東京都高校野球選抜vs日本大学1、2年生
先発で好投を見せる勝俣翔貴（東海大菅生）。打者としても豪快な本塁打を放った
今年、東京都高野連は12月21日から29日までミャンマー・シンガポールで東南アジアの途上国支援として親善試合を行う。その壮行試合として23日、日本大学野球部の1、2年生と試合を行った。
条件としては東京都選抜はこれまで通り、金属バットで試合を行った。
先発のマウンドに登ったのは勝俣 翔貴（東海大菅生）。立ち上がりは荒れ球が多く、先頭打者を四球で出塁を許すと、その後も牽制悪送球で、一死三塁のピンチを迎えると、3番宋 �袈僉�1年・明徳義塾）の内野ゴロの間に1点の先制を許す。
しかし自分のバットで取り返した。2回裏、無死一塁で日大の先発・大高 光（2年・日大鶴ヶ丘）の甘く入ったチェンジアップを逃さず、ライトスタンド後方にある校舎近くまで飛ぶ大ホームランで逆転に成功する。物凄い速度で飛んで行った当たりに「秋の公式戦では一番の手応えでした」と本人も満足そうだった。その後も、一死満塁から1番伊藤 雅人（関東一）の内野ゴロの間に1点を追加し、3対1とリードする。
勝俣は130キロ後半の速球、キレのあるスライダーをとにかく押す投球で、3回1失点の好投で、マウンドを降りた。また勝俣は特別ルールで、指名打者として出場を続ける。
明治神宮大会の本塁打に続き、ここにきて狙い球を逃さない鋭さを身に付けている。本人も「打撃の方が好き」と語るように、変化球を捉える巧さがあるので、打者としての素材といえるだろう。
4回表から登板した大浜 永遠（日大豊山）が、125キロ前後の速球、100キロ台のカーブを織り交ぜ、無失点。勝俣と違い、遅い球を駆使する投手で、日大打線が打ち損じ、この日登板した東京都選抜の投手では唯一の無失点だった。
6回表からマウンドに登ったのは、國學院久我山の植田 雄大だ。右スリークォーターから投げ込む直球は常時135キロ〜138キロを計測。ストレートの質は良く、最初の打者を見逃し三振に奪ったストレートは見事だった。上半身の使い方を見ると右ひじが綺麗に回旋を行って、しっかりと肘が上がって打者寄りでリリースすることができている。ただ左肩の開きが若干早く、ボールに対してあまり角度を感じないないのか、打者からすれば苦にする球質ではなかったようだ。
6回表に一死一、三塁から5番・松山 大志（1年・習志野）二塁内野安打で1点を失い、7回表にも二死二塁から1番東海林 寛大（1年・札幌日大）に中前安打を浴びて、1点を失いそうになったが、センターの大久保 建汰（駒場学園）の好返球で同点を阻止。140キロ近い速球を投げ込む能力を持った投手だが、勝てる投手になるためには、いろいろ身に付けなければならない課題を感じた2イニングだったかもしれない。
勝俣の逆転本塁打で沸く東京都選抜ナインそして8回表にマウンドに登ったのは田村 孝之介（日大三）だ。2年夏までライトとしてプレーしていた選手で、この秋からエースとなった。だが秋の本大会でコールド負けを味わった。本大会が終わって1か月半、田村は周囲を驚かすスピードボールを投げこむ。常時140キロ〜146キロを計測し、この時期に常時140キロ中盤を投げ込む高校生右腕はそうはいない。東京都で最も速い投手だろう。174センチ75キロということだが、手足が長いので、それ以上に大きく見える投手。
投球フォームは右スリークォーターから腕を外旋気味に強く腕を振る。下半身の使い方が良く、踏み込んだ足を真っ直ぐ踏み出し、股関節を綺麗に回旋させた投げ方ができているので、140キロ台の速球を投げ込むことができているのだろう。一死から2本の安打とパスボールで、一死一、三塁のピンチを招いて、代打・小保根 誠（2年・履正社）の野選で同点を許すが、その後のピンチをしのぐ。そして9回表は2三振を奪い、計2イニングで4奪三振。手元でも失速しないストレートの威力は本物で、視察していたスカウトに良いアピールになったはずだ。
そしてその裏、1点取ればサヨナラの場面。打席には本塁打を放った勝俣が打席に入る。この打席は本塁打を狙っていた勝俣だったが、力んでしまい、中飛。だが6番中道 大波（帝京）が右中間を破る二塁打を放ち、一死二塁のチャンスを作る。ボールを手元まで引きつけて、右中間を深々と破る豪快な二塁打だった。185センチ85キロの恵まれた体格を誇る強打の右の外野手として存在感を示した。しかしあと1本が出ず、3対3の引き分けに終わった。
試合後、この選抜チームを率いる二松学舎大附の市原勝人監督は「本当に楽しかったですよ。強豪校の選手たちは普段からかなりのプレッシャーをかけられてプレーをしていると思いますから、そういう意味で、かなり楽しくプレーできたと思います。2回裏に3点を取ったことで、みんなが大学生に勝てる！と一致団結をして、後半は本当に良い雰囲気になっていたと思います」と試合を振り返った。
18人が一緒に対外試合行うのはこの試合が初めて。試合中の様子を見ると、多くの選手が笑顔を見せながらプレーしているのを見ると、距離は近づいたのではないだろうか。市原監督も新入生を迎えるような気持ちで選手に接している。「新入生に対してはいろいろ声をかけながら、緊張をほぐしているのですが、まさにそんな感じで接していますし、彼らと接するのは楽しいです」と初めての代表監督も、楽しくやれているようだ。 都大会と違って、終始、和やかなムードで試合を進めていった東京都選抜。市原監督が「こういう雰囲気から選手たちが何かを掴んでくれればよいですね」とおっしゃるように、これまで甲子園を競って戦っていた選手たち同士が交流することはめったにないこと。そういう機会を逃さず、ぜひ選手たちはレベルアップにつなげていってほしい。
(文=河嶋 宗一)
