広東省広州市に本社を置く広重企業集団の幹部職員、郭建南さんが23日早朝、同市の農村部にある陽西県程村鎮の執務室で、デスクに向かったまま死亡しているのが見つかった。郭さんは会社の貧困撲滅事業の担当者として派遣されていたが、連日のように午前1時をすぎるまで残業していたという。中国新聞社が報じた。

 郭さんが現地で勤務を始めたのは2011年4月だった。道路、水道、学校校舎など「荒れ放題」になっていたインフラの整備を手がけ、貧困な高齢者には、養老保険を受け取れるよう手配した。

 程村鎮の呉認友鎮長と協議を繰り返し、同年中に貧困な家庭の子の学資に充てるため、6万元(約78万5000円)の基金を創設した。ささやかな基金だが、最低限の学資すら用意できない家の子どもにとっては「希望の光」だった。郭さんはさらに地元の事業体からも、収益の一部を基金に拠出する仕組みを作り、今後10年間は学資援助をつづけられるめどをたてた。

 会議や交渉、自らの視察、本社からの視察の受け入れに加え、膨大な事務手続きもこなさねばならなかった。仕事が午前1時、2時まで続くことは「当たり前」だった。午前3時ごろまで仕事を続けることもあった。

 郭さんの体調が悪そうなので、ゆっくりと休息をとることを勧める人もいた。郭さんはハッカや漢方薬を混ぜている油薬を「ツボにすり込めば大丈夫」と言って聞き入れなかった。仕事を進める手をあくまでも緩めなかったという。

 郭さんは11月22日午後8時35分付で、駐在している村の共産党責任者に対してメールを送信し、貧困撲滅のための事業が「地域の外部の人間が私利のために利用していることは明らかです」として、対策を強く求めた。このメールが郭さんにとって「最後の業務連絡」になった。

 翌23日早朝、郭さんの妻は郭さんに何度も携帯電話をかけたが、発信音が聞こえるだけだった。心配になって、近くに住む同僚に様子を見るように頼んだ。同僚が午前8時10分ごろ事務室に到着すると、郭さんはデスクに向かったまま息を引き取っていた。50歳だった。デスクの上には、書きかけの事業計画書が残されていた。(編集担当:如月隼人)