血みどろのボコボコにされても立ち上がる、役所広司の「ダイハード」ぶりにも度肝を抜かれる。妻夫木聡もかつての後輩刑事役で登場する。

「渇き。」
6月27日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
出演 役所広司 
小松菜奈・ 妻夫木聡・清水尋也・二階堂ふみ・橋本愛/國村隼/黒沢あすか・青木崇高・オダギリジョー/中谷美紀  
監督 中島哲也  
脚本 中島哲也・門間宣裕・唯野未歩子 
原作 深町秋生『果てしなき渇き』(宝島社刊) 
企画・製作 ギャガ・リクリ
製作 プロダクション リクリ 
配給 ギャガ
(C)2014「渇き。」製作委員会

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“オーディションで小松(菜奈)さんに出会い、彼女とムードと目つき、声で『あ、この子だ』と直感しました”
(プレス資料より)

中島哲也監督の最新作「渇き。」が本日公開される。
原作は深町秋生の『果てしなき渇き』(宝島社刊)。
成績優秀で容姿端麗な女子高生・加奈子(小松菜奈)が突然失踪し、元刑事でロクデナシの父親・藤島昭和(役所広司)がその消息を追うというサスペンスだ。
この作品は、ハードな暴力描写と現在と過去が入り組む複雑な物語で映像化は不可能だと言われていた。
中島監督自身も 脚本は仕上げたものの、「こんな酷い話には誰も出てくれるわけがない。封印せざるを得ないだろうと、半ばあきらめていた」という。
ところが、ダメもとで脚本を渡した役所広司の反応は違った。
「中島監督の作品には酷い人間がたくさん出てくるが、その中でも藤島はNO.1と言っていいくらい最悪な男。こんな役柄をやらせて頂けるなんて役者冥利につきます」と出演を快諾。
トントン拍子に話が進み始める。

そして、度重なるオーディションの末、小松菜奈と出会う。
小松はファッションモデル出身で、長編映画は今回が初めて。

”演技経験は無くても、彼女にはモデルとしての実績があります。メイクされ、衣装を着せられた瞬間、求められるキャラクターになりきれる。女優とは違う技術を持っている人です。相手によっていろんな顔を見せる加奈子役にはそういう人がいいと思い、小松さんを選んだので、女優経験の有無はまったく気にしませんでした”(プレス資料より)

まっすぐに切り揃えた前髪。真っ白なブラウス。
どこからどう見ても優等生なのに、目の奥に媚態がにじむ。
ぼってりとした下唇が劣情をそそる。
完全にヤバい。
本人は何もしなくても、勝手にまわりが狂っていく。ほら、また狂った!

加奈子の高校の同級生・森下役を演じるのは橋本愛
「あのぅ、加奈子のことホントに知ってます?」と小バカにした物言いを繰り出したかと思うと、
友達を守りたくて金切り声を上げる。
“あばずれだけど、じつはピュアな女の子”を演じたら、日本一なんじゃないかと思う素晴らしさ。
ゆいちゃんのキレ芸にまた会えるなんて、おら感激だ!

中学時代の同級生・遠藤那美(二階堂ふみ)のビッチ感はさらにすさまじい。
森下が高校デビューのちょっといきがってる不良娘なら、遠藤は間違いなく13歳で済ませちゃってます系。下手したら小学生で経験済みでも不思議はないぐらいのやさぐれオーラを放つ。

小松菜奈橋本愛が18歳で、二階堂ふみが19歳。みんな10代っすよ! すごいな、こりゃ……とため息ものである。

ベテラン女優陣も負けてない。
加奈子の母親・桐子を演じた黒沢あすかは相変わらずの匂いたつような女豹オーラをふりまいているし、中学時代の担任教師・東理恵役の中谷美紀は一見マトモそうに見えて……の危うさがそそる。

この二人は中島監督の代表作「嫌われ松子の一生」(2006)では主人公とその親友として共演。中谷美紀と中島監督といえば、撮影現場での壮絶なぶつかりあいで知られる。

連日のように監督から「女優を辞めろ!」「殺してやる!」と罵られた挙句、「あんたの感情なんてどうでもいい」と言い放たれた中谷は、堪忍袋の尾がふっつり切れて、現場を離脱。「もうどうでもいいです。制作費用意しますから、もっと有能な女優さんで撮影してください」とタンカを切った……というエピソードの数々は『嫌われ松子の一年』(中谷美紀著/ぴあ)に詳しい。

そんな中島監督も、小松菜奈にはメロメロ。撮影時にも、バナナマン・日村のストラップを練習のたびにあげるなど、「もう来ない!」と言われないよう、必死だったと、舞台挨拶で明かした。とはいえ、撮影自体はすさまじくハード。父親役の役所広司に首を絞められたり、殴られるシーンでは、感極まって涙したことも。しかし、そんなときもわざわざ、監督の隣に椅子を持ってきて泣いていたという、ナチュラルボーン女子力! そのファム・ファタールぶりは一見の価値ありだ。

(島影真奈美)