J1の横浜F・マリノスが今、サッカーファンを驚かせている。

今季、開幕ダッシュに成功したものの、「ベテランばかりだから、体力的に厳しくなる夏場に失速するだろう」と、メディアや専門家からは冷ややかな声。だが、9月の声を聞いても依然、首位に立っているのだ(24節終了時)。

先発陣の半数以上がオーバー30という、サッカーチームとしては“おっさん軍団”。中心選手を見ると、中村俊輔・35歳、中澤佑二・35歳、マルキーニョス・37歳、ドゥトラ・40歳だ。

なぜ、彼らは勝ち続けられるのか? サッカージャーナリストの後藤健生氏は、「よく走るが、無駄走りしない」と、その理由を分析する。

今季のマリノスは、敵にボールが渡った瞬間、すぐに意識を切り替え、連動したプレスを前線から激しくかけていく守備がトレードマークとなっている。そうして敵陣内でボールを奪い取ってしまえば、自陣に向かって長い距離を走り戻る必要もないし、多くの味方選手が相手ゴール近くにいるから、すぐシュートまで持ち込める。

「いざ守備となってプレスに入る肝心なところでは、全員がサボらず、ものすごくよく走る。けれども、試合全体を通してそれほど走っているわけではないから、体力を浪費しないで済むわけです」(後藤氏)

さらに、J1各チームの「アクチュアルプレーイングタイム」を見ると、横浜F・マリノスは1試合平均51分57秒で、18チーム中最短。ベテランならではのしたたかな試合運びで、インプレーの時間は短くなっているのだ。

※アクチュアルプレーイングタイム=試合開始から終了までに、実際にプレーされた時間のこと

だが、それだけで首位に立つことはできない。マリノスの快進撃を支えているのはやはり、中村俊輔という大黒柱の存在だ。マリノス番のスポーツ紙記者B氏が語る。

「奪ったボールをトップ下の彼に預ければ、確実にキープしてくれる。この安心感は大きいですよ」

こうやってタメをつくった上でパスを供給したり、あるいは彼ひとりで局面を打開してシュートまでもっていく。もちろん、FKやCKといったセットプレーは相変わらずの独壇場。さらには90分全体を見渡した、試合の舵取り役も担っている。

「チームの基本戦術とはいえ、ハイテンポのプレスばかりでは体力が続かない。だから、時には後ろでゆっくりボールを回すことも必要なんですが、状況に応じた緩急の見極めができるのが俊輔なんです」(専門誌デスク・A氏)

日本代表待望論もあがるほどキレキレの中村俊輔を中心とした百戦錬磨のおっさん軍団、横浜F・マリノス。リーグ終盤に向け、その戦いぶりからますます目が離せない。

■週刊プレイボーイ38号「ゆけゆけ!おっさん軍団、横浜F・マリノス!!」より