「気球」で「帰郷」を歌う麻里子さま。余韻を残さず、行ってしまった。

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昔から、福岡には訪れたいと思っていた。
まず、音楽が素晴らしい。ガラパゴス化した福岡からは良質なバンドが多数輩出され、それが即ち「めんたいロック」なるムーブメントとなっている。小倉が生んだ伝説のバンド「ルースターズ」リーダーの名は大江慎也だ。
そして、「福岡には美人が多い」という通説。そういえば、ニューヨーク支局に赴任中の大江麻理子(テレビ東京アナウンサー)も福岡生まれだった。
AKB48を卒業したばかりの篠田麻里子も、福岡出身者。
「大江」慎也→「大江」「麻理子(マリコ)」→篠田「麻里子(マリコ)」というこじつけに近い関係性から、いつしか福岡には一目置いてしまっている。

遂に行ってきました! 篠田麻里子に、会いに行ってしまいました。AKB48が仕掛ける「AKB48 2013真夏のドームツアー」スタートは、福岡・ヤフオクドームから。故郷でもある同地の公演によって、彼女は卒業するのである。
AKBコンサートに足を運んだことはないけども、この機会だけは逃せない。7月20〜21日の福岡二連戦を、この目に焼き付けに行ってきました!

初日・20日の「影アナ」(注意事項や挨拶などをする場内アナウンスのこと)を担当するのは、先日の総選挙で1位を獲得した指原莉乃。彼女は、博多に本拠地を置くHKT48劇場・支配人でもある。しかし、緊張のためか噛み倒してしまう。
「スイマセン、親戚が観に来てて……。メチャメチャ緊張してます!」
あぁ、そういえば彼女はヘタレだったっけ……。思わぬ形で、その出自を思い出させてくれました。しかし、噛む度に場内はヒートアップ! もう、観客の受け入れ体勢はバッチリのようです。

そんなこんなで、公演はスタート。Overtureから客席のサイリウムは揺れまくりで、それを煽るように「RIVER」、「Beginner」、「UZA」という勇ましい曲が連発される。なんだこの、圧倒的なメジャー感は! ナマで目撃すると、完全にスター集団にしか見えない。
不意にビジョンに映る麻里子。どうにも感傷的になってしまうが、明らかにカメラは彼女の表情ばかり捉えようとしている。意図的に。泣きそうになってしまうのだが。

その後もケンカ腰のまま、曲は続いていく。「風は吹いている」、「フライングゲット」で気圧された挙句、繰り出されたのは「少女たちよ」。なんだ、この句読点の打ち方は。もう、完全に掌の上!
そして、ようやくMCタイムに。
たかみな 福岡、ヤバいね! でも昔来た時は、2階席がブルーシートで埋められてたの。
さしこ 知ってる! 私、観に来てたの。でも2階席がブルーシートで『人気ねぇなー』って(笑)。
たかみな 指原も、テンション高いな(笑)。でもね、もっと高い人がいるの。麻里子さまー!
麻里子 イエーーーーーー! いやぁ、福岡は久し振りですね。

その後も曲は続いていくが、相変わらずカメラは麻里子を中心に捉え続ける。そして麻里子は麻里子で、他メンバーと比べると明らかに汗の量が多い。序盤なのに。気合が違う。……もう、ダメだ。麻里子にしか、目が行かない。

もちろん、見せ場は他メンバーにもありました。ご当地グループ・HKT48を代表する指原は、前田敦子のソロ曲「君は僕だ」と堂々と歌い上げる。その厚顔っぷりが、彼女らしい。「福岡、大スキーー!」と絶叫しつつの異様なブリブリっぷりも、理解者にとっては魅力的。
その魅力は、MCタイムに遺憾なく発揮されています。
さしこ 昔から、福岡は憧れの地で。私、Berryz工房を観に来たこともあるし、AKBも観に来たし。
こじはる その時、どうだった?
さしこ その日は柏木さんの初登場の日で。「なに、あのもっさい子は!」って思ったの(笑)。いや、今は可愛いですけど!
こじはる 私たちは?
さしこ たかみなさんは置いといて、芸能人って感じだった!
たかみな 私は!?
さしこ 小っさかった!

