by ND Strupler

映画「マイティ・ソー」では原作でナースだった女性キャラクターが物理学者へと変更された点が物語のステレオタイプを破壊したとして高く評価されました。「男の子は女の子よりも賢い」「女性は数学や科学に向かない」というステレオタイプはどのように生まれ、そして実際のところ真実なのか?ということが、ムービーで分かりやすく解説されています。

Are Boys Smarter Than Girls? - YouTube

「男の子は女の子よりも賢い」という考え方は長年のステレオタイプとなってきました。人々がこのようなステレオタイプを持つようになった原因の1つが、「男性の脳は女性の脳よりも8〜13%大きい」という研究結果です。



しかし、この違いは体の大きさによるもの。女性の脳はその分シワが多いので、皮質の表面積は大きくなります。



また、必ずしも大きい方が知性が高い、というわけではありません。例えばクジラ・ゾウ・イルカの脳は人間よりも大きいのですが、認知能力は人間の方が高いと言われています。



そして男女の脳の構造的な違いの1つとして言われるのが「男性の脳は半球内のつながりが強いのに対して、女性は左右の半球間のつながりが強い」ということ。



しかし、MRIで1400人の男女の脳をスキャンしたところ、いわゆる「男女の脳の違い」というものは発見されませんでした。男女を問わず、人々の脳には「女性的」と言われる脳の特徴や「男性的」と言われる特徴が両方あり、それらが「モザイク」を描いているとのこと。



また、「ゲームは男性的」「スクラップブックは女性的」といったステレオタイプについての研究が行われたところ、実際にステレオタイプとされる物事を男性あるいは女性だけが行っているという割合はわずか0.1%だったとのこと。



IQの研究でも、一般的知能についての男女の差はほとんどないか、全くないかという結果が示されています。一方で、女性は言語的能力が、男性は視覚・空間の認知能力が優れているという調査結果も発表されています。



なお、ある研究では「男性のIQは女性に比べて3.3〜5.5ポイント高い」という結果が示されましたが、この研究は「調査方法に欠陥がある」として疑問視されています。



世界の70%の国において、女性は国語・数学・科学の成績が優れていると報告されていますが、一方でアメリカの大学進学適性試験では男性の科学の成績は女性よりも33点高いという結果が出ています。



そのほか、多くの国において男性と女性のテスト結果に差はありませんが、アイスランドでは女性の方が成績がいいとのこと。これは生物学的な理由ではなく、文化的・環境的な原因が大きいと見られています。



一方で、ステレオタイプが女性のパフォーマンスに影響を与えていることもわかっています。



例えば、「数学の能力には性差がある」と伝えられると、女性のテストの結果は低くなり……



反対に「性差はない」と伝えられるとテストのスコアは男女で等しくなるのです。この現象は「ステレオタイプの脅威」と呼ばれています。



Googleの検索でも「私の息子は天才では?」という検索ワードは「私の娘は天才では?」というワードの2倍検索されています。実際にアメリカでギフテッド教育を受けている子どもは女の子の方が男の子よりも11%多いにもかかわらずです。



このような性差によるバイアスは6歳ごろを境に受け始めると見られています。というのも、研究で、「ものすごく賢い子ども」の話を聞いた5歳児は自分の性と同じ性別の子どもを想像しますが……



6歳になると男の子も女の子も賢い子どもは「男の子である」と考えだすのです。



また「賢い子ども向けのゲームをプレイしてほしい」と子どもに言うと、5歳児は男子・女子ともにゲームをプレイしたがりますが……



6歳の女の子は「ゲームは自分向けではない」と考えます。



実際の研究の現場でも性差によるバイアスは存在します。科学系の研究所のマネージャーを募集する際、応募者の願書に女性と男性の名前をランダムに割り当てたところ、男性の名前の方が「有能」で「教育に値する」「雇うべき」という評価を得やすいことが判明。また、年収においても、男性に提示される平均額が3万ドル(約340万円)であるのに対し、女性は2万6000ドル(約290万円)であることがわかっています。



女性が科学の道に進むには障害が多くありますが、それでもこの数十年で多くの女性研究者たちが科学に貢献してきました。ロザリンド・フランクリンはDNAの構造解明に、キャサリン・ジョンソンはNASAのスペースプログラムに貢献し、マリアム・ミルザハニは2014年に女性として初めて数学のノーベル賞とも言われるフィールズ賞を受賞しました。



なお、数学者のイザベラ・ラバは「ミルザハニが選ばれたことで、『数学の研究分野において女性の能力は男性と同じレベルなのだ』と私が納得させられることはありません。私は一度もそのことに疑いを持ったことがないからです。その代わりに私がミルザハニの受賞から受け取ったのは、私たちの社会が女性の数学に対する才能を支援し、育成するためのよりよい場所になってきたということ。そして女性の行った仕事のすばらしさを認識できるようになってきたということです」と語っています。