美味しいタケノコがいつでも食べられるといいですね

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冷し中華やそうめん、枝豆、焼きナス、冷やしトマトなど、夏には夏の楽しみがたくさんあるが、その一方で寂しいのは、タケノコの季節が終わってしまったこと。
しかも、いつでも気軽に手に入る水煮を買おうと思うと、手頃なものは中国産ばかりなのが現状だ。なぜ国産の商品が少ないのだろうか。
タケノコの水煮を中心とした加工食品の製造・販売会社である大分県の「クローバー食品」に聞いた。

「2007年から2008年に発生した『中国毒ギョーザ事件』を境に、それ以前の加工用タケノコの業界は、品質が良くて、価格が大幅に安い中国産にシフトされました。国産加工用タケノコはほとんど出荷されなくなり、国内の生産者は、極端に少なくなってしまったんです」

ところが、消費者の需要としては、ギョーザ事件以降、中国産タケノコが敬遠されるようになり、売れなくなったと言う。
そのため、国産を調達できなかった業者が中国産を『国産』と偽って販売する偽装事件が2008年頃に続発したそう。そして、そうした不祥事の影響で、国内の山菜加工業者のうち約30社が消えていったそうだ。
「今後は、生産者も高齢化によって、ますます少なくなると思います。また、最近の消費動向は、簡単で便利な商品へと、消費量も減ってくると思います」
タケノコ好きからみると、これは非常に寂しい傾向である。

でも、そんななか、クローバー食品では、金属検査やX線検査などを導入した厳重な検査体制を設け、トレーサビリティ(生産履歴)が確認できる体制を確立。さらに、「安全・安心・おいしい」をテーマに、商品の原材料である農産物の栽培から加工まで、一体管理する目的で、2006年に「農事組合法人JAPAN・クローバー」を設立したと言う。

背景には、当時、クローバー食品の本社がある大分県豊後高田市周辺に放置され、荒れた竹林が多く存在していたことがあった。
そうした状況下で、同社は「竹林を整備してタケノコを収穫するので、土地を貸して欲しい」と土地所有者に持ちかけたと言う。
「行政は、『放置竹林対策』として、タケノコ生産のための竹林整備に助成しました。また、生産者にとっては、荒廃した竹林を手入れして、竹の子を収穫、販売する経済的メリットがありました。そして、当社は、消費者が求める安全・安心の国産タケノコが調達できるというメリットがありました」
もちろんそれを可能にしたのは、クローバー食品独自の集荷システム・加工能力・商品開発・販売力があったわけだが、こうして行政と生産者・加工業者との三位一体の成果が、大分県北部に一気に広がっていったそうだ。
「当社では現在、直営で竹林整備を行っているほか、関わった竹林は、正式に有機圃場として、認定を受けています(現在42ヘクタール)。また、加工工程で発生する大量のタケノコの皮は、サトイモ等の自社農場に土壌改良剤として使用しているんですよ」
そうした努力・工夫によって、タケノコの原料ベースにおいて、国産タケノコの加工処理量は、2008年から徐々に増え、昨年(2013年度)は約2,000トンまで増加したそう。

国内の加工業者が多数消えていった時期を経て、今、大分県北部では着々と国産タケノコが安定供給できるルートが作られてきている。
今後、こうした動きがさらに広がり、「国産タケノコ」がいつでも安価に手に入るようになれば良いのになあ……。
(田幸和歌子)