「肉そば ごん」の『肉そば850円』。山盛りの牛肉はうま味を最大限に引き出し、さらにネギ油で香ばしさもプラス

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東京生まれの新たな蕎麦として人気を博し、一定の評価を得た「肉そば」。人気店ともなると、連日、昼時にはサラリーマンやOLが行列を作り、オリジナリティあふれる蕎麦に舌鼓を打っている。もはやひとつの麺ジャンルとして定着しつつあるが、近年「肉そば」フリークをもうならす、独自のアイデアをプラスした新たな流れが生まれてきている。識者による旬の「肉そば」を紹介しながら、その新たな流れに迫ってみた。

【写真を見る】肉味噌と山椒が食欲をそそる「肉そば ごん」の『シビレまぜそば850円』。小ライス付きで、残った肉辛みそと混ぜて食べると激ウマ

2002年にオープンした東京・虎ノ門の立ち食い蕎麦店が発祥といわれている「肉そば」。一般的な「せいろ」や「もり」といった日本蕎麦とは一線を画し、中太のコシが強い蕎麦に、甘辛く煮た牛肉、ネギ、ゴマ、海苔が大量にトッピングされた姿が基本形だ。つけ汁は通常のそばつゆにラー油が入ったピリ辛タイプで、大量の具材に負けないインパクトのある味に。また、生卵や天かすが自由にトッピング出来る店も多く、味わいを変化することで、見た目の印象よりもペロリと平らげることが出来る。ガツンとパンチが効き、一杯で満腹になるボリュームが嬉しいひと品だ。

完成された感のある基本形「肉そば」から、独自の進化を遂げた新しい味を生み出している店も、ここ1、2年前から増えてきている。蕎麦に関しては、粉の配合にこだわり毎日自家製麺を用意している店や、押し出し式製麺機を使い十割蕎麦で勝負する店なども。つけ汁をなくし、ぶっかけ蕎麦のように最初からつゆの入った一体感に優れる店やラーメンの油そばのようによりジャンクな方向に向かう店など多種多様。そのような進化系肉そばの注目店について、(株)グッドテーブルズ代表取締役で食のジャーナリスト、「肉そば」に関してもブームになる以前から注目、著書でも言及している“やまけん”こと山本謙治さんに聞いてみた。

「まずは今年の7月にオープンした『肉そば ごん』。“新しい肉そばを創作するのだ!”という強い意志を感じます。基本の『肉そば』は初めから蕎麦つゆの入ったタイプで、山盛りの牛肉と太くてコシのある麺のバランスに優れる一杯。精肉の卸を営むヤザワミートが手がけているだけに肉の扱いは完璧です。食感を考え最適な厚さにこだわった上質の牛バラ肉を使い、肉のうま味を引き出しつつ蕎麦の味をじゃましないよう醤油やみりんなどで軽く味をつける。『肉増し』や『肉増し増し』など追加で肉の充実度UPも可能と、より肉に特化しています。また、『シビレまぜそば』は本格的な汁なし担々麺のように肉味噌と山椒の組み合わせで、太麺の蕎麦をガンガン食べさせるパワーがすごい。蕎麦の風味や香りを味わうというより、具材のビリビリと痺れる強烈な味と香りで太麺のダイナミックな食感を愉しむ『創作肉そば』となっています」。

「次に、進化系の店の中でも特に麺に力をいれているのが、日本一の歓楽街歌舞伎町にほど近い東新宿に店を構える『なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。』。毎日自社工房で製麺している自慢の蕎麦は、粉の配合など一切のレシピは完全に企業秘密。強い火力で一気に茹でてしっかりと冷やすことで、強力なコシとなめらかな喉越しを生み出している、好きな人にはとことんハマる食感が魅力です。この店のこだわりはラー油にも表れており、数種の油をブレンドし複雑な風味と香ばしさ、まろやかな辛さが絶妙のバランスで同居。つけ汁に柔らかな鶏モモ肉ととろろの入った『とろろ鶏そば』は、とろろが入った程度で見た目にはそれほどインパクトはないが、一口食べれば厚い層になったラー油にかなりの衝撃を受けるハズ。他にも、冬場のみの「肉南蛮そば」など期間限定のオリジナル蕎麦も独創的で、新発想の「肉そば」に期待しています」。

「2002年にオープンしたとある一軒の立ち食い蕎麦店から始まった、東京“肉そば”ムーブメント。私も多くの肉そばを食べてきましたが、正直それほどおいしくない店も多かった。見かけによらずキッチリ作ろうと思うと、かなりの高コストになってしまうためです。しかし、個性を求めて真摯に味を追求している店もあり、そのような店が“進化系”として生き残ってきているのも事実。まだまだ発展する可能性を秘めた“肉そば”ジャンルを盛り上げるためにも、新しいアイデアと世界観でインパクトのある“ニュー肉そば”が出てくることを期待します」。

さらなる進化を遂げる「肉そば」の今後に、ますます目が離せない。【東京ウォーカー/記事提供=週刊ジョージア】

※記事の内容は、無料スマホマガジン「週刊ジョージア」から一部抜粋、再構成したものです