ご当地ナンバー、新たに10地域 「先発組」の切り替え、意外に進まず
国土交通省はこのほど、全国の8都県(11地域)から要望があったご自動車の「当地ナンバー」のうち、10地域の「ご当地ナンバー」を導入すると正式に発表した。「盛岡」(岩手県)、「平泉」(同)、「郡山」(福島県)など被災地のほか、東京で「杉並」「世田谷」といった知名度が高く、馴染みのある地名のナンバーが、2014年度にお目見えする。
安上がりな地域振興策として注目されるご当地ナンバーだが、既に実施された地域の普及率も今ひとつ。今回認められた世田谷では反対訴訟騒ぎが起きるなど「地域の一体感」に逆に水を差す動きも出た。
地域振興や観光振興などから新ナンバー
今回指定されたのは、ほかに、「前橋」(群馬県)、「川口」(埼玉県)、「越谷」(同)、「春日井」(愛知県)、「奄美」(鹿児島県)。奈良県から要望があった「飛鳥」は、対象地域内の自動車台数が、導入の目安となる10万台の基準に合わないとして、今回は見送りとなり、同じく10万台に届かない奄美は離島の特例で認められた。
東京の「品川」「練馬」など自動車のナンバープレートの地域名表示は、「従来から当該自動車の使用の本拠地を管轄する運輸支局か自動車検査登録事務所の名称や所在地を表示してきた」(国交省)。これに、運輸支局の新設に伴い、地域名表示は追加されてきた。
国交省は、こうした原則を緩和し、地域振興や観光振興等の観点から、運輸支局などの新設がなくても新表示を認める「ご当地ナンバー」解禁に舵を切った。第1弾として2004年11月〜2005年5月、初めて募集。条件は「経済圏など一定のまとまりのある広く認知された地域で、登録自動車数10万台以上」という、比較的ハードルの低いものだった。
その結果、2006年度に「仙台」(宮城県)、「柏」(千葉県)、「金沢」(石川県)など18地域のナンバーが交付され、新たな地域振興策として話題を呼んだ。さらに2008年11月には、静岡県と山梨県の二つの県にまたがる初のナンバー「富士山」も誕生した。
「世田谷」は一時反対の訴訟も
しかし、ご当地ナンバーの人気が沸騰しているわけではない。普及率(対象地域の車両数に占める「ご当地ナンバー」の割合)は全体で46.36%(2010年度末)と半数に満たない。愛知県の「岡崎」ナンバーが最も普及しているといっても、52.27%。ここは西三河陸運支局管内で、従来の「三河」ナンバーに、新たなご当地ナンバーとして「岡崎」とトヨタ自動車の本拠地である「豊田」が加わった。希望者は岡崎または豊田に変更でき、買い換えた場合も新ナンバーに切り替わるので、一気に100%になるはずもないが、5年でやっと半数というのは、決して高いとはいえそうもない。
最も普及率が低いのは、「富士山」で27.70%。山梨県側は山梨運輸支局の「山梨」ナンバーに「冨士山」が加わった。静岡県側では沼津運輸支局に所属し、従来の「沼津」ナンバーに加え、新たにまず「伊豆」が加わり、さらに「富士山」も登場した。「富士山」は2年遅れとスタートが遅かったハンディが克服できていない。世界遺産登録などもあって、地元では巻き返しに期待が高まる。
ご当地ナンバーは、新規登録、移転登録に伴って最終的に旧ナンバー車が全て廃車になって、100%新ナンバーに切り替わる。行政側は「地域に愛着やつながりを作る契機」というが、今回の「世田谷」ナンバーをめぐっては、市民団体が自動車使用者のプライバシーの保護などを理由に導入に反対し、国に対して承認しないよう求める訴訟を東京地裁に起こした。その後、世田谷の承認が決まったことから取り下げたが、高級住宅地のイメージがある「世田谷ブランド」を広げたい人と、現状で十分という人の意識ズレも指摘された。