あと今回のAKB初体験では、思わぬ新発見も。実はシングル化されてない楽曲の方に、良質なものが多いのだ。「キャンディー」は80年代アイドル全盛期を彷彿とさせ、ハッとさせてくれる曲。「Blue rose」はハードでありつつ超キャッチー。ノリにノってる時期の長戸大幸が丁寧に作ったカラオケ向きの高クオリティJ-POP、という印象があります。

しかし、シングル曲だって負けていない。というか生で聴いてこそ、シングル曲の輝きは増す。何しろ一拍も置かずノンストップで「永遠プレッシャー」、「言い訳Maybe」、「ポニーテールとシュシュ」、「真夏のSounds good!」、「Everyday カチューシャ」、「大声ダイヤモンド」、「ギンガムチェック」、「会いたかった」、「ヘビーローテーション」といったメジャー曲が津波のように続いていくのだ。
この勢い・完成度を、この規模で構築できるグループが、他ジャンルを含めどれだけいるだろう? 冗談抜きで、エアロスミス「Get a Grip Tour」武道館6連戦を思い出す。「アリーナロック」という言葉があるけれども。

高品質といえば、彼女らの新曲「恋するフォーチュンクッキー」も見逃せない。AKBを知らない人に「これ、筒美京平作曲だよ」と言ったら、間違いなく疑わないと思う。70年代テイスト満載の、良質ポップスだと思います。

他にも沢山の仕掛けが用意されていた福岡一日目だが、この日は「AKBフェスティバル」で閉幕! ステージを後にしていくメンバーの中、投げキッスしながらステージを降りる麻里子が印象的でした。感傷ムードにさせなかった!


続いては21日の、福岡公演二日目。本日の「影アナ」担当は、言うまでもなく篠田麻里子です!
「泣いても笑っても、私にとってAKB48としてのコンサートは最後になります。悔いのないようにしたいと思います。最高の一日にしましょう!」
この時点で、観客は恍惚状態に突入。「ウオーーー!」「マリコーーー!」と地鳴りのような歓声が鳴り止まない。

しかもこの日は、麻里子のソロ曲「プラスティックの唇」から公演がスタート! ダンサーを従え、クールビューティなステージが展開されます。
曲を終えると、マイケル・ジャクソンとマドンナが取り合ったという世界的ダンサー・KENTO MORI氏と「ギンガムチェック」の振り付けを担当した仲宗根梨乃氏が登場。世界標準のダンスを見せ付けてくれます。
その後、麻里子を招き入れる2人。今度は麻里子を中央に据え、大人数によるゴージャスなダンスショーのスタート! しかも麻里子、全く引けを取ってないし!! どんだけ、練習してきたんですか……。
その後、AKB(麻里子除く)、HKT、SKE、NMB、研究生らの曲が続いていくが、そのどれもがスタイリッシュな雰囲気のものばかり。もう、全てが麻里子へのエールに聴こえてくる。

クライマックスは「フライングゲット」。この時センターを務めたのは、篠田麻里子! もう、言葉が出ないね。「篠田麻里子がいないAKBは嫌だ」、そんな事さえ考えてしまう。

血が騒ぎっぱなしだけども、ひとまずクールダウン。ここまでの流れを振り返りましょうか。
たかみな 麻里子さまのダンスショー、凄すぎますね!
麻里子 8年間、ここまで緊張したことはなかった(笑)。
たかみな そして、フライングゲット・篠田麻里子センターバージョンということで。
麻里子 キンタロー。さんには負けないようにしようと思って。
たかみな 負けてないから!

そして、“麻里子さまリスペクト”を公言して憚らない珠理奈からも一言が。2012年総選挙における篠田麻里子大名言「潰すつもりで来てください」について、言及しています。
珠理奈 大好きな麻里子さまがそう言ったんで「私が行きます」と伝えに行ったら、「珠理奈がそう言ってくれて嬉しいよ」って言ってくれて……。

その懐の深さに感じ入っていた我々の眼前に、マリパンダが描かれた気球が出現。そこに乗っているのは、言うまでもなく篠田麻里子! 彼女が歌っている曲のタイトルは、「帰郷」。福岡に凱旋した彼女にとって、打ってつけのナンバーである。
麻里子 元々は、「帰郷」を「気球」で歌いたいってギャグだったんですけど(笑)。 (公演後の囲み取材にて)
しかし、この時は気が違いそうになったな……。天井近く舞い上がる気球のお陰で、麻里子が目の前まで近付いて来るのだから。会場中が「麻里子さまと目が合った!」と、勘違いしたはずである。

そのまま、MCタイムへ突入。各々が麻里子との思い出を振り返ります。
板野 入ったばかりの頃は電車通勤で、その時は麻里子と同じ電車だったの。だから蕎麦屋さんに二人で行って帰ったのを覚えてる。
こじはる フォーチュンクッキーのMV撮影で福岡に来た時、「福岡のことは何でも知ってる!」って、びっくり亭とか連れてってもらった。「福岡タワーの夜景を見せてあげたい」って、ご飯食べながら一緒に見たり。
たかみな 8年間で初めてケンカしたことですね。チームAをどうするかって、2人で言い合って……。
このまま、今度は「夕陽を見ているか?」へ突入。この曲を歌い上げるのは、篠田、高橋、板野、小嶋、峯岸、という面子である。今や5人となってしまったオリメン。そして、この日を最後に篠田は卒業してしまうのだ。

そんなこんなで、この日は「さよならクロール」をもって本編が終了。……いや、そんな訳ない。ここでアンコールを求める声が、あまりにも桁違いだった。「アンコール、アンコール!」の他に「マリコ、マリコ!」という声が、異様なテンションで飛び交う。
もちろん、再び現れるメンバーたち。「恋するフォーチュンクッキー」等が繰り出された後、不意に場内が暗転。ドーム内では、特別映像が公開された。

ビジョンには、鏡の前に座る麻里子が。彼女、今までの道のりを回顧しているようだ。
AKB48オーディションを受ける麻里子。街頭でビラを配る麻里子。加入間もない時期、ダンスレッスンを受ける麻里子。劇場にて初登場を果たす麻里子。マイクを握り、涙ながらのMCする麻里子。誕生日を祝われ、涙する麻里子。「5年間やって来て本当に良かったと思います!」と号泣する、第2回総選挙での麻里子。じゃんけん大会で優勝し、満面の笑みの麻里子。「潰すつもりで来てください」と次世代にメッセージを送る麻里子。チームAキャプテンに任命され「ムリ、ムリ」と手を振る麻里子。後輩へ劇場公演の大切さを説く麻里子。AKB48卒業を宣言した、第5回総選挙での麻里子。
そして、そのまま映像内の麻里子はどこかへ向かって歩き出して行った。

彼女が向かうその先には、我々が待ち受けているステージがある。姿を現した麻里子の瞳は、隠せないほどの涙でいっぱいに。泣きながら一礼する麻里子。
麻里子 自分で決めたことなのに、みんなと楽しい時間を過ごしてたら、まだこの場所にいたいなと思っちゃいました。
続けて、彼女から一つ発表がある模様。
麻里子  チームAのキャプテンとして、私の想いを継承するために私から次期キャプテンを指名させてもらいたいと思います。チームA新キャプテンは、横山由依。由依ならできると思います。
このまま言葉を続ける。
麻里子 私は本当に幸せでした。私を産んでくれた両親、支えてくれた家族、友達、そしてメンバー、スタッフ、私を7年半育ててくれたファンの皆さん、本当にありがとうございました。私は生まれ変わってもAKB48を選びます。

このまま、自身の卒業ソング「涙のせいじゃない」を選抜メンバーと歌い上げます。麻里子の横には、こじはるやたかみなといった盟友が付いている。メンバーは麻里子へエールを伝えるよう歌声を送り続け、込み上げる麻里子は歌うこともままならない。
続いては、彼女が自分の実力(じゃんけん)でセンターを勝ち取った楽曲「上からマリコ」へ。静かなピアノの旋律をバックに歌い上げる麻里子。しかし、このピアノバージョンは一瞬だった。すぐさま感傷を振り切るよう、明るくてポップな「上からマリコ」がスタート! 涙を流しながら麻里子に駆け寄る珠理奈、そして新リーダーの横山。そんな場面もありつつ、明るく楽しいまま曲は終了。
麻里子 ありがとうございました。これからもAKBグループへの応援、よろしくお願いします!
と、満面の笑顔でステージを後にする麻里子。感傷ムードを吹き飛ばすような振る舞いで、余韻を残さずに。ドーム内は「マリコ! マリコ! マリコ!」のコールが止まらない。あっ、行ってしまった……。

優子 新しい一歩として、また歌を歌うのはどうですか? 麻里ちゃんが卒業した新AKBの再スタートとして!
なんて、クレバーな女なんだ。そういえば、AKBにとってドームツアーは始まったばかり。麻里子退場後、「ファースト・ラビット」、「少女たちよ」、「AKBフェスティバル」の3曲を歌い上げ、彼女らはステージをビシっと締め終えた。

たかみな それでは最後に、麻里子さまから受け継いだ由依ちゃん!
横山 人生で、実は一度もキャプテンってやったことなくて。部活でもやりたかったんですけど、全然推薦されなくて。篠田チームAから引き継いだ横山チームA、これからも応援よろしくお願いします!

前を向いて歩き出した、AKB48。しかし、自分は未だに篠田麻里子が頭から離れないです。
(寺西ジャジューカ)