帝京第五vs東温 満身創痍の帝京第五、「結束力」で15年ぶり秋季四国大会出場！
8回裏コールド勝ちで15年ぶり秋季四国大会出場を決め喜ぶ帝京第五
部員喫煙による昨年10月28日から3ヶ月間の対外試合禁止。今年3月一杯での監督交代。そして夏前から秋にかけての主力選手負傷者続出。「満身創痍」という4文字で表現するにもはばかられるほど、帝京第五高校野球部は傷ついていた。
新チーム開始時は県内屈指と目されていた自慢の大型2枚看板もその「傷ついた」に含まれている。右サイドスローの中野 翔太（2年・右投右打・182センチ75キロ・ナガセタイガースボーイズ＜大阪＞出身）は夏前に痛めた右肩が回復せず。今大会では一塁手としての途中出場から始まり、ようやく投球ができる状態へ。ただし中野の回復曲線と反比例するように、今大会では一塁手での先発出場を重ね、南予地区予選以来の登板が期待されていた左腕・伊丹 拓巳（2年・左投左打・182センチ74キロ・新居浜シニア出身）は準決勝前に太もも裏を痛め試合出場は不可能に。よってこの試合でも先発マウンドは準決勝に続き今治西中出身の左腕・西浦大生が立つことになった。
野手陣も同様だ。1年夏よりレギュラーに名を連ねる50メートル走6秒0・高校通算26本塁打・双子の弟・松本 凌太遊撃手（2年・右投左打・176センチ78キロ・オール松原ボーイズ＜大阪＞出身）は、指の骨折回復が長引き前日の準決勝でようやく二塁手として途中出場。とはいえ、いまだフル出場は難しくこの代表校決定戦でもベンチスタートを強いられることに。
こうなると4月に部長職から転じて以来、50メートル走5秒8・高校通算本塁打10本の中距離砲、双子の兄・松本 将太中堅手（2年・右投左打・175センチ74キロ・オール松原ボーイズ＜大阪＞出身）との「松本ブラザーズ」をチームの大黒柱に考えていた楠本雄亮監督の采配も、将棋で言えばいわば「飛車角落ち」で臨むようなもの。ただそれでも、指揮官と選手たちの腹は大会当初から決まっていた。
「中野と（松本）凌太を四国大会の舞台に立たせる」
「この試合が終わったら倒れてもいいくらいの気持ちで立った」西浦は3回まで毎回ランナーを背負っても、内角攻めを恐れず初の秋季四国大会出場を狙う東温打線に対抗。自らを助けるバント処理や、バックの内野守備も随所に見られ、スコアボードに0を並べていく。
主将・3番として奮闘した東温・日�盻甦霾畆蝓�2年）
一方、3回までは城西中時代は三段跳びの選手でもあった東温二塁手・青野凌太（1年・右投右打・163センチ61キロ・愛媛ボーイズ出身）の再三に渡る好守備に得点を阻まれた打線も、4回裏一死二塁から「みんながつないでくれたので、思い切って振ることだけを考えてインコースのカーブを叩いた」4番・新家優汰一塁手（2年・右投右打・175センチ75キロ・広島北シニア＜広島＞出身）が左翼線先制二塁打。さらに相手失策と7番・柳原侑弦右翼手（2年・右投右打・172センチ65キロ・新居浜シニア出身）が再び左翼に運び3点を先行。東温の大黒柱左腕・渡辺翔太（2年・松山東中出身）を早々に攻略したことで、試合の主導権は一気に帝京第五へと傾いた。
そして迎えた8回裏。帝京第五は相手守備の乱れなどでさらに3点を追加。2番手として野村迅（2年・右投左打・175センチ60キロ・えひめリトルシニア出身）が登板し、なおも二死三塁の場面で楠本監督が代打に送り込んだのは、「朝早くから遅くまでバットを振っている」指揮官も認める努力家・辻俊宏捕手（2年・右投右打・176センチ81キロ・粉河シニア＜和歌山＞出身）であった。
はたして「自分が決めようと思った」辻の打球は左中間へ。この瞬間、帝京第五は一年間の満身創痍を乗り越え、15年ぶり5回目の秋季四国大会出場を決めたのである。
そして、四国大会ではみんなが待ち望んだ主力選手たちも帰ってくる。試合後、この試合でも9回二死からマウンドに立つ予定だった中野は「もう大丈夫です」と右肩の状態を語った後、こう決意を述べた。
「みんながつないでくれたので、四国大会では全力で投げて抑えます」
満身創痍だからこそ得られた大きな成果。彼らは大舞台でも今大会を通じて貫いた「まず1勝を目指して、全力プレーを見せる」（松本 将太）闘い方をベースに、結束力でさらなる上を目指す。
（文＝寺下 友徳）
