駒大苫小牧vs札幌大谷 今年も接戦!全道212チームの頂点を懸けた円山決戦!
歓喜の駒大苫小牧
今年も接戦!全道212チームの頂点を懸けた円山決戦!
「今年の3年生が、秋夏とあと一歩で勝てず悔しい思いをした。色んな思いがこみ上げてきます」。優勝インタビューで、駒大苫小牧の佐々木孝介監督は、涙をこぼした。
同じくお立ち台に上がったのが、決勝点のホームを踏んだ副主将の伊藤 優希(2年)。「3年生と一緒に自分もメンバーに入っていて、(甲子園に)行けなかった。本当にうれしいです」と感無量の様子で話した。
その光景を、ベンチで涙しながら見つめる札幌大谷。中には顔を上げられない選手もいた。昨年は、この立場にいたのが駒大苫小牧だった。
わずか1点の差で分かれた勝者と敗者。勝負の先はいつも真っ二つ。今年もそれを実感するほど、大きな意味を持つ決勝だった。
勝負が決まったのは、同点になった直後の8回裏。表の守りを暴投で追いつかれ、流れが悪くなった駒大苫小牧。ベンチに戻った選手に佐々木監督は「(もう一度)必ずチャンスが来るから」と声をかけた。幸いにして打順の巡りは上位で、この日2安打と当たっている伊藤優からだった。
伊藤優は2ストライクからの3球目をライト前に運ぶ。雨で滑りやすい外野の芝生。ライトの植松悟(2年)が捕球できず後逸する間に、伊藤優は一気に三塁まで達した。続く3番で途中出場の小笠原貴久(2年)は、ライトへの浅いフライで還れなかったが、4番酒井隆輔(2年)はフルカウントから四球で出塁した。
佐々木監督が必ず来るといったチャンス。フルカウントからの酒井の四球を見て、次の5番新山敬太(2年)は、「初球」に狙いを定めた。そして、小笠原のライトフライでスタートを切れなかった伊藤優は、「思い切っていく」(佐々木監督)と心に決める。ゴロならもちろん、少々の浅いフライでもスタートを切るべきと判断した。
札幌大谷のエース・岡本 凜典(1年)が投じた初球、新山が放った打球はレフトへのやや浅いフライ。風とレフト鵜野翔真(2年)の捕球体制を見て、伊藤優は決断を確信に変えた。スタートを切った伊藤優が狙うホームに、鵜野からのボールが返ってくることなく、生還。取られた直後に訪れたチャンスを逃さなかった駒大苫小牧が、1点差の激闘を制した。
お立ち台の佐々木孝介監督(駒大苫小牧)
「少しでもOB達が喜んでくれればうれしい」と語った佐々木監督は、就任5シーズン目。決勝は2011年夏、12年秋、13年夏と3度全て敗れていただけに、期するものがあった。決勝を勝つ難しさ。勝負に敗れることの残酷さを何度も痛感し、「苦しかった」と打ち明ける。
新チームになり、己を変えることを決めた。「これまでは、球場の雰囲気と融合できていなかったんです。だからはっちゃけようと思いました」。監督として、冷静に試合を見つめる勝負師から、選手と一緒の雰囲気で戦う勝負師へと変化した。
采配にも変化が見られる。「これまでは、調子の良いピッチャーと心中して、最後は息切れしてしまっていた」。
その経験から今大会では、早め早めの継投が目立った。4試合中3試合を背番号10の菊地 翔太(2年)が先発してゲームを作り、投手陣で最も調子が良かった伊藤大海(1年)を早いイニングから投入した。
1点差の激闘となった準決勝と決勝は、「気持ちが強くて1年生らしくない選手」(キャッチャー・新山)という伊藤大の力投がゲームの流れを呼び込んだ。「私はまだ5年ですから、他の方と比べれば」と話しながらも、負けから確実に学んで成長してきた指揮官を、スタンドの教え子たちは嬉しそうな目で見つめていた。
次の舞台は11月の明治神宮大会。監督としては初の全国大会となる。指揮官は、「まだまだ未完成のチーム。一生懸命、また一つずつ階段を上っていきたい」とチームの成長へ向けて決意を固めた。
一方、初出場で初優勝がならなかった札幌大谷。五十嵐友次郎監督は、「まだまだ伸びしろがあると感じた。課題もたくさん出たし、冬場に目的をもって練習できる」と勝負には敗れたが、チームの手応えを口にした。
この日も徹底していたのは、力を入れてきたバントと走塁。何とかして相手を崩そうと、何度も揺さぶった。「負けてしまっては意味がない」と高橋由大主将(2年)は悔しさを見せながらも、「ここまで来られたのは自信になった」とやってきた野球が間違いではないという確信を持ったようだ。
『円山の決勝で敗れたチームは、それをバネに成長して、いつか勝者を乗り越える』昨年の駒大苫小牧など、歴代の準優勝校がそうであった。来春、来夏と成長して、円山でどんな戦いをみせるのか。非常に楽しみだ。
(文=編集部)