日の丸家電は「高付加価値神話」から脱却せよ! アップルやサムスンも知らない日本復活の条件(下) ――長内厚・早稲田大学准教授に聞く
かつて日本の花形産業だった家電業界が、窮地に陥っている。グローバル市場での強敵・米アップルや韓サムスンに打ち勝つためには、どんな戦略転換が必要なのか。日本の製造業の製品開発マネジメントに詳しい長内厚・早稲田大学ビジネススクール(大学院商学研究科)准教授は、グローバル市場を視野に入れた製品開発・販売が進んでいないことが、日本メーカーの大きな弱点の1つと指摘する。前回に引き続き、長内准教授に「日の丸家電復活」の条件をさらに深く聞いた。(まとめ/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
地味でも収益が安定する薄利多売製品
強いビジネスモデルが崩れたシャープ
――前回は、日本の家電メーカーが高付加価値戦略に依存しがちなことが、グログローバル市場での足かせになっているという分析を聞いた。従来日本企業は、より高付加価値の製品をつくれることが、自分たちの強みだと考えていた。もうそうした考え方は通用しないということか。
それは、シャープの苦境を見れば明らかだ。シャープの液晶事業は過度に投資をしすぎてしまった。これには2つの意味がある。1つは、液晶が本格的な普及段階に入ったときに、早晩液晶ビジネスの利益率が下がることを予想し、液晶というコア技術のメンテナンス(新たな技術への入れ替え)をすべきだったのに、それができなかったということ。
もう1つは、シャープの企業規模に不釣り合いなパネル製造に投資をしながら、パネルの外販を疎かにし、自社ブランド製品に頼り過ぎてしまったことだ。特に後者は、シャープの家電ビジネスのモデルを大きく変えてしまい、その影響は大きかった。
従来のシャープの家電事業には、他社がやっていない高付加価値製品を先行して発売する一方、収益の下支えとなる製品を薄利多売するという、今の韓国メーカーに似た戦略があった。前者はスチーム・オープンレンジや液晶ビューカムなど、後者は単機能レンジや14インチ、21インチの丸型テレビなどだ。シャープの海外事業は、後者に支えられていた側面もあっただろう。