仙台育英vs天理
12奪三振・完投勝利を挙げた佐藤世那（仙台育英）
近畿大会優勝の天理と東北大会優勝の仙台育英。ともに全国区の強豪同士で、仙台育英は東北大会4試合で39得点を挙げれば、天理は近畿大会4試合で27得点（いずれもコールドゲームを含む）を挙げるという強打のチーム。点を取り合う接戦が予想されたが、仙台育英の佐々木順一朗が「意外な展開だった」と言うほど、仙台育英の佐藤 世那投手の好投が光った一戦だった。
仙台育英の佐藤 世那は、身長180センチの右腕で、腕を大きく降る豪快なフォーム。腕の振りがいいからこそ、直球は143キロを記録し、フォークボールもよく落ちた。天理の橋本武徳監督は試合後、「球に威力があったし、落ちるボールも良くて、的を絞り切れなかった」と語った。
一方、天理の先発は身長166センチの左腕、齋藤 佑羽。自身のフォームを、「スリークォーターより低いけど、サイドスローではない」という、やや変則的な投げ方だ。
齋藤は、1、2回は直球にチェンジアップを織り交ぜる緩急をつけた投球で、走者を出しながらも得点を許さなかった。しかし打順が一巡すると、仙台育英打線につかまった。
3回裏、仙台育英は簡単に二死となったが、そこから2番の青木玲磨がセンターオーバーの二塁打。3番平沢 大河は四球で一、二塁。ここで4番の郡司 裕也はフルカウントからやや甘く入ったボールを叩き、左中間を破る二塁打。2人が還って、仙台育英が2点を先取した。
仙台育英の佐々木監督は郡司について、「勝負強い。大きいのを打つ子ではないけれども、右に左に打って、つなぎに徹する4番です」と語っている。一方天理の投手・齋藤は、「コースがボール1個甘かった」と悔やんだ。
天理先発の齋藤佑羽
もっとも、天理もすぐに反撃に出る。4回表、先頭の185センチの90キロの大型4番の坂口 漠弥が内野安打で出塁したものの、併殺打で二死。チャンスはついえたかに思われたが、6番川崎 浩大が四球で出ると、続く前久保 智也が右中間を破る二塁打で川崎が還り、1点差にした。
さらに5回、表天理は一死後、1番の舩曳 海が遊撃手の失策で出塁。投手ながら俊足で打順は2番の齋藤は、一塁にボテボテの当たり。一塁手が処理を誤り出塁（記録は内野安打）。流れが天理に行きかけたが、3番貞光 広登、4番坂口が倒れて、チャンスを生かせなかった。
ここから、仙台育英の佐藤世の投球がさえわたる。6回からの4イニングは、7回の三者連続を含め、奪三振8の快投。天理打線を完全に封じ込めた。
仙台育英の攻撃の方は、6回に紀伊海秀の中前適時打で1点を追加。7回には5者連続安打で3点を追加した。結局6対1で仙台育英が大勝した。
天理には橋本 晃樹という注目の投手がいるが、負傷で出場できなかった。それでも先発の齋藤、2番手の森浦 大輔らを中心に近畿大会を勝ち抜いた。
しかし齋藤が「相手を意識し過ぎた」と語っているように、全国の壁を感じる結果になった。ただそれは、「しっかり自覚をもって、走り込んでいきたい」と語っているように、今後の糧となるはずだ。
仙台育英は、つなぐ打線に好投手の佐藤世、それに注目の遊撃手・平沢を中心に守りもしっかりしており、チームとしての質の高さを感じさせた。
(文=大島 裕史)
