8月22日から25日にかけて行なわれていたU−18世代の国際大会『SBSカップ』で、U−18日本代表が優勝を飾った。フランスとメキシコのU−18代表とのゲームはいずれも引き分けで、PK戦による勝利がタイトル獲得につながった。

 とはいえ、11月に開催されるAFCU−19選手権(U−20W杯アジア一次予選という位置づけ)へ準備を進めるチームにとって、フランスやメキシコに負けなかったのは価値がある。チームを率いる布啓一郎監督も、「欲を言えばフランスとメキシコ相手に勝ち点3を取りたかったが、PK戦でも精神的に崩れずに結果につなげたのは大きな収穫」と、チーム結成後初の国際大会を総括した。

 では、日本はフランスやメキシコと互角の戦いを演じることができていたのか。フランスと1−1で引き分けた試合後、「通用していた部分と、差があった部分が両方ある」と布監督は語った。技術の精度と運動量が保たれていた時間帯は、目ざすサッカーをピッチ上に描くことができていた。ところが、技術的なミスが目立ったり、チーム全体の活動量が低下してしまうと、最終ラインからのラフなボールが増えてしまった。日本代表でも陥りがちな試合展開のひとつである。

 個人的に気になったのは、CBの攻撃力だ。

 日本国内でのセンターバックは、何よりもまず「強さ」と「高さ」が評価基準となる。1対1での力強さや粘り強さと、空中戦で競り負けない高さである。

 僕は25日の最終日を取材したのだが、4バックで戦っていたフランスは、2人のセンターバックがともに185センチ以上の長身だった。3−5−2の布陣で静岡ユースを4−1と粉砕したメキシコも、3バックのうち二人が186センチを越える長身選手だった。いずれの国のセンターバックも、身体的な強さと高さを兼備していた。

 ただ、目を引いたのはディフェンスだけではない。フランスとメキシコのセンターバックは、攻撃的な資質も備えていた。中長距離のサイドチェンジやフィードをしっかりと通すだけでなく、インターセプトからの攻撃参加や流れのなかでの前線への飛び出しなども見せていたのである。しかもそれが、無謀なものではなく、チームが必要としているタイミングでのプレーだった。プラスアルファとしての攻撃力を、世界のトップクラスの国のセンターバックは装備しているのだ。

 ひるがえって日本はどうだったか。

 フランスの1トップが強力だったのは間違いない(ベルジェロ監督は、この世代では4番手か5番手の選手と話していたが)。それにしても、攻撃力には物足りなさが残った。フランス戦に限っていえば、自分のパスから攻撃がスタートするという意識を読み取るのは、ちょっと難しかったと言わざるを得ない。

 しかしながら、U−18代表の選手を責めるわけにいかないのも事実である。センターバックの展開力やフィードの精度は、それが重要であるとの認識こそあるものの、「強さ」や「高さ」と同じくらいには重視されていないのが日本の現状だからだ。オフトジャパン以降を振り返っても、フィードを特徴としていたといえるのは、フィリップ・トルシエが重用した森岡隆三くらいだろう。

 Jリーグでプレーする日本人センターバックに、精度の高いフィードを求めていく。日本代表の常連であれば、さらに高いレベルを要求する。流れのなかでの攻撃参加もクローズアップされるべきだ。5月のチリ戦で中澤佑二が見せたオーバーラップなどは、いまさらながらもっと評価されるべきだと思う。

 成長過程のU−18世代にとって、Jリーグや日本代表はもっとも身近な教材である。次代のタレントは日本サッカーの現状を映す鏡であり、そこでの課題は日本サッカー全体のものとして受け止めるべきだと思うのだ。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