コーヒーがは肥満予防に?(depositphotos.com)

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 糖尿病や多発性硬化症、あるいはパーキンス病から一部のがんに至るまで、日常的なコーヒー摂取の効用に関しては、多くの疾患発症リスクを低減させる可能性が示唆されてきた。

 しかし、それらのコーヒー効果は良しとしても、従来の研究方法自体にやや問題はなかろうか――。そんな疑義を申し立てる論文が「Journal of Interna Medicine」3月15日オンラインに掲載された。

 その論文が指摘するには、過去の研究例は「その多くが参加者自身の自己申告に基づくコーヒーの摂取量から、疾患リスクとの関連を見ているに過ぎないだろう」というものだ。

 それではやはり不十分、今回の自分たちの研究では「これらの関連性のメカニズム解明にまで踏み込んだ」と述べているのは、この論文の指導者で米国ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部予防医学助教授のMarilyn Cornelis氏だ。

コーヒーが脳内マリファナの作用を左右

 彼らの小規模研究(臨床試験)の手順は、コーヒーを飲む習慣を持つフィンランドの成人男女47人の協力を仰いで実施された。まずは参加者全員に日頃の習慣を我慢をしてもらい、1カ月間の「コーヒー断ち」を敢行してもらった。

 次の1カ月間は各自均等に「1日4杯」のコーヒーを摂取してもらい、さらに次の1カ月間は「1日8杯」のノルマ達成をしてもらった。そして3カ月の試験期間は毎月、血液検査を行ない、メタボローム化学分析法によって733種に及ぶ「代謝物質」の血中濃度を観察した。

 かなり興味深い結果が得られた。コーヒーを1日当たり4〜8杯飲んでいると、115種の代謝物質の血中濃度が優位に変化した。こうした変化の大半は研究陣の「想定内」ではあったものの、一部には彼らの「想定外」の変化も読み取れた。

 一例が、内因性カンナビノイド作用に関する低下傾向だ。「カンナビノイド(Cannabinoid)」はアサ(大麻草)に含まれる化学物質の総称だが、その内因性作用はヒトの食欲やエネルギーの産出/消費、基本的な身体機能である血圧や睡眠などのコントロールに重要な役割を担っている。

 今回の研究では、この脳内マリファナに類似した物質として知られる内因性カンナビノイド作用に関連する代謝産物の血中濃度を低下させるというコーヒーの摂取効果が判明したわけだ。

 また、コーヒーを愛飲していると「性ホルモン」などのステロイドホルモンや、脂肪酸代謝に関連する代謝産物の血中濃度にも変化をもたらす傾向が読み取れたと書かれている。

コーヒーは肥満予防の可能性を秘めている?

 この小規模研究の発見は、ダイエット志向派にとっての朗報要素を含んでいる。コーヒーの摂取が「体重管理」に好影響を及ぼすこと自体は、雄来の研究報告でも示唆されていた。Cornelis氏らはさらに踏み込んで、将来性をこう述べている。

 「コーヒーの摂取は内因性カンビノイド作用の活性を抑えるように働く。そのため、いわゆる脳内マリファナによる食欲増進とは反対の働きを示すわけだ。つまりコーヒー摂取による肥満予防効果においては、この作用の役割が大きな可能性を秘めているだろう」

 一方、今回判明した代謝産物の血中濃度の変化が「何を意味するかは現時点で分かっていない」と研究陣は明かしている。

 それでも今後、コーヒー摂取と内因性カンナビノイドが関連するメカニズムの解明が深まれば、「コーヒーを好む人々の場合、なぜ一部の疾患リスクが低い傾向にあるのか、その理由が説明できるようになるだろう」と成果の意義を強調している。

成人のカフェイン摂取量は「1日400mgまで」が安全域

 もっとも、従来の自己申告制研究に異論を唱えたCornelis氏らの方法(0杯→4杯→8杯)自体に、横槍をはさむ見解もある。

 「米国栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)」の広報担当、Angela Lemond氏は、3カ月研究の杯数設定を「小規模」と指摘し、一般的なコーヒー摂取習慣の普遍性を必ずしも反映していない点に疑義を唱える。

 さらに米国内における成人のカフェイン摂取量は、食事に関するガイドライン上で「1日当たり400mgまで」が安全域とされており、1日8杯(800mg相当)も摂取すればカフェイン含有量の上限をはるかに超えてしまう。

 そうなれば睡眠や精神面の悪影響が懸念される点は、なにも今回の研究結果を待つまでもなく、一般常識の範囲だろう。推奨量は1日当たり3〜5杯説もあれば、55歳未満が毎日4杯以上のコーヒーを飲めば、飲まない人に比べ「死亡率が高い」と示唆する米国サウスカロライナ大学の疫学調査結果もある。

 もちろん、Cornelis氏らが導き出した成果は、その規模にかかわらず、斯界の将来にとっては有意義だろう。願わくば彼ら研究陣には労いの美味なコーヒーを堪能してもらい、さらなる精進を期待したい。
(文=編集部)