田中将大が不敗の間に培ってきた貴重な財産
沈んだ気分を流してくれるのは白星だけ
また、新たに連勝街道を進むことになるのか。ヤンキースの田中将大投手(25)が再スタートを切った。5月20日のリグレー・フィールドでのカブス戦に敗れ、楽天時代の2012年8月19日の西武戦以来の敗戦投手となった。たった1度の黒星を日米メディアともに大々的に報じた。それほど田中が与えていた影響は大きかった。
5月25日。同じシカゴを本拠地に持つホワイトソックスとの一戦で、田中は先発のマウンドに上がった。マー君にとってみれば、負けも2年ぶりではあるが、負けた状態のまま、次回登板に向けた調整をすることもその時以来のことだった。
先発投手が「勝つと負けるとでは全然違う」とよく言うのは、この調整期間のメンタルに影響が出てくるからである。敗戦投手になると、試合後の帰り道から気分が沈むもの。それを流してくれるのは白星だけなのである。
田中も「負けた次の登板までの期間は、悔しさはもちろんあるし、もやもやしたモノも、もちろんあります」と、しばらく持っていなかった感情が中4日の登板の間にあったことを明かしている。
人によって、そのもやもやは違う。マウンドに上がるのが怖い投手や、敗因をずっと引きずってしまう投手もいる。責任感の強い田中の場合は「チームに負けをつけてしまったこと」が心にひっかかていたという。これまで、とにかく勝つことだけを追い求めてきた。連勝記録が途絶えた時には「楽しみにしてくれていたファンの方には申し訳ありません」と応援してくれている人への気配りも見せていた。
どんなときでも一番大事なのはコンディション
ただ、本人はこうも話している。
「僕は連敗しないためにやっているわけではない。後ろ向きな考え方はしない。内容が良くても、チームが勝てなければ意味がない。内容を求めるのは練習であったり、シーズン前のことです」
結局、田中自身の中では連勝、連敗は関係なかった。その結果によって自分がぶれることはなかったのである。
「どんなときでも一番大事なのはコンディション。そこが整ってなければ、自分の技術も最大限に出せない。基本的なことですけど、自分の体としっかりと会話をしていくことが大事。あとはよく寝ること。僕は6時間ぐらい寝れば大丈夫」
負ければ連敗となっていたホワイトソックス戦では、本調子ではなくても相手を寄せつけない投球で7回途中まで1失点で抑えた。カブス戦では制球に苦しんだが、この日はこれまで通りのマー君に戻っていた。
連勝していたことが田中を支えていたのではない。その裏で継続してきた準備や体のケアなど一つひとつの努力が、次の1勝を呼び、その積み重ねこそが自信となってきたのだ。負けない間に積み上げてきたそれらの経験はそう簡単には崩れることはない。それをホワイトソックス戦での勝利で実証した田中は、今後も、勝敗に左右されず、自分の投球を続けていくに違いない。
フルカウント編集部●文 text by Full-Count