨ててまでマイナーリーガーになりたいという選手は少ない。チーム、というか省側も4年に一度行われる中国スポーツの祭典、全国運動会(国体)で省の看板を背負って結果を残して貰うために野球チームを持っている側面があるので、なかなかいい選手を手放したくない実態があります。
以前横浜や巨人に育成選手として契約していた中国人選手は、チームの主力とは言えないような選手でしたし、留学という側面が非常に強かった。MLBのチームとマイナー契約していた選手も公式戦には出場せず、ほとんど練習生のような扱いですぐに帰っていきました。

つまり、実質的に国内でレベルアップするしかないという状況の中国内での実戦の機会も非常に減ってきている。
中国野球のレベルアップという意味でも、見るスポーツとしての普及・メディアに取り上げられる機会を増やしていく意味でも厳しい状況が続いているのです。

根本的な構造の問題なので、そこを変えるのは非常に難しい。
これは野球に限らず中国社会そのものに言える部分があると思いますが・・・。

ただ、唯一何かこの状況を変えるためにすがれるものがあるのだとしたら、それはまさしく国際大会です。
国際大会で結果を残せば、メディアで大きく取り上げられるかもしれない。スポンサーが付くかもしれない。競技人口が増えるかもかしれない。

そう単純な話ではないというのは分かってるのですが、そう思うしかないような気がします。
五輪がなくなってしまった以上、野球界にはWBCしかありません。
中国代表がWBCで背負っているものは、日本代表が背負っているものとはまた違う性質のもののような気がしますね。


さて、そんな中国に今回どのくらいチャンスがあるのか。
という部分をここから具体的に見ていきたいと思います。


中国代表は、2008年の北京五輪、2010年の広州アジア競技大会を一つの境目にして世代交代が進んできています。
アジアシリーズが休止だったり、開催されてても不参加だったりしたのもあってナショナルチームとしての活動は昨年秋までほぼありませんでした。
昨秋は韓国で行われたアジアシリーズ、台湾で行われたアジア選手権に中国代表として参加。そこでやっとWBCを戦うチームがどんなチームなのか見えてきた状況です。