ハリル通訳・涙の樋渡群氏を「笑い者」に 「失礼極まりない」の声
サッカー日本代表監督を解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏の通訳をつとめてきた樋渡群(ひわたし・ぐん)氏について、バラエティ番組「バイキング」(フジテレビ系)で「自分の戦術も選手に言っちゃってるんでしょ、バレないと思って」などと面白おかしく取り上げられた。
樋渡氏のエピソードが取り上げられると、スタジオでは出演者陣が「腹立つわあ」などと、手を叩いて笑い合う場面もあった。サッカーファンと思われるインターネットユーザーからは「茶化して笑うもんじゃあない」と疑問に思う投稿が見られる。
「いきなり日本代表の監督になっちゃった!みたいな」
樋渡氏が世間に注目されたのは、解任されたハリルホジッチ氏が来日した2018年4月21日、羽田空港で取材に応じた時。ハリルホジッチ氏が今の心境を述べ、それを通訳しようとした樋渡氏は「日本に来るのは、いつも、喜びを持っていますけど...」と述べたところで、声をふるわせ、涙を手で拭った。10数秒言葉を発せず、ハリルホジッチ氏も目元を隠すようにサングラスをかけ、天を仰いだ。
25日放送の「バイキング」ではこの場面を取り上げ、現場にいた夕刊フジ記者の久保武司氏は「え?ここで泣いちゃうの?と、笑いをこらえると言ったら失礼ですけど、なんで泣くのかなとあっけにとられて」と、理解できなかった様子だ。また、樋渡氏を「解任のキーマンの一人」だとし、「ハリルさんと常に同じ目線、同じ言い方で熱く話していたので、ハリルさんに説教を受ける代表選手は2倍受けていたイメージ」とも述べている。
これにMCの坂上忍さんが「ハリルさんが選手に『お前何やってんだ! もっと走れよ! 休んでんじゃねえよ!』って言ったら、樋渡さんも同じテンションで『お前よお! 休んでんじゃねえよお!』って...これダブルでムカつくわ!」と笑って話すと、久保氏は「そういうテンション」と頷いた。
スキンヘッドが印象的な樋渡氏は、監督としてフランスの名門パリ・サンジェルマンのU-12(12歳以下)チームを率いた経歴を持つ。同時期にハリルホジッチ氏がトップチームの監督だったこともある。
坂上さんは「監督やってたから、今回は通訳として入ったけど、いきなり日本代表の監督になっちゃった!みたいな」などと言うと、スタジオのお笑いコンビ「おぎやはぎ」小木博明さんは、「確かに、ホントその気持ちになって、自分の戦術も選手に言っちゃってるんでしょうね、バレないと思って。言ってそうな気がする。絶対言ってる」と茶化した。スタジオは笑いが起きた。坂上さんも「ハリルがこうだって言ってても、『いやいや違うよ、そっちじゃないよ!』って。面白いそれ!」と乗っかった。また、男性アナウンサーが一度名前を「ひわたり」と読み間違えたが、誰も指摘しなかった。
「なぜ笑う」
番組では、樋渡氏にまつわるエピソードも紹介された。「試合中にハリルホジッチ監督より先に審判に抗議した」「練習中にハリルホジッチ監督と同じように熱く選手を指導した」。スタジオでは手を叩いて笑いが起き、小木さんは「腹立つわ〜」、坂上さんは「面白い! この人面白いね!」と一言入れた。
いつの間にか樋渡氏を笑い者にする空気となった中で、反論するようにホラン千秋さんは「過去にも、監督が怒って審判に詰め寄って退場になることもありましたから、それを止めるために、だったら自分がと...」と心理を推測しようとしたが、坂上さんが「それはないよ」と割って入り、「監督がいなくなったら俺(樋渡氏)が監督やればいいんだから!」と笑った。
ホランさんは「受け手(選手)はイラッとするかもしれないけど、選手に寄り過ぎると監督のストレスがたまるし、間に挟まれてすごく大変だったと思いますよ」と別の点からも理解を示したが、坂上さんは「だからこそバランス取る役目があったと思う」と受け付けなかった。
久保氏は「私もしょっちゅうハリルさんに説教を受けてきましたけど、2倍ふりかかってきましたから。『お前はどういう取材をしているんだ?』とか」と体験談を話した。「(樋渡氏から通訳で)『お前は』とは言われなかったですけど、『お前は』の勢いで来ました」と恨み節だ。「『監督はああいうけど、本当は気の優しい監督だから』という通訳の方もこれまでにいましたから」とダメ出しすると、小木さんは「そういう一言ほしいですよね」と頷いた。
さらに久保氏が樋渡氏を「サッカーの指導力に関しては、日本サッカー協会でもトップクラスの人材」と評すると、坂上さんは思った通りだと言うように「う〜わ〜そうかやっぱり自分の戦術入れたくなっちゃうんだね!」とツッコんだ。出演者らも「絶対ね、完全にね」「自分のほうがすごいと思ってるんだ」などと同調した。
このような番組のやり取りに、ツイッター上では「なぜ笑う」「実に腹立たしい」「これは酷い。酷すぎる」「一生懸命頑張った人を、茶化して笑うもんじゃあないよ」「失礼極まりないです。これを見た瞬間、正直がっかりしました」と疑問の声が続々とあがった。
樋渡氏の教え子という早稲田大学ア式蹴球部の中山尚英さんは、「群さんには小、中学時にサッカーを教わり、僕が怪我した時は1冊の本をいただき、励まして下さった。情熱に溢れ、人との関わりを大事にされており、僕の尊敬する方の一人。一般的な立場から見ても、日本サッカー界に大きな貢献をした彼に対して、どこにバカにできる要素があるのか、わからない」とツイッターに投稿していた。