ハリルジャパンではここまで脇役に甘んじている印象の武藤。主役へ躍り出る足掛かりをシンガポール戦で掴めるか。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 6月16日のシンガポール戦は、自身初のワールドカップ予選の舞台にして、ドイツに旅立つ前の代表ラストゲームだ。
 
「緊張は特にないです。試合に出場できれば、ゴールを決めて勝利に貢献したい。自分らしさを出したいです」
 
 自分らしさにこだわるのは、今年1月のアジアカップで「戦術に縛られ過ぎて持ち味を出せなかった」からだろう。
 
 A代表の一員として初めて挑んだ国際トーナメントでは強気なドリブルが影を潜め、らしくないプレーを連発。大会中にクローズアップされたのは、グループリーグ第3戦のヨルダン戦で香川のゴールをアシストした働き程度だった。
 
 今年3月にハリルホジッチ政権が発足しても、ここまで結果らしい結果は残せていない。今季のJリーグでは、裏に抜け出すスピードと鋭いドリブルを主武器に10ゴール。川崎の大久保、鳥栖の豊田、G大阪の宇佐美とともに得点ランクのトップを走っているが、代表戦では昨年9月のエクアドル戦を最後に“当たり”がないのだ。
 
 どこかパッとしない代表での現状を打破したい気持ちは、当然ながらある。
 
「(ハリルホジッチ監督からアドバイスされて)新たな発見もあります。客観的にそう見えるなら、改善していきたい。指導者からの意見は柔軟に取り入れるほうなので。
 
(代表での得点については)自分次第なところもある。代表で2点目さえ取れれば、気持ちも乗ると思う。戦術のことは頭にありますが、それ以上に自分らしさを出さないとこの競争に生き残れない」
 
 ポジションを争うライバル・宇佐美については「しっかりと結果を出している」とその実力を認めたうえで、「負けないように頑張りたい」と宣戦布告とも取れるコメントを発している。
 
 「ゴールへのイメージはある。あとはどう決めるか」

 そう話す武藤にとって、果たしてシンガポール戦は脇役から主役へと躍り出るための、ターニングポイントになるだろうか。
 
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)