11月27日に投開票される“大阪冬の陣”、市長・府知事のダブル選挙。市長選で橋下徹前大阪府知事と火花を散らす平松邦夫大阪市長において各種の世論調査によれば、平松氏は一時の劣勢は盛り返しつつあるものの、互角か、それをやや下回るという状態が続いており、苦戦には変わりがない。しかし、ここにきて強力な援軍が現れたという。
 「上方落語界の重鎮で人間国宝の桂米朝(86)率いる米朝一門が、平松市長、そして知事選に出馬し松井一郎府議と激突する倉田薫・前池田市長の支援に回る可能性が出てきたのです。米朝一門は、普通の落語家の一門ではない。独立した事務所を構える芸能プロダクションとして活動しており、こと落語に関しては、関西では吉本興業、松竹芸能と勢力を三分しています。ホール落語や地域寄席の振興に力を入れ、地域との強いネットワークには定評がある米朝一門が反・橋下に回れば、これほど強力な味方はありません」(地元紙記者)

 倉田氏の地盤である池田市は、文化を中心とする街作りを積極的に進め、「上方落語ミュージアム」を設けるなど、落語に関しても繋がりが深い土地柄。その意味で、米朝一門の平松・倉田支援は、自然の成り行きと言える。
 平松陣営の関係者によれば、
 「米朝さんの長男・桂米團治氏から『知事選に出てほしい、と倉田市長に伝えて下さい。親父を車いすに乗せてでも、文化を守る倉田市長を応援に行きます』という電話がありました」
 とのこと。平松市長と米朝一門との間を取り持った、あるイベントプロデューサーはこう語る。
 「橋下さんでは大阪の大衆文化はよう護らんやろうということです。米團治さんには一門をまとめてもらい、その後、上方落語協会の方にもプッシュしてもらえれば、と思っています」

 こうした米朝側の動きは、他の大衆芸能にも飛び火し、漫才、浪曲、日本舞踊といった分野にも平松支援の動きが出始めているという。このように大阪の芸能関係が橋下氏と大阪維新の会に批判的なのには、もちろん理由がある。
 「みんな3年前のドタバタを忘れていないんですよ」
 とは、あるミナミの興行師。
 「ドタバタ」とは『ワッハ上方』(大阪府立上方演芸資料館)の移転論争のことだ。2009年、当時の橋下知事と大阪府は、財政再建の一環として、難波にある『ワッハ上方』の通天閣への移転を計画。これが『ワッハ上方』の大家である吉本興業や、芸人・演芸関係者の猛反発を招き、橋下氏との間で論争となったのだ。