宜野座vs浦添商 延長14回を制し2年連続で九州大会出場!
攻守で仲間を励まし続けた宜野座主将・當眞圭介
「あくまで中学のときの話ではありますが、去年優勝した子たちを差し置いてレギュラーとなっていたのが現ナイン。力は十分ありますよ」と試合前、宜野座のコーチを務める仲間氏は語ってくれた。
第2シードのコザを破ってのベスト8進出も通過点。昨年、10年ぶりの優勝を成し遂げた嶺井 辰之輔ら先輩たちを越える能力を有するというその言葉を、宜野座ナインはこの試合で痛烈に感じさせてくれた。
初回、それまで二試合連続完封していた浦添商・砂川優士の立ち上がりを捉えた1番山城壮之の打球は左中間を深々と破る三塁打。続く2番渡久地涼がレフトへキッチリと犠牲フライを上げて山城が還る。ここまで防御率ゼロの男からたった二人でいきなり先取点を奪った。さらに4回、死球と犠打にワイルドピッチが絡んで三塁に走者を進めると、5番城間公希がセンター前へ運び2対0とした。
追い掛ける浦添商は4回、ヒットと二つの四球で満塁とすると押し出し四球で1点。続く5回にはニ死三塁から、砂川が執念にも似たセカンドへの内野安打で同点とすると6回にも長田 涼太が俊足を飛ばして三塁打を放ち、大城匠の犠牲フライで逆転に成功した。
だが宜野座も7回、振り逃げの走者をワイルドピッチで二塁へ進める。ここで宜野座ベンチは犠打を選ばず強攻策。先ほどもタイムリーを放った城間が、再び期待に応え打球は右中間へ。風にもグングン乗り、センターとライトの間を破る同点タイムリーの三塁打となった。さらに仲間福がライトへ打ち上げ三塁走者が生還し1点をリードする。だが浦添商も8回、ツーアウトながら一・三塁として、代打の福治由希斗がアグレッシブな初球攻撃でライト前へ運び同点とした。
2012年の夏を制した浦添商・宮良高雅監督がベンチへ戻ってくる選手たちに「必ずチャンスは来るぞいいな!」と鼓舞すれば、同年秋を制した宜野座・東亮監督は「大丈夫、こんなもんなんだよ野球とは」と選手たちをリラックスさせる。その声に応えるべく、両軍ナインたちは回を追うごとに抜群の集中力を見せていくのだった。
10回のピンチに深呼吸をする宜野座・知念諄也
同点に追い付いた浦添商は6回途中でマウンドを降り、ファーストを守っていた砂川が9回に再びマウンドへ。二者連続三振を含む三者凡退で雄叫びを上げてベンチへ戻る。その気迫が徐々に流れを浦添商へと引き寄せた延長10回、先頭打者の新里龍平が左中間へ二塁打を放ちサヨナラのチャンスを作ると、犠打で一死三塁と形を作った。ここで宜野座ベンチは満塁策をせず勝負に出る。だが結果的に大城が四球を選び、一、三塁となったところで次打者を敬遠した。マウンドの知念諄也は大きく深呼吸をして自らを落ち着かせる。この日一番の見せ場で小細工せず勝負に出た浦添商だったが、知念の気迫が打席の浦添威誠を上回り三振。続く5番儀保尊大の打球は一、二塁間を襲った。抜けてもおかしくない当たりだったが、この緊張の場面で二塁の渡久地涼が飛び付き捕球するとファーストへ転送。164cm54kgと細身の体だが、前チームからレギュラーを張る男のスーパープレーで宜野座がピンチを脱した。
浦添商・砂川は、今ひとつの出来だった序盤と違いさらに低目にコントロールされた抜群の制球力を見せ、9回から13回までの5イニングで3安打、1四球と宜野座打線を抑える。先発し7回途中まで投げた105球と合わせ球数は既に160を数えていた。6回途中から三番手として登板している宜野座・知念との、いつ果てるともしれない死闘に引き分け再試合が僕らの脳裏をよぎった14回、その快投に宜野座の主将のバットが引導を渡す。
宜野座は走者を一塁に置くが既に二死。ここで仲間福がフルカウントから四球を選んで走者を得点圏へ進めると、ここまで2安打(2四球1犠打)と好調の當眞圭介が2ボール2ストライクの5球目、砂川がこの日投じた183球目を逆らわずレフトへ持っていく。二塁走者が一気に生還し、欲しくて欲しくてたまらない次の1点が宜野座のボードへ刻まれた。なお二、三塁として、今度は先発のマウンドに立ちながら3回1/3イニングで降りてレフトへ下がっていた伊保拓海が、ここで不甲斐なかったピッチングをバットで返すとばかりに初球を振り抜くと打球はライトへ。歓声の中、二人の走者が還り試合を決めた。
宜野座・知念が129球を投げれば、11奪三振をマークした浦添商・砂川は186球。安打数は宜野座が11、浦添商が12。前日にも試合をした両軍ナインの疲れは、試合後半に差し掛かるほど重くのしかかっていただろう。実際、浦添商の斬り込み隊長である長田 涼太は、延長に入る前から足に痛みが走り、コールドスプレーで必死に冷やしながらプレーしていた。両軍ナインが満身創痍で、でもそのグランドにいた宜野座、浦添商の誰もが諦めず最後まで全力プレーに徹した。そんな両軍の、あえて試合を分けたところと言えば残塁数だろうか。宜野座の6に対し浦添商は約3倍に上る17を数えた。1回から3回までの全てで走者を三塁に背負いながらも切り抜け、4回から6回まで失点しつつも最小限で収め、さらにサヨナラのピンチを迎えた10回のミラクルな守りなど、浦添商の強烈なプレッシャーに対し、粘りで対抗した宜野座が上回ったとも言えよう。そんな4時間14分の球史に残る激闘は、勝った宜野座にはもちろん、敗れた浦添商ナインの全員にも拍手を送りたい好ゲームだった。
(文・写真:當山 雅通)
宜野座TEAM浦添商業守備位置氏名打順守備位置氏名右翼山城壮之1番中堅長田 涼太二塁渡久地涼2番二塁大城匠中堅仲間圭吾3番一塁比嘉勇希左翼松川竜希4番左翼喜納政斗一塁漢那憲李5番右翼儀保尊大三塁城間公希6番捕手前田光晴遊撃仲間福7番遊撃具志堅裕弥捕手當眞圭介8番投手砂川優士投手伊保拓海9番三塁新里龍平