日大山形vs日大三 決め球打ちが5得点を呼び込んだ!
この試合の注目は日大三打線と日大山形の奥村 展征(3年)である。日大三はチーム打率.415、本塁打3本。コールド勝ちは5試合。東京大会で火を噴いた打棒を全国でも発揮できるか注目された。一方で日大山形は打率.667と高打率を記録した主将で大型ショートストップとして注目される奥村 展征(3年)。この男が軸となって日大三投手陣に対抗したいところだ。
1回表、二死三塁となって奥村に打席がまわった。奥村は2ボール1ストライクからの4球目だった。日大三の先発・大場 遼太郎(3年)の外角低めの直球を捉えて右中間に飛び込む本塁打。しっかりとため込んで、縦のスイング軌道で捉えた打球は右中間へ伸びていった。日大三相手にこのような形で先制出来たのは大きい。
そして守りである、先発のマウンドに上がった。庄司 瑞(3年)は185センチの長身から振り下ろす直球から140キロ前後の速球を投げてグイグイ押す投手。河津 和也(3年)には11球粘られたが、二ゴロに打ち取り、一死。だが2番の稲津がインコースに入る直球を振りぬき、ライトスタンド最前列に飛び込む本塁打を放ち、2対1の1点差にする。これはズルズル行きそうな予感がした。その後、3番森 龍馬(3年)の中前安打のあと、連続四球で一死満塁。ここで6番五十嵐 将大(3年)が外角直球を打ち上げ、一塁邪飛。大場も外角高めのスライダーを見逃し三振。同点、あるいは逆転して、自分たちのペースで試合ができるチャンスを逃した。
その後は両投手の投げ合いになる。
大場は167センチの小柄ながら体幹の強さ、バネの強さを持ったたくましい右腕。ワインドアップから体全体を使う投球フォームで、常時135キロ〜142キロの直球(最速144キロ)、125キロ前後のスライダー、125キロ前後の縦スライダーをコントロール良く投げ分ける。小柄だが、芯の強さが光る。
庄司は西口文也のようなフォームだ。体全体を旋回させ、最後のフィニッシュで、一塁側へ身体が逃げるようなフォーム。常時135キロ〜140キロ(最速142キロ)を計測。初回はボールが高めに上ずっていたが、徐々に角度あるストレートが決まる。そのストレートに加えて、打者の手元で落ちる鋭いスライダーに日大三打線が苦しんだ。庄司は5回まで毎回ランナーを背負っていたが、6回に三者凡退に打ち取る。何か風向きが変わる予感がした。
7回表、日大山形は8番庄司が左前安打、板坂 絋貴(3年)が投前安打、青木 龍成(2年)が右前安打を放ち、無死満塁のチャンス。ここで2番中野 拓夢(2年)。大場は低めに丹念について4球目だった。低めについたスライダーをなんとか食らいつき、右前安打で2点を勝ち越し。さらに3番峯田 隼之介(3年)が投前犠打で一死二、三塁。4番奥村は敬遠気味の四球で再び満塁となって、5番吉岡 佑晟(3年)が遊飛に倒れ、二死満塁となって6番淺沼 孝紀(3年)が内角直球を振りぬき、右前安打。2点を追加し、6対1。7番武田 匠平(3年)の左前適時打でさらに1点を追加し、7対1とする。ここで大場は降板。二番手に荻野 佑真(3年)を投入する。
日大三投手陣は8回に釘宮 光希(2年)、三輪 昂平(2年)が登板。釘宮は140キロ台を計測したが、三輪はそれ以上にすごかった。常時145キロ・最速149キロを計測。これは今大会の右投手では最速の数字である。やや制球は荒削りだが、スピード能力は一流で、秋の東京では都内最速右腕として注目されることだろう。こういう投手が控えているのだから日大三投手陣の層の厚さはなかなかのものがある。
その後、日大三打線は庄司を打ち崩せず、試合終了。日大山形が日大三に勝ち星を挙げた。日大三の大場から7得点。本塁打はともかくとして、7回の5得点は2番中野が大場の決め球である縦スライダーをヒットにしたことが日大山形打線を活気づけた。大場は低めにもついていたし、変化球のキレも悪くなかった。だがその決め球を打たれると大場とはいえ、気持ちを切り替えるのは難しい。こうなると予想以上に失点を重ねてしまうことがよくある。この試合がまさにそのケースに該当する。
チャンスを呼び込んだのは庄司の好投あったからだろう。それをもり立てる守備陣の働きも見逃せず、4番の奥村は本塁打による1本のみだったが、守備では抜群の動きを見せた。5回裏の河津の遊ゴロ。結構深い位置からだったが、ワンステップでダイレクトスロー。スピード、肩の強さを存分に魅せつけた場面だった。守備の盛り立てで庄司は1失点に留めることができたのだ。こうして0点を重ねられると日大三打線は焦ってしまう。余計なボール球に手を出してしまう。外角に付いて行かない。無得点を続け、結果的に突き放される。後手後手に回る時はとられる時は一気に点を取られてしまうのだ。今年の日大三は能力的には素晴らしいものは持っている。だが精神的な焦りが生じると自分たちの実力を発揮するのは難しい。立て直しが効かず、ゲームセットを終えてしまった。そんな試合であった。
(文=河嶋 宗一)