立命館宇治vs京都外大西 打撃戦の中に見える1イニングを最少失点の重要性
山上大輔投手(立命館宇治)
打撃戦の中に見える1イニングを最少失点の重要性
16安打の京都外大西、15安打の立命館宇治。しかし結果は10対5でヒット数の少ない立命館宇治の快勝に終わった。
敗れた京都外大西の上羽功晃監督は、対等に打ちあいながらも得点差に繋がった原因を振り返る。「流れの中で、ウチはもう少し点が入っているのに取り切れない。相手は一つの流れがある中で、この回にこれだけ取れたしOKで終わっていたんだと思います。ウチとしては、常にもうちょっと取れたはずやんという気持ちが残っていた」。
点の入り方は、イニングスコアを見ても明らか。得点イニングで1点しか取れなかった京都外大西に対し、複数点を取れていた立命館宇治。結局はこの部分が10対5というスコアに表れた。
前回の試合(2回戦)で最速144キロを計測した立命館宇治の山上 大輔(2年)に対し、コンパクトなスイングが自慢の京都外大西打線がどう対するか。試合前の焦点はそこにあった。
この日の山上は、本人も卯滝逸夫監督も調子が悪いと感じていた。「腕が振れず、スライダーがカーブのような曲がり方になっていた。調子が悪い時の傾向です」と山上は話す。
京都外大西打線は初回から調子の上がらない山上を捕えた。2番島田一樹(2年)が左中間を破る三塁打を放ち、3番森崎将輝(2年)のセンター前ヒットで1点を先制した。この後、山上のボークと暴投で二死ながら三塁まで進む。しかし後続が倒れてもう1点を取ることはできなかった。
2回、京都外大西がもう一度チャンスを作る。2本のヒットと犠打で一死一、三塁。打席は9番淺野泰平(2年)。ここで上羽監督はスクイズを仕掛ける。だがファーストの伊藤大賀(1年)がこれを察知。本塁で走者を刺し、スクイズは失敗に終わった。「あれが大きかった。あそこで2点目を取られると苦しかった」と語ったのはマウンドの山上。
二死一、二塁と場面が変わって続く1番森直弥(1年)がヒットを放つものの、走者は三塁でストップ。満塁で2番島田が倒れて、2回の攻撃が無得点に終わった。点を取りにいったが、取り切ることができなかった京都外大西。
逆に粘った山上は、その裏に同点となってから、自らの一打で逆転に成功した。立命館宇治にとっては、1点ではなく2点目をしっかりと取れたことが大きかった場面だ。
打つ方では3安打と活躍した福田聖次(京都外大西)
そして3回裏、立命館宇治が2つの四球とヒットで一死満塁となった所で、京都外大西の上羽監督は、先発の福田聖次(2年)をレフトに下げて、二番手に藤本大夢(1年)を送る。
バッターは2回に同点打を放っている6番中奥勇心(2年)。一死満塁のこの場面で、京都外大西の内野陣は極端な前進守備を敷いた。それに呼応して外野陣もわずかに前にくる。『1点も与えない』という意思表示。だが中奥が振り抜いた打球はレフトの前へ落ちた。レフトの福田が突っ込んで、後ろに逸らしてしまう。その間に三人の走者が一気に生還。『1点も与えない』姿勢が、結果的には裏目に出てしまった。
「あそこは前に出てこないといけないですから、仕方ないです」と話した上羽監督。レフトへ回ったばかりでまだ守り慣れていなかった福田の前に飛んだのはやや不運だったかもしれない。
4回に1点を返した京都外大西だが、その裏に立命館宇治が3点を挙げて突き放した。その後も最後まで山上を打ったものの、大量点差が投手の心理状態を楽にしてしまった感がある。「どこかで流れを断ち切りたかった。でもそれができず、常に追いかける展開だった。もうちょっと競れていれば動けたんですけどね」と上羽監督は話した。
逆に勝った立命館宇治の卯滝監督は、「春までの山上ならこんなに打たれると9回まで持たなかった。成長していると思います。(だから)今日は最後まで山上を代えるつもりはなかった」と16安打浴びながらも1イニングを最少失点に抑えたエースを讃えた。
スコアの上では打撃戦に目が行きがちだが、勝負の上で、1イニングを最少失点に抑えることの重要性を実感するようなゲームだった。
(文=編集部)