船橋芝山vs鎌ケ谷 完成度の高い守備を見せた船橋芝山と鎌ケ谷
埜下慶太(船橋芝山)
甲子園は8月22日に終えたが、同じ時期秋季大会が全国各地で開催されている。秋季千葉県大会一次予選は甲子園の決勝と同じ22日に開幕した。
秋のチームでまず見られるのがミスである。夏まで積み上げてきたチームとの差は一つのプレーの精度である。送球、守備、打撃、投球。すべてにおいて差がある。特にその中でミスが出やすいのが守備であり、送球ミス、トンネル、ファンブル、中継ミスなどなど。秋だから仕方ないという見方がされる。冬から夏にかけて精度を上げて、守れるチームに仕上げていく。船橋芝山と鎌ケ谷は秋にみられる守備ミスが少なかった。この時期としては完成度の高い両チームであった。
まず守備で見せたのは鎌ケ谷。2回裏だった。船橋芝山は一死一、三塁のチャンスを作って、7番山本が放った打球は中犠飛。定位置のフライでタッチアップするには問題ない深さである。三塁走者の後藤はスタートを切る。ここからが素晴らしかった。センターが中継のショートに返し、ショートがバックホームし、間一髪アウト。見事にピンチを切り抜ける。
鎌ケ谷は3回表に9番飯塚が左横線二塁打を放ち、1番平野が犠打で一死三塁のチャンスを作る。2番鈴木龍がスクイズを仕掛ける。だが投手・埜下の絶妙なフィールディングで間一髪アウト。両チームともねばり強い守備を見せていた。船橋芝山の先発・埜下 慶太(2年)は歩幅を狭く取って、上半身を鋭く振る投球フォーム。120キロ台の速球、スライダー、縦に落ちる変化球を投げ分け、しっかりと0点に抑えることができていた。鎌ケ谷の先発・金賀 穂(2年)は肘を高く上げて、インステップ気味で、出所を隠すフォームで、打ちにくい。金賀も5回まで無失点の投球。
0対0のまま迎えた6回裏。船橋芝山は9番藤巻の四球、1番小野の四球で無死一、二塁として、3番米田の2点左前適時打で2点を先制する。2点を追う鎌ケ谷は7回表、6番奥田の安打、7番沖田の犠打で二塁へすすめ、二死二塁となって、9番飯塚が中前安打。センターがバックホームするものの、わずかに及ばずセーフに。鎌ケ谷が1点を返す。この勢いのまま同点に追いつきたかったが、1点止まり。船橋芝山の先発の埜下はこの1点に留め、1失点完投勝利。船橋芝山が代表決定戦へ進出した。
奥田(鎌ケ谷)
勝利した船橋芝山も、敗れた鎌ケ谷も守りがしっかりした好チームであった。この試合の失策は0。ゴロは慌てずに確実に処理し、フライは後ろへのフライも慌てずに追うことが出来ていて、小フライは選手同士がしっかりと声を掛け合いながらとっていた。
まだ肉体的に完成されていないので、プレー面で力強さを欠けるところはどうしてもある。これは仕方ない。夏までしっかりと鍛えていけばよい。だが守備といい、プレーに対するひたむきさなど、姿勢の良いチームなので、土台となるものが強くなれば、お互い注目の公立校になっていくだろう。
個人でいえば船橋芝山の埜下の落ち着いたマウンドさばきは見ていて安心感があり、今後も船橋芝山のエースとして上位進出のカギを握る存在。鎌ケ谷は6番奥田は背番号10ながらファーストで先発し、出場した選手の中では最も体格が優れた右の強打者タイプであった。まだバットが遠回りすることはあるが、インパクトが強く、捉えたときの打球は中々力強い。次期4番として鍛えてほしい逸材だった。
(文=河嶋 宗一)