ジョゼ・モウリーニョとカルロ・アンチェロッティの舌戦が止まらない。鳴り物入りでやってきたインテル新監督と、8季目を迎えるミラン監督が互いを牽制し合っている。

 口火を切ったのはアンチェロッティだった。成績不振による自身のミラン監督職解任の可能性が取沙汰され、当時フリーだったモウリーニョがその後釜に座るのではないか、と噂されていた昨季終盤、春先のことだった。当然イライラのたまっていたアンチェロッティは、ある日の記者会見でモウリーニョについて聞かれた際、チクリとこう言った。

 「彼は(トップレベルの)サッカー選手としてプレーしたことはないだろう」

 プレミアリーグで、あのサー・ファーガソンやベンゲル相手に丁々発止のやり取りをしてきたモウリーニョが黙っているはずがない。反撃の機会をじっとうかがっていたセリエA史上初のポルトガル人監督は、昨日16日、“イタリア語”でこう切り返した。

 「アンチェロッティ監督は、(もともと靴のセールスマンだった)アリーゴ・サッキ氏が、私よりサッカーが上手くなかったことを忘れているようだ。たしか、サッキ氏はミランの歴史において最も偉大な監督の一人のはずだが」

 それを伝え聞いたアンチェロッティは、即座に反応した。

 「(前発言内容は)明らかに冗談だ、とわかりそうなもんだがな。たぶん、私の言い方が悪かったのだろう」

 ニヤリと偽悪的に笑いながら、こう付け加えた。

 「I don’t speak English very well.」

 通訳あがりのモウリーニョを挑発すべく、わざと“英語”で言い返したのだ。“切れ者”のイメージが強いのはモウリーニョの方だが、アンチェロッティも曲者ぶりを見せた。

 スパイスがきいてかつウィットに富む、監督同士のこうしたやり取りは、イタリアではなかなかお目にかかれなかった。今シーズンのセリエAに、新しい楽しみがまた一つ増えた。