健大高崎vs花巻東vs東京学館新潟
まずまずの投球を見せた川井智也君（健大高崎）
高校野球は今月いっぱいで来年3月対外試合ができない期間となる。11月も後半になって、今年最後の三連休である。この時期に、最後の遠征試合を組んでいる学校も少なくない。ことに、寒冷地といわれている東北や北陸などのチームは、11月になると霜が張ったり霙なども多くて、一度ぬかるんだグラウンドはなかなか回復しないという。実質グラウンドでの練習がやりにくくなるという地域も多い。
岩手県の花巻東、新潟県の東京学館新潟もそんな事情もあり、この三連休、関東遠征を組んでいた。花巻東は22日（土）には東農大二、23日（日）には上武大グラウンドを借りて佐久長聖と、群馬県に拠点を置いて動いていた。東京学館新潟は本庄に拠点を置いて、22日（土）が本庄東、23日（日）が正智深谷と組んでいたという。そしてこの日、高崎市大類にある健大高崎に集合した。
先の秋季県大会を優勝して、関東地区大会でもベスト4に進出した（試合レポート）健大高崎である。その実績は過去の例から見ても、ほぼ来春のセンバツ大会の甲子園出場が内定しているといってもいいものである。
東北地区大会に出場した花巻東は、1回戦、2回戦（試合レポート）といずれも延長15回引き分け再試合を経験するという珍しい記録を残している。「（決勝まで戦っても余りある）5試合分以上やっていました」と、佐々木洋監督は苦笑していたが、投手陣はさすがにその疲れもあって、その後はゆっくりと調整ということになったようだ。
ダイナミックな投球フォームの花巻東・加藤君
花巻東は1年生投手で左腕の平澤君への期待をこめて健大高崎戦に先発させた。左腕独特の大きなカーブが持ち味で、これがきちんと決まるとなかなか打てないだろうと思わせたが、2回に宮本君、皆川君と連打され、知念君の左中間二塁打やスクイズなど下位打線につかまり3点を失った。それでも、以降はしっかりと投げて7回四球で乱れて降板となったものの、佐々木監督を満足させていたようだ。
また、第2試合の後半に投げた左腕の加藤君も期待の投手で、ダイナミックなフォームで投げ込んでくるが、腕のしなりや飛び跳ねるようなフィニッシュは、09年に春夏の甲子園で話題をさらって人気者となった菊池 雄星（西武）を思わせるものがあった。佐々木監督は、「変化球が甘いので、そこを打たれてしまいます。ストレートも、もう少し低く集めていってほしい」と、注文を出しているが、一冬超えて成長した姿が楽しみである。元々、投手づくりには定評のある花巻東である。来年、再来年への期待も高まりそうだ。
健大高崎はエースナンバーをつけた川井 智也君が5回8三振を奪う好投で1失点したもののまずまずの内容。2番手として青�亡篤弔�期待している橋詰君も右下手投げに横手、スリークォーターと変幻自在な投げ方で相手を幻惑するトリッキーなタイプだ。
秋季大会の実績からも、来春のセンバツも見据えているのだろうが、「ある程度試合で使える目途がついてきたのは大きい」と、しながらもさらなる成長を期待している。
この日は、主砲の柴引 良介君は故障もあって、大事をとって出場しなかったが、持ち味の“機動破壊”は、走者が出るとさまざまなことを仕掛けながら、いろいろ試していた。試合前にも、葛原毅コーチの指導の下、離塁の距離の確認をするなど、その精度と爆発力をさらに磨いていくべく取り組んでいた。
東京学館新潟・渡辺尚君
東京学館新潟戦では、一死一三塁で一塁走者が出ていって刺されて、その隙をついて走った三塁走者も本塁憤死となったが、「それぞれのタイミングが、悪かったと思います。三塁走者が、どのタイミングで出ていくのか、それをつかんでほしい」と、失敗しながらも学習していくことで、身に着けていこうという練習試合でもある。5回に四死球を出して苦しくなった山田君を捉えて、高橋翔君、大島君の長打攻勢で一気に粉砕したのは、さすがだった。
そして、この試合は5人の継投で東京学館新潟を完封して層の厚さも示した。
甲子園出場実績のある強豪校に連敗となってしまった東京学館新潟。長谷和昭監督は、結果として自滅気味になった投手に対して、「どうして試合をぶち壊すことになったのか…、自分の中に自分しか棲んでいないからだ。野手は、何のためにいつも練習しているんだ、何のために声かけてくれているんだ。自分のことしか考えていないから、毎回崩れ方が同じだろう」と、結果的には四死球で走者をためて打たれてしまうというパターンで自滅していったことに対して反省を促していた。
健大高崎5安打、東京学館新潟6安打と安打数では上回りながら、スコアとしては逆に7対0。
健大高崎には4本の二塁打があったとはいえ、この差は何なのだろうか。甲子園常連校となりつつある学校相手に、敗れながらも東京学館新潟としては学ぶことも多かったのではないだろうか。
東京学館新潟ではこの日は、今枝君が2試合で4安打と気を吐き、花巻東戦では渡辺尚君の二塁打で挙げた、唯一の得点にも絡んでいた。
(文=手束 仁)
