奨学金返済 苦しむ人々に導入される“新たな救済策”とは
来年度から始まる給付型奨学金が話題だが、貸与型では、その返済に苦しむ人がまだ多いのが現状。そこで今回、新たに始まる予定の救済策を経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた。
【1】'17年度生向け所得連動型
これまでも、奨学金を借りた本人の年収が300万円以下の場合、申請すると返済額をゼロに猶予してもらえる仕組み自体はあった。だが、返済方法は毎月決められた一定額を返す『定額返済』しかなかった。
たとえば、月5万4,000円の無利子奨学金を4年間借りるAさんのケースで見てみると、返済総額は259万2,000円となり、従来の定額返済では15年間、月々1万4,400円を返済することになる。
「Aさんが所得連動型を選んだとします。年収が200万円だと各種控除後の所得は約62万円です。1年間の返済額は所得の9%ですから、約5万5,800円。月に換算すると約4,650円と、定額返済よりかなり楽な返済額です。ただし、Aさんが年収300万円に昇給すると、月々の返済額は約8,900円、さらに年収が500万円になると、月々の返済額は約1万8,500円になります。この場合、定額返済の月1万4,400円を超えますが、途中で定額返済に変更することはできません。逆に、Aさんの年収が100万円に下がって、各種控除後の所得がゼロになった場合、月2,000円は返済しなければなりませんが、申請すればもちろん、年収300万円以下の猶予制度は利用できます」
【2】既卒者向け減額制度
すでに卒業している人は「所得連動型」が選べないため、文部科学省は来年度から、従来の返済額減額制度を拡充する予定だ。
「現在の減額制度は、最長10年間、返済額を2分の1に引き下げるものでした。来年度からは、最長15年間、返済額を3分の1か、2分の1に引き下げることができます。減額制度は、年収325万円以下なら、有利子奨学金でも無利子奨学金でも利用できます。有利子の場合、期間が延びると利子がかさみ返済総額は増えるものですが、増えた分の利子は国が負担し、本人の返済総額は変わりません」
しかし、これらの制度は返済の免除ではない。本人が亡くなるか、障害などで返済ができないと認められるまで、返済は続く。荻原さんは奨学金について、こう語る。
「奨学金とはいえ、貸与型は“教育ローン”と認識しましょう。借金と考えると、日本学生支援機構の利率は、昨年3月の卒業生で0.16%(基本月額にかかる利率固定方式)。『国の教育ローン』の1.81%と比べても相当低いです」