日本人はなぜラジオ体操をするのか?

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 日本人なら知らない人はいないであろう、「ラジオ体操」。
 ピアノの前奏が流れ、あの「背伸びの運動」のナレーションを聞くと、自然と体が動いてしまうという人も多いのではないでしょうか。
 運動会、夏休み、体育の授業……。ラジオ体操はあらゆるシーンで用いられ、その運動感覚は日本人の身体に刻み込まれているといっても過言ではありません。

 そんなラジオ体操ですが、実際のところ、はじまりやその意義についてはあまりよく知らないなあ…という人も多いのではないでしょうか。
 ラジオ体操の謎にとことん迫っているのが『素晴らしきラジオ体操』(高橋秀実/著、草思社/刊)です。

■ラジオ体操はいつ、どのようにして生まれたのか?
 本書によると、ラジオ体操の誕生は昭和3年のこと。逓信省の簡易保険局が米国の方法を真似て、保険思想普及(と死亡率低下)のためにはじめたといいます。昭和天皇即位の記念として、「国民保健体操」という名称で制定され、NHKの電波にのって放送が開始されました。
 その後、ラジオ体操は急速に広まっていきました。戦時下においては、ラジオ体操指導者たちがアレンジを加え、数多くのバリエーションが生まれたそうです。ラジオ体操が現在の形になったのは、戦後のこと。GHQの占領下、ラジオ体操禁止を恐れて変更が重ねられ、民主主義を盛り込みつつ、今のラジオ体操が生まれたのだそうです。

■日本人はなぜラジオ体操をするのか?
 現代でも、早朝の放送に合わせ、毎日ラジオ体操にいそしむ老人たちがいます。そのような老人たちを著者は「ラジオ体操人」と呼び、インタビューを重ねます。
 そんな「ラジオ体操人」の信念がうかがい知れるのが、本書の次のような部分です。

ラジオ体操人に何を訊いても、大抵答えは「ラジオ体操ですから」ということになる。「ラジオ体操は面白いですか」との問いには「面白いとか楽しいとかじゃない」と怒り口調になり、「では、なぜ毎日やるんですか」と問い詰めると、「ラジオ体操は毎日だからだ」と答える。問いと答えが同じになるのがラジオ体操の妙で、これをある老人は「無の境地」と言う。(『素晴らしきラジオ体操』12ページより引用)

 「ラジオ体操人」にとって、ラジオ体操は「そこに山があるから登るのだ」というような、まさに「無の境地」によって行われるものなのかもしれません。

 ラジオ体操について、知っているようで知らなかったという人も多いのではないでしょうか。
 「ラジオ体操ってやっぱりいいなあ」と思った人は、早起きして、久しぶりにラジオ体操をしてみてはいかがでしょうか?
(新刊JP編集部)