内田篤人も感嘆。エース復活でシャルケ5位浮上
ブンデスリーガの後半戦がスタートした。その18節、バイエルンがボルシアMGに快勝した以外は、上位陣は軒並みつまずいた。レバークーゼンはフライブルクにまさかの敗戦、ドルトムントはアウグスブルクと引き分け、しかもMFブワシチコフスキが負傷し今季絶望という大きな痛手を負った。ボルフスブルクはハノーファーに、ヘルタ・ベルリンはフランクフルトにと、それぞれ下位のチームに敗れている。
そんな中、7位のシャルケはハンブルガーSVに3−0と快勝、一気に5位まで順位を上げた。前半戦を連敗で終えたハンブルガーSVが相手だったとはいえ、久々の快勝だった。明らかな要因が一つある。エース、フンテラールの先発復帰だ。
前半戦、シャルケが不本意な成績にとどまった理由の一つにフンテラールの離脱があった。第2節のボルフスブルク戦で右ひざ靱帯を負傷。リハビリを行なって、いったんは練習に復帰するが、今度は練習中に痛めてしまう。10月に入り手術を決断し、昨年いっぱいは治療に時間を費やした。
フンテラールの魅力はもちろん得点力だ。一昨季は25ゴールでブンデスリーガ得点王になった。頭でも足でもと、得点パターンはバリエーションに富む。
そしてもう一つがポストプレイ。かつて内田篤人が「シャルケで一番驚いたのはフンテラールのポストプレイ。もしかしたらラウル以上にインパクトがあったかも」と表現したことがある。相手と体をぶつけてマイボールにし、状況が悪ければ動き直し、柔らかくボールを収めて味方につなぐ。「ボールを持ったときに思わず探してしまう」と、内田はその存在感について語る。それは代役として前半戦プレイしたシャライにはないストロングポイント。フンテラールがいることで、攻守がスムーズに機能するのだ。
そのフンテラールがようやく復帰した。立ち上がり、後方からのパスをいとも簡単にトラップし、味方につないでチャンスへと変えた。内田が感心したように振り返る。
「久しぶりに見たけど、うまいね。すごい。ボールを収めるというのはああいうことを言うんだなと思った。俺も試合中に何回かボールを蹴るんだけど、それを普通に体をぶつけて収めて、(右MF)ファルファンとかに落として前を向けるっていうのは、すごいな。楽だし、時間ができる」
そのフンテラールが先制点を生んだ。前半34分、ファルファンのクロスをきっちり頭で合わせた。近くのディフェンダーに挟まれてはいたが、頭一つ分高く飛び、コースもタイミングもクロスにぴたり。得点後はベンチに走り、ケラー監督と喜びを分かち合った。
そんなシーンの背景を内田が語る。
「今日、スタメンでいくかいかないかを監督とフンテラールは話し合っていたと思う。フンテラールはたぶん最初から90分、いきたいんだろうね。でも監督はそういう監督じゃない。ケガには慎重に対応してくれる。パパ(CBのパパドプロス)とか俺の時もそうだったし。だからフンテラールが言ったんじゃない? 出たいって。それで実際に出て、点をとってあれだけ(ボールを)収めたんだから......」
感嘆の口調は半ば呆れているようでさえある。
後半に入ると、シャルケはファルファンのキレのあるプレイで2点を追加した。2点目はGKからの長いボールをディフェンスの裏で受け、飛び出した相手GKをあざ笑うかのようにネットを揺らす。3点目はファルファンが猛スピードでドリブル突破。相手を振り切ると、マイナスのパスをマイヤーがダイレクトで流し込んだ。起点となったのは内田のパスをフンテラールがいったん収めてつないだシーンからだった。
前半戦ぱっとしない戦いを見せていたシャルケだったが、エースの復帰によって状況はがらりと変わりそうだ。内田は「もっと上にいていいんだけどね」と、さらなる上位進出を目指す。この日ベンチ入りしたパパドプロスが先発復帰する日もすぐそこまで来ている。前半戦28失点と不安定だった守備にも柱ができる。
シャルケの後半戦の目標は、来季のチャンピオンズリーグに直接出場できる3位以上。悪くても予選に出場できる4位は確保したい。そんな彼らの可能性を感じる一勝となった。
了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko